灰が降る
翌朝、ミオの死体は、ゴミのように無造作に処理された。
この街において、死んだ奴隷は人間として扱われない。名前を記録されることも、墓を建てられることもなく、ただの「廃棄物」として黒い布に包まれ、荷車に積み込まれた。
「おい、お前! 手を動かせ!」
監督官の怒鳴り声が響く。レンは、ミオを乗せた荷車が中央広場の向こうへと運ばれていくのを、ただじっと見つめることしかできなかった。
荷車が向かう先は、街の最下層にある巨大な焼却炉だ。そこですべての奴隷は灰にされ、工場の煙突から再び街の空へと吐き出される。彼女が嫌った、あの灰色の空の一部にされてしまうのだ。
(これが、俺たちの世界の終わりなのか)
レンの心の中で、何かが音を立てて崩れ落ち、そして、全く別の何かが燃え上がった。
それは、絶望の果てに生まれた、白く冷たい怒りだった。
ミオは死んだ。この街が、彼女の命を、夢を、すべてを搾取し尽くして殺したのだ。
だが、彼女の夢はまだ、レンの胸の中に生きている。
『レンが私の代わりに、見てきてくれるから』
彼女の最期の言葉が、レンの耳の奥で何度もリフレインした。
もしこのまま、自分もこの街の歯車として死んでいけば、ミオの夢は本当にこの世から消えてしまう。そんなことは、絶対に許せなかった。
「俺は行く」
レンは鉄鍬を強く握りしめた。
「ミオ。お前の目を連れて、俺は絶対にこの壁を越える」
その日から、レンの目の色は変わった。彼は従順な奴隷を演じながら、虎視眈々と「その時」を待ち始めた。




