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ぐだぐだ異世界転生  作者: 猫宮蒼
四章 立場はある意味二軍落ち

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仲の悪い兄弟の話



「……それで結局、どういう人が来るのじゃ?」

 ウォルスが新しく人連れてくるってー、ととても軽く伝えた結果、返ってきた言葉は当然と言えば当然のものだった。


「正直私もよく把握してない。元々匿いたかったっていう人については聞いてもわかるか微妙だし、残り二人のうちの片方もよくわかんない。ただ、政府側の人間で優秀なんだろうなってのは薄々。

 メソン島での一件が片付いたとして、政府内のゴタゴタも綺麗さっぱりとはいかないでしょ? じゃあどうしたって後片付けしなきゃいけない人は必要になる、ってのは理解できたんだけどどういう人かはわかんないし、もういっそ直接会った方が早いかなって」

「その様子からしてルリやらトルテではないという事か」

「そもそもルリはともかくトルテはダンジョンに落ちたのは私たちも知ってるけどさ、結局まだ発見されてないみたいなんだよねぇ。……五十階層まで行って遭遇してないって、どうなってるんだろうとは思うけど」


 原作開始時間軸へ突入したとはいえ、それじゃあゲームにあったフラグやらを効率よく進めていきましょうか、とはいかなかった。仲間になるはずの冒険者は行方不明だし、他の仲間になるはずの人もいるべき場所にいないしで、本来ノーマルエンドとやらを迎えるために必要な重要アイテムを確保しに行こうにも、果たして本当にその場にいけば手に入るのかがとても微妙になったせいだ。

 とりあえず現状、情報収集とついでに各地の星見の館を繋げる事をメインに動く事にしている。原作開始になる前とあまり変わっていない気がするが、まぁ仕方がない。


「とりあえず三人の中で私が何となく知ってるのは、ウォルスのお兄さんにあたる人かな」

「なんじゃ、あやつ兄がおったのか? 普段の様子を見てると世話を焼いたりしてるしてっきり弟や妹ならいるものだとばかり思っておったが」

「ちなみに事前に釘は差したけど、仲はそれほど良くありません」

「……ちなみにどの程度?」


「藍緑エクエルドではダンジョンでお互いに戦うイベントあったよ。一応本編で五十階層まで行って、ラスボスっぽい感じだった。ただ、クリア後に追加される更なる深層、っていうのがあるからそういう意味ではラスボスって言っちゃっていいのかわからなかったけど。そこで決着つけたあとで、ちょいちょい補足っぽい話とか見れたはず。でも結局最後まで仲はあまりよろしくなかったような気がするんだよね」


 というよりもむしろ向こうが嫌っていたはず。嫌っている理由は何だったか。


「えーと、確かウォルスが優秀なのが気に食わなかった、だったかな。ゲームで語られる情報だとウォルスって政府に入った所から凄い勢いで出世して、先にいたお兄さんの立場を追い抜いたんだよね。そこで気に食わないってなったのは確かなんだけど……ただウォルスはその後他の派閥に陥れられてしまい政府を追われてしまいます。それも気に食わない原因だったみたい。優秀なくせにあんなやつらに! って」

「それだけ聞くとそこまで仲が悪いようには思えぬが」

「うん、ただ、父親が絡むと無理レベルまで拗れる」


 ウォルスの兄にあたるケイン・レンフォードという人物の父親は、とある名門の出である。ゲーム内で名前は出ていないのでユーリは知らない。

 ウォルスとケインの母にあたる女は、どういう出自であるかは詳しく語られていないが精霊の血が混ざっているだとか、特殊な能力を持っているだとか、ただの一般市民でない事だけは確かだ。

 ケインの父はその特殊とも異端とも言える血筋に目をつけて、彼女と婚姻を結び子を儲けた――が、いざケインが生まれると彼は自分の家に身分の低い彼女は相応しくないといい、一方的に彼女を追い出してしまう。


 そもそも身分だとか血筋だとか、彼女が最初からそうである事は知っていて近づいた上でのこの扱いなのでプレイヤーからは当然嫌われていたキャラだ。ゲームでは顔グラすら出ていないけれども。


 我が子を取り上げられ一方的な理由で追い出された彼女は失意のまま都市の外へ出て、そこで魔物に襲われそうになり死ぬはずだった。

 それを助けたのがウォルスの父である。

 彼女の身の回りの世話を甲斐甲斐しく、そして献身的に行った結果、数年後に二人は結ばれる事となった。その時に生まれたのがウォルスだ。


 ちなみにケインの家はかつて勇者と呼ばれる者を出した家系であるという事がゲーム内で言われており、対するウォルスの方はかつて一族に魔王と呼ばれる者がいたとされている。


 彼女に対する行いを見る限り、魔王とか勇者とか以前のような気もするが。


 そしてケインは父が自分の母に対してしでかした事を知っていた。いつ知ったかは不明だが、その件により彼は父を憎んでいたとまではいかないが、不仲であったのは事実だ。


 そしてウォルスも自らの母がどういう仕打ちを受けたかを知っていた。

 ウォルスがまだ幼い頃に母は亡くなってしまったけれど、彼女の最期は幸せそうだったため、こちらは父親との仲は良好であった。


 その後、色々あってウォルスは政府へと入る事になる。直接会った事はなくともウォルスは兄にあたる存在を知っていたし、兄もまた父に知られないように母親の事を探していた。生まれてから一度も会う事のなかった母と、せめて一度くらいは会いたかったというケインの思いも虚しく会う事は叶わなかったけれど。


 ケインの顔立ちはどちらかというと父に似ているらしい。髪と目の色は母親譲りだそうだが。

 対するウォルスは髪と目の色は父親譲りだそうだが顔立ちは母に似ているらしい。


 そんな二人が邂逅したのは――ウォルスが出世しケインの立場を超えた時だった。

 ケインも当時それなりの地位にいたはずだが、ウォルスはめきめきと頭角を現し当時の政府でも最年少にして最速の出世だったそうだ。



「……どう足掻いても拗れる予感しかないのじゃが」

「うん、実際拗れた。ゲームでは」

 多分現実でも拗れてると思う。ウォルスからすれば過ぎた話だから口に出す事もないだろうけど。


「私もゲームしてた時はまだ未成年だったけど、今でも一番悪いのはケインの父親だと思ってるわ。年をとったら物事の見方とか考え方変わるかなって思ったけど、そこに関しては変わらなかったわ」

 ケインの父親が二人の母親を捨てなければウォルスが生まれてこなかったけれど、ウォルスが生まれた事を彼に感謝しろと言われたら無理だ。

 そもそも生まれた直後に母親から引き離されてしまったケインもある意味不幸ではある。彼は結局一度も母親と会う事はなかったのだから。家庭内でのケインの立場がどうであったかはわからないが、ユーリからすればあまり良いとは思えないものだと考えている。


 そしてウォルスもある程度の事は知ってしまっていた。ウォルスからすればケインは血のつながりが半分ある兄とはいえ、母に対して酷い事をした男の息子、という認識でもある。

 ゲームの中での回想シーンでも最初の頃はケインの事を母を追い出した家の人間で、そんな事をしておきながらぬくぬくと、のうのうと暮らしてきたと思っていたのだ。



 ダンジョンの五十階層で一先ずの決着はつくのだが。

 しかしゲームでは着いた決着が、本当にこちらでは着いたのか微妙な所である。

 幼い頃ならお互いに憎しという感情で対立したままだったかもしれないが、ある程度年を重ねた結果喧嘩はするがそれなりに収まるところに収まった、はずなのだ。

 もちろん決着がついていたとしても、お互いにすぐにわだかまりを捨てて接する事ができるかといえばそれもまた難しいだろう。お互いの心が落ち着いて接する事ができるようになるまでは、まだ多少の時間が必要になるはずだ。


「まぁ、多分ウォルスと絡まなければそこまで酷い事にならないと思うから、一緒に行動させるとかじゃなきゃ大丈夫……だと思いたいんだよね。それでなくてもゲームじゃ政府の人がラルカ側につくなんて展開なかったから、まずお互い喧嘩してる場合じゃないと協力するか、別行動でお互いやるべき事をやるか。

 流石にお互いで足引っ張り合うような事はないと思いたい」


「……もし最悪の展開になりそうであるなら、ストッパーとして誰かを投入した方がいいじゃろうな。問題は適任がおるのか、という点じゃが」

「作品が違うとはいえ仮にも勇者の血筋と魔王の血筋……何かあった時に実力で割り込める相手となると、テロスかフォンセあたりしか浮かばないんだけど」


「流石に本職の魔王投入は不味いのではないか? というか、そういやその魔王はどうしておるのじゃ?」

「今日は一階の端の方の柱に抱き着いてたけど。遺跡を全身で感じたいとか」


「……魔王はあてにならぬな。テロスに頼むか? じゃがテロスが引き受けてくれるかの?」

「無理じゃないかな。仕方ないからこの事に関しては全員に周知しておいて、いざとなったら複数ででも実力行使をするように頼むしかないと思う」


 ダンジョン探索組は仮にも五十階層まで行ったのだから、もし何かあってもどうにかなると信じたい。

 他力本願だという事は重々承知している。

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