2. アメ玉が消えちゃった
「事情は後で説明するから、とにかくここから助けて」
「分かったわ、まずはおむつを替えちゃうから、あなたたちは少し待っていなさい」
ママは手際よくはるとのおむつを替えた。おしりをふいてもらってはるとは上機嫌だ。
「キッチンから割りばしとタッパーを取ってくるわね」
割りばし? タッパーは何に使うんだろう? ママはすぐに戻ってきた。
「今からあなたたちをつまみ上げるから、そちらのタッパーで体をよくふきなさい。ウェットティッシュが細かく切って入れてあるから。後でタッパーごと捨てるから、自由に使っていいわよ」
「ありがとう、ママ」
私たちは、1人ずつタッパーに移され、体をふいた。最後は魔法のアメ玉。
「ママ、それ! 魔法がつまった大切なアメ玉なの。大切に持ち上げてね」
「分かったわ!」
そう言って、ママは何度も箸でアメ玉をつかもうとした。苦戦している。まあるいアメ玉を箸でつかむのは難しいだろうな。表面にうんちもついているし。
「ママ、待って! 箸よりスプーンの方が――」
――グチャ
そう言い終える前に、とても残念な音がした。
ママが箸で魔法のアメ玉を持ち上げようとした瞬間、アメ玉がはるとの体内にある間にできたヒビが一気に広がって、アメ玉から虹色の閃光が漏れ出た。そして、アメ玉から完全に光が消え、砂のように粉々になって消えていった。
「ああ」
「……魔法のアメ玉が消えちゃった!」
あめめは、しばらく箸の先を見つめたまま、動かなかった。いつもならすぐに「どうしよう」と騒ぐのに、今は声も出ないみたいだった。あめめは目に大粒の涙を浮かべている。ポロポロと涙が頬をこぼれ落ちる。
「よく分からないけど、ごめんね。あめめ。力は入れていなかったんだけど」
「ママ、そのアメ玉にはもう亀裂がたくさん入ってたの。消化液もたくさんついてたし、ママのせいじゃないよ」
「うわーん」
「あめめ、元気出しなよ。あんなにうんちまみれになっていたら、愛情を込めてお菓子を作っているパティシエのところには、置きに行けないよ」
「そうだぞ、あめめ。お菓子屋さんは人一倍、食中毒に敏感なんだ」
「ぜんぶ、あめめのせいだ。はるとを危ない目に遭わせたし、いろはやひなたにも迷惑をかけた。お菓子の精霊王に怒られる。試験も失格だ」
いつも元気なあめめが、しおれた花のようになっている。
「あめめのこと、全然迷惑だなんて思っていないよ。あめめの試験をやり直しにしてもらえるように、私も王様のところに一緒に謝りに行くから、元気を出して」
「巻き込まれたついでに、俺も一緒に行ってやる」
頭がいいひなた兄ちゃんがいれば心強い。私たちはもうチームだ。あめめが精霊王のところに怒られに行くなら、みんなで行こう。
「ねえ、あめめ。みんなで一緒に謝れば、きっとお菓子の精霊王だって許してくれるよ」
「ありがとう、みんな」
「だからまずは一緒にお風呂に入ろう!」
「うん」
「これは……あめめがかけた体が小さくなる魔法かしら? お風呂場まで連れて行くから、そこで元のサイズに戻ってね」
「分かった!」
「レディーファーストだから、ひなたは少しそこで待っていてね」
「うげげ、いろは、あめめ。早く入るんだぞ」
ひなた兄ちゃんが、ウェットティッシュの切れ端で体をふきながら言った。
「頑張ります」
私たちは、ママに連れられてお風呂場に向かった。




