3. お風呂でガールズトーク
お風呂場には、既に私たちの洋服がセットされていた。ママがお湯を沸かしてくれている。
「小さいまま服を脱いで、このタッパーに入れておいてね」
「分かった、ママ!」
ママに言われた通り、ウェットティッシュで体をふきながら、洋服を脱ぐ。
「じゃあ、いろは。元の大きさに戻すね」
「うん」
「みんな、元に戻れ!」
あめめが杖を一振りすると、杖の先から黄緑の光が漏れ出てきた。
――ポンっ!
そして、その光に包まれて、体が大きくなった。あめめも元の手のひらサイズだ。
「大きくする魔法だと、大きくなり過ぎちゃうから、元に戻す魔法をかけないといけないの」
「なるほどね!」
「じゃあ、汚いし。まず体洗おうか」
「うん」
ごしごしと、顔、腕、足、おなかをしっかり洗う。2度洗いして、ようやく体からにおいがとれた。
「ママがお風呂も沸かしてくれたから、あめめも一緒に入ろう」
「うん」
「ねえねえ、あめめ。お菓子の精霊王ってどんな人なの?」
「お菓子の国のすべての精霊をまとめる王様なの。精霊には厳しいけど、とっても慈悲深い人なんだ。人間がお菓子を愛する力が、あめめたちの力になっているから、あめめたちは、人間にもっとお菓子で笑顔になってもらいたくて、この世界に来ているの」
「そういえば魔法のアメ玉も、愛情を込めてお菓子作りをしているパティシエに渡すって言ってたもんね。その試験、失格になるとどうなるの?」
「あれは見習いの最終試験なの。落ちると一人前の精霊になれないから、魔法を使っちゃいけない。だから人間界にも遊びに行けなくなる」
あめめが少しうつむいて言った。
「そっか」
「いろは、ひなた、パパ、ママ、はるとに、とってもよくしてもらったのに、何にも恩返しできないまま、みんなを危険な目に遭わせて。あめめは精霊失格だ。うわーん」
あめめも責任を感じてくれていたんだ。私はそっとあめめの背を人差し指でさすった。
「あめめは、私たちのことをいつも笑顔にしてくれているよ。だからお菓子の精霊王にもそのことを伝える。あめめが一人前の精霊になれるように、我が家でサポートしますって」
「いろは、ほんとうにほんと?」
「うん。それに私だけじゃない。ひなた兄ちゃんも来てくれる。これであめめとお別れなんて、私絶対絶対いやだもん」
「ありがとう、いろは。大好き!」
それから、あめめからお菓子の国のことをたくさん聞いた。街はすべて砂糖菓子でできていて、雨も砂糖水で、水道を捻ればジュースが出てくるらしい。
あめめと同じような見習いの精霊が他にもたくさんいて、みんな人間をお菓子で笑顔にしようと頑張っているらしい。でも、マカロンの精霊・マカロは、おしゃれだけど、よくあめめに自慢してくるから、あめめは嫌いらしい。うちのクラスのみおちゃんみたいだなと思った。
「あなたたち、ひなたがまだかって怒っているわよ。お茶を入れてあるから早く出なさい」
「はーい」
私たちは、ガールズトークを切り上げて、お風呂から上がった。




