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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
四章 立場はある意味二軍落ち

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ぽんこつ予知娘はお友達が欲しい



 ミオ・ティンダーは物心ついた時には既に政府で働いていた。いずれはお前も跡を継ぐのだと言われ、幼いながらにそうなんだと思って以来疑問を抱く事もなかったので。

 幼い頃にやっていた仕事なんて、本当にこどものお使い程度で例えば書類をあの部屋の人に届けてきてねだとか、他の都市から来る役員の人を出迎えてこっちの会議室に案内してあげてねだとかの、誰にでもできるような代物だった。それ以外にも雑用などをこなしていくうちに、気付けば政府という組織の中では若いながらも古株的存在になっていたし、その頃には内部事情にもそこそこ詳しくなっていた。


 そこで今更ながらに気付いてしまったのだ。


 あら、この組織、若い世代全く入ってこないじゃない、と。

 全くいないわけではない。ないのだが、ミオと同じくらいの役員ランクに該当する存在は皆無。下っ端にはいるけれど、中々声をかける機会もない。無理にでもそちらの区画へ足を運んで声をかけたとして、普段まずこないはずの上司――それも自分たちと直接関わる事のないレベルの――に声をかけられた下っ端は何かしでかしたかと顔を青くするばかり。

 ミオも流石に空気を読んで、それ以降は距離をそっと取った。自分の存在が組織の和を乱すなど、やっていい事と悪い事の区別は弁えている。


 その後何だかんだあってケインやウォルスというそれなりに自分の年齢に近い相手がやってきたが、いかんせんこの二人は仲が悪い。魂から憎しみ合うレベルで険悪であった。

 ケインの部下として見かけるようになったルリはこちらが声をかければ一応話はしてくれるものの、何というか任務第一すぎて世間話はほとんどしてくれないし、トルテは何というか……悪い人ではないのだ。ないのだけれど何というか合わない。世の中広いわけだし、政府にいる人間の数も多いのだから、一人や二人根本的に合わないなぁと思うような人がいるのは仕方のない事だ。


 ウォルスは気付けばミオ個人でもあまりいいと思っていない派閥の連中に陥れられたらしく、政府を後にしていた。その事に関しては寂しくもあったけれど、ミオは精々元気でやっていってくれればいいなと思っていたのだ。ケインが絡むと関わりたくない相手ではあったが、個人で話をする分には彼はとてもいい友人と言えたので。


 政府を裏切ったと思われても仕方のない出て行き方ではあったが、ミオは何も言わなかった。正直ウォルスを陥れた派閥の連中に対してそのうちウォルスが復讐しに来る可能性が視えたので。


 その事をレーベンにも伝えた所、機密情報のいくつかを知っているウォルスをどうにかする方向性でいたものの、放置する事に決定された。正直ウォルスを陥れた派閥に関してはレーベンもどうにかして切り捨てたいなと思っているが、いかんせん表立って決定的な事を仕出かしてくれないのでいつかあいつらを潰すかもしれないのであれば、とウォルスに関しては不問にする流れになったのだ。少なくとも二人の間では。


 ケインはこれ幸いと仕事の合間に余裕があれば部下を使って探していたようではあるが、ウォルスは目撃情報こそあれど今の今まで居場所を掴ませなかった。その優秀さを陥れられた時にも発揮していれば、とレーベンが嘆いていたのは無理もない。


 ミオは通常の魔術を使う事ができないが、魔力だけはやたらと持っていた。通常の魔術はこれっぽちも扱えないが、たまに本人も思わぬタイミングで未来が見える事がある。望んで先が視えればもう少し便利にあれこれ立ち回る事も可能なのだが、今の今まで都合よく発動した事がないので諦めている。

 能力を制御しようにも、何をどうすればいいのかさっぱりなのだ。

 割とどうでもいいような先の展開がほとんどだが、ウォルスに関してはちゃんと能力が仕事をしたと思っている。

 あの派閥に関してはまだ潰れていないので仕事をしたと言い切っていいかは微妙ではあるけれど。


 そうして年月ばかりが過ぎ去って、あの派閥はやらかしてくれた。よりにもよってラルカと手を組むとか愚の骨頂もいいところである。ラルカについて知る者は極一部だ。あれらは元々メソン島住人ですら活動するには厳しいと思えるマナ濃度の中でも活動できるように造られた存在であったが、当初は繁殖などできなかったはずなのだ。それを途中で何者かが無理矢理に捻じ曲げたのか、ある時から数が増え始めた。本来ならばひっそりと絶滅するはずだったものであるのに。


 最初の頃はそれでもまだ問題はなかったのだ。増えるよりも減る方が多かったのだから。増えたとしても焼け石に水。いずれ滅びゆく種である事に変わりはない。だが、人を食らうようになってからはじわじわと数が増えだしたのである。挙句に食した人間に似た外見のラルカが見られるようになった。それが、今回あの派閥が手を組んだ理由にもなったのだが。


 馬鹿げている。あいつらの望んだ人間は、ラルカに食われたわけじゃない。寿命で死んだ相手もいる。似た誰かが必ずしも生まれるわけじゃない。だというのに――


 どちらにせよ、あいつらを潰すための名目はできた。あとはあいつら諸共ラルカを潰すだけだ。

 とはいえ戦力が足りない。奴らの根城がメソン島の地下にあるダンジョンだというのはルリからの報告で知る事となったが、全部が全部そこにいるわけでもない。相変わらず森や洞穴、谷など人の来ない所でひっそり暮らすラルカはいるし、根絶やしにするならばそういった者たちも潰さなければならない。裏切り者の連中のせいで分断された部下たちは、まぁ優秀なので各自でどうにか頑張ってくれるとは思う。

 メソン島に住む者たちに余計な混乱を与えないように密かに終わらせるためには、あまり大っぴらに動けないので動かせる人物は限られている。


 どうしたものかと悩んでいたところで、ウォルスから話を持ち掛けられたのだ。


 政府内部はこちら側の人間と、あちら側の派閥。そしてどちらにも属さない中立と、中立を装ったあの派閥絡みの者が混在している。同じ組織であるというのに敵味方が混ざっているというのも頭の痛い話だが、ミオもレーベンも流石にそこに留まり続けるには少々危険な状態だった。

 ある意味では助けられたのだ。



 ミオに出来る事はあまり多くない。書類仕事なら得意だが、戦場に立てと言われるとからっきしだ。レーベンも能力的には戦闘に向いてはいないけれど、彼はまだ自分の身を守る程度であれば戦えない事もない。これからダンジョンにてラルカと戦う事になるウォルスたちの後方支援ができればいいが、それが無理そうならせめて他の部分で雑用でもなんでもやらせてもらおう。

 ミオはそう密かに決意していたのだが。



 正直な所、ウォルスからは安全な所としか言われていなかった。レーベンにとっても問題のない場所だとも。

 てっきり人も寄り付かないような場所だと思っていたのに、いざ行ってみればそこそこの人間はいるし、何よりもほぼミオと年齢の近い者、しかも同性が多い。


 同年代の友人と言うものに憧れを抱いていたミオは、この時点でかなりそわそわしていた。

 ここに来た目的はわかっている。友達を作りに来たわけではない。でもどうせならお近づきになってあわよくばお友達になりたい。

 いきなりお友達になってください、というのも微妙な所かと思ってはいるが、せめてお茶に誘うくらいは大丈夫だろうか?

 同性の同年代という存在が今の今までほとんどいない環境で育ってきたせいで、同年代の友人の作り方がさっぱりわからない。それ以前に普通の友人の作り方ってなんだっけ? 同僚とか部下に対する接し方はともかく、友人とは……? 何それ未知の生命体? 状態になっているミオは顔にこそ出てはいないがかなりテンパっていた。



 案内されたこの館にいつまで滞在するかはわからないが、のんびり構えてるうちに気付いたら帰る日になっていた、何てことだけは避けたい。急いては事を仕損じるとも言うが、だからといって行動に移さなければ何も始まらない。


「そうだ、改めてご挨拶に伺いましょう」


 館に来た時にも何名かは出迎えてくれたけれど、全員ではないようだし、きちんとした挨拶くらいはしておくべきだろう。そもそも友達になりたい以前に、こちらはまだ相手の名前すら知らないのだ。

 そうと決まれば早速行動! とばかりに部屋を出る。


 この時にミオの特殊能力とも言える未来視が発動していたならば。

 館の中で早々に迷子になるという事は避けられたのかもしれない。


 ミオ・ティンダー。書類仕事関係は得意だが、それ以外の部分では少々ぽんこつであるとも政府内で言われている彼女は、残念な事にこれから自身に起こる出来事を知らないままだった。

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