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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
四章 立場はある意味二軍落ち

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進路相談をするにも相談できる人選が限られている



「ユーリ、ちょっといい……?」

 柱の陰からひょっこりと顔だけを覗かせて声をかけてきたのはミリィだった。

 普段はもっとわーい、みたいなテンションでやってくる彼女がとても控えめに声をかけてきたので、最初別の誰かに声をかけられたのでは? とユーリは思ったくらいだ。

 誰が見てもわかるくらいにテンション低めでお送りしているミリィに、ユーリも部屋に戻ろうとしていた足を止めてついそちらを凝視してしまった。


「いいけど……何があったの?」

 何だか深刻そうな様子から、今日の夕飯についてなどの平和的な話題ではない事を感じ取り、つい身構える。いくら人生二度目のユーリであっても、正直な所人生経験をたっぷり積んだとは言い難い。内容次第ではまったく役に立ちませんけど!? と内心で思っているユーリだが、当然の事ながらミリィはそれに気づくわけもなく。


「ちょっと聞きたいんだけど、学校に通うとして資金ってどれくらいあればいいのかな……?」

「内容としては普通に真面目だった……」


 下手すればもっと哲学的な何かかもしれないと思っていただけに、安心する。人生ってなぁに? みたいなものだったら流石に答えに困る。


「って、学校? 一応聞くけどどの学校?」

 現状ミリィは読み書きもできるし簡単な計算もできる。ファンタジー世界にありがちな商人でもない平民の子はそういう知識に詳しくない、という展開はミリィに関しては適応されていない。


「魔術学院なんだけど」


 その言葉にユーリはそっと柱の陰から見ているミリィを引っ張り出して、ある場所へ向かう事にした。正直な話、質問する人間を間違えている。




「――というわけで詳しい説明をお願いします」

 やってきたのはサフィールが最近よく利用するようになった調合部屋だ。そこにはカリンもいる。

 卒業しているとはいえ、カリンもまた魔術学院の姉妹校であるマジックアカデミー出身だ。そこら辺に関してはユーリよりも詳しいと言える。


 ゲームではそこら辺の資金問題がどうなっていたかはよくわからない。そもそもゲームにそこまで現実味を持たされても困るし、リアリティは確かに必要だけれどただの娯楽であるゲームにそんな部分で現実味を持ち込まれても反応しづらい。気分転換やら手軽に現実逃避したくてゲームやる、という人間に異世界の学校事情、それも授業料だのなんだのといったお金に関する話とか、現実に引き戻されるので正直勘弁してほしい。

 最初からそこにテーマを持ってきているゲームならまだしも。


 蒼碧のパラミシアの魔術学院ルートでも、そういやあっさりマチルダは入学していたけれどそこら辺はどうなっているんだろう? 今更ではあるが疑問である。


 ごりごりとサフィールの指示のもと、ひたすら薬草を乳鉢に入れてすり潰していたカリンは一度サフィールに視線を向ける。サフィールが頷くと、カリンは一度乳鉢と乳棒を置いた。


「魔術学院、ねぇ。アカデミーも似たようなものだけど、多少なりとも違う部分ってあると思う。それでも?」

 その言葉にミリィはすぐさま頷いた。

「基本的には資質の有無を問われる程度かな。資質があるなら入学は問題なく。で、資金だっけ? 基本的にある程度の成績であればそんなに請求はされない。成績優秀者であれば大分免除される。だから一概にどれくらいって言えないんだよねぇ……んー、成績普通って言ってるアリエルだと、授業料とかはバイト代で賄えてる程度って言えば何となくどれくらいかわかるかな?」


「成績が悪い場合は? 退学とかさせられちゃう?」

「いやー、よっぽどのことがない限りは退学ってないよ? 犯罪でもやったんならともかく。成績が悪い場合は補習授業があるけど、ある程度のチーム組まされてギルドの依頼をこなす感じかな。座学というよりは実戦で覚えろ、ついでに依頼こなして少し稼げ、っていう荒療治的な。座学が苦手な生徒はどっちかっていうと補習の方が得意って人もいるから、あえて補習授業受ける子もいたなぁ」


「……それって経営成り立つの?」

「アカデミーはほら、デパートとか研究所とかやってるから。卒業した生徒がそこで働いてくれれば人材も確保できるし。アカデミーそのものが若干赤字でも他の施設で元取ってるって感じかな。

 ところで何でまた資金のお話に? 数年単位でお金貯めてから入学しようっていうことかな?」


「えぇと……損害賠償とかで」

「んん? 損害賠償? どういう流れなのかな?」


 流石にそこまではユーリにもわからないのでこちらを見られましても、とふるふると首を振った。

 ミリィはよくわかっていない一同に、ぽつぽつと語り始める。



 ミリィの保護者であるセレンは、メソン島でアリスを捕まえようとした政府の人間によって殺されている。

 この件に関してはユーリもミリィから聞いているし、ゲームの内容通りだったので知らないわけではない。

 そしてウォルスが連れてきた三人は政府側の人間である。

 ミリィからすれば保護者を殺した組織の親玉同然だ。


 とはいえ、政府の内部も現在は分裂していて全てを悪とは言い切れないのだが。

 アリスを追っていた際、市民が一人死んだ事に関してはルリからの報告でケインもレーベンも把握はしていた。セレンを殺したのは彼らと対立している派閥側が仕出かしたこととはいえ、被害に遭った方からすればどちらの派閥がというのは正直関係ない。


 ケインとレーベンはミリィの所へやってきて、謝罪をしていったそうだ。謝られたからといっても、セレンが帰ってくることはない。そして、保護者の代わりとは言えないし全てをとも言えないが、生活の一部に関して援助を申し出てきたらしい。

「独り立ちするまでの間の援助を、って事だったから、それならミリィは学校とか行っておきたいなって思ったんだけど、その資金を援助で賄えるものなのかな、って」

「ミリィ、それならそうと最初に言って? それもうカリンとかシュウとかクロフォードとかのアカデミーにいた人よりも直接ケインとかレーベンに確認した方が早いっていうオチ」

「う、うん、そうだよね。ごめんね、何かミリィ色々と考えすぎちゃってたかも。最初はね、あまり大きな学校じゃなくて小さい所でもいいかなって思ったんだけど……」


「それはお勧めしないわ」


 真顔で言い切ったカリンに、思わず固まった。

「小さい所の方が規模が小さい分授業料とかもかからなそうなイメージあるけど、個人でやってる所とかぼったくりもかなりあるのよ。前に評判がとても良い小さな学校が実は生徒から多額の授業料巻き上げて払えない分は過酷な労働強いてたってのがあったから、そういう所は本当によく確認してその上で更に裏を探るくらいしないと駄目よ。

 アカデミーとか学院は貴族とかが資金援助してたりもするし、そういう家の子もいるから人間関係に多少難がある事もあるけれど、金額面で言えば全然マシ」


 確かにわざわざ裏を探ったりするくらいなら素直に学院なりアカデミー行った方がマシな気がしてきた。本当に安全な小さい学校探す手間を惜しまないのであればまた話は違うのかもしれないけれど。


「えーと、ミリィ、それもう最初からケインあたりに相談した方がいいんじゃない? 一応ケインも家柄としてはそれなりだから、小さめの学校とかであっても多分ちゃんとした所紹介してくれる気がする」

「う、うん、わかったよ。そうする」


 素直に頷くミリィに、一先ずは落着だろうかと思う。


 まぁ、でも。

 ケインに相談したところで多分普通に魔術学院紹介されるんじゃないかなぁ。


 この場にいたミリィ以外の全員がその結論に辿り着いたのは言うまでもない。



 ミリィの話も終わったと判断して、カリンが再び乳鉢と乳棒を手にとる。

「ところでカリンは何をしてるの?」

「サフィールから薬の調合を教えてもらってるところ。ちなみにこれは後でパトリシアの所に持ってくやつ」

「へー、パトリシアってあの魔女のおねーさんだよね? あの人は何をしてるの?」

 興味深そうにカリンの手元を覗き込みながらミリィが問う。


「彼女ならこの隣の工房でマジカル☆パトリシアたんの錬金工房っていうのを始めたところよ」

「今なんて?」

 サフィールの言葉に思わずユーリは聞き返していた。おかしいな、蒼碧のパラミシアでパトリシアはそういうのやらないキャラだったんだけど。

「適当な素材を持っていくと何らかのアイテムを作ってくれるわ」

「具体例が一切出て来なくて不安しかない!」


「時々爆発音が聞こえてくるけど、安心していいわ」

「安心できる要素がないのに!?」


 大丈夫よ、とばかりにしっかり頷くサフィールだが、本当に大丈夫なのかそれは。

 ちょっと不安になってきたし、隣っていうから確認してくるべきだろうか。

 そう思ってユーリが立ち上がった直後に――



 ちゅどおおおおん!


 隣の部屋から実にいいタイミングで爆発音がした。

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