都市伝説
俺が出した仮定はとてもくだらないものだった。
「許せません!自分の存在を世に知らしめる為に無関係な方を殺すだなんて・・・!」
昼時のファーストフード店内で思わず怒鳴ってしまったマリアはハっとし周りにすみませんと謝る。
「落ち着けって。正直こんなのまだ仮定での話なんだから。」
「そ、そうですね。すみません。」
そう、あくまでまだ仮定の話なのだ。
真相なんてのはトワから聞き出すまでわからない。
「でも、もしも神無様の話が事実だとしたら電波が悪かったから生放送はされなかったというだけで・・・。」
「ああ。もしかしたら・・・まだ発見されていないだけですでに次の被害者は出ているかもしれない。」
「そんな・・・。」
落ち込みを隠せないマリア。
「まあでも今のとこそういったニュースも聞かないし、まだ出ていないって前向きに考えよう。」
「そうですね、今はまだ次の被害者がいないことを願いましょう。」
トワが去り際に言った言葉の通りなら俺を狙うのは間違いないと思うがそれがいつになるかなんていうのはアイツの気分次第でわからない。今日かもしれないし、まだまだ先なのかもしれない。
「しかし、アイツを捕まえると言ったはいいけどどこにいるかもわかんないからな・・・。」
「そうですわね・・・それに謎の黒い渦を使う共犯者もいるようですし。」
「そう、そこなんだよ。アイツには他に力を使う人間が共犯者にいるっていうのがまた困りものなんだ。もしどこへでも自由に移動できるような力なら正直、警察がどれだけ捜索しても逃げるなんていうのはいともたやすいはずだ。」
「このままでは完全に後手にまわってしまいますわね・・・。」
「俺の力もこういうことには全く役に立てないな。」
じっと自分の手を見つめる。
「そんな・・・私の力とて万能ではありません。いくら傷を癒すことができても亡くなられた方を蘇らせることはできませんですし。それに、心の傷を癒すこともできません。」
二人揃って自分の力の無さに落ち込む。
「せめてアイツを見つけることができるような力があればな・・・。」
無いものをねだっても仕方無いとはわかっているのだが。
「そ、それですわ!」
突然声を上げるマリア。店内の客がこっちを見る、そしてまた周囲に謝るマリア。
「ど、どうしたんだ急に。」
「私、思ったのですがあちらに移動能力を持った共犯者の方がいるように私達も力を持っております。」
「・・・つまり?」
「きっとまだ私達のように【不思議な力】を持った方がいるかもしれませんわ!その方をまずは見つけて協力していただくのです!」
「・・・なるほどね。」
マリアの言いたいことはわかる。
そりゃそんな力を持った人が俺達に協力してくれればトワを見つけるのも簡単になるだろう。
でも
「ここに不思議な力を持った人間が二人いるからってそんな都合の良い能力を持った人がいるかなんてわからないし、第一もし仮にいたとしても協力してくれるとは限らないじゃないか。」
「う・・・それも、そうですわね。」
シュンとマリアが落ち込む。
「・・・でもまあ、悪くはないかもな。」
「え?」
「いや、例えトワを探すような力じゃなくても俺達みたいな不思議な力を持った人を探して協力してもらえたら心強いなって。」
そう、実際俺もマリアの力もトワと対峙した際の争いに向く能力では無い。
だから捕まえたいとは言っても簡単にはいかないだろう。
それに、まだトワが力を持っていないとも限らないからな。
「ま、言うのは簡単だけど仮に力を持っていたとしても俺みたいに隠して生活してるかもしれないし、探すのは容易じゃないな。」
「うーん・・・あ!」
「どうかしたのか?」
「いえ、あの笑わないで聞いていただきたいのですが。」
「うん。」
「神無様は都市伝説というのはご存知ですか?」
「都市伝説ってあの噂話とかが元で発祥したりするやつだろ。」
下水道に住む巨大生物やハンバーガーにとんでもない材料を使っているとかなら俺も聞いたことがある。
「ええ。それなんですが私、前にいた学校でいろんなお話を聞いているのですがひとつ気になるお話がありますわ。」
「へぇ、どんな話なんだ?」
軽く深呼吸をするマリア。
「これは、この地方にあるいつまでも取り壊されずにいる廃校となった学校のお話です・・・。」
雰囲気を出そうとしているだろうがこの時間とこの場所だと合わないぞ、とつっこみたい。
「その学校は今から数年前に経営不振になり廃校になったのですが何故か今も取り壊されず残っているのだそうです。」
「そりゃ壊すのもお金かかるだろうし廃校になりました、じゃあすぐ壊しますとはいかないんじゃ・・・」
「最後まで聞いてください!」
怒られた。
「コホン、神無様もそう思うかもしれませんが。取り壊しの準備は進んでいたのです。ある日取り壊し業者の方々が下見に校舎にやってきたところ、自分達以外誰もいないはずの校舎内に一人男性が立っていたそうです。業者の方々は関係者の人間か問うと・・・。」
『ここを取り壊すことは諦めろ。』
「と、一言残し去っていったそうです。その後その業者の方々は不幸が立て続けに起こったため諦め、他の業者に頼むも同じように男と出会い、また不幸が起きたそうです。そうしていつしかどこの業者もその学校の取り壊しを拒むようになってしまい行政も諦めたため今でもどこかにその学校が残っているそうです。」
フゥっと蝋燭の火を消すような仕草をし、話終えるマリア。
それは都市伝説じゃない、百物語だ。
「いかがでしたでしょうか?」
「あー、つまりマリアが言いたいのはこの学校で業者が出会った男が何らかの力の持ち主なんじゃないかってことか?」
「はい!」
力強く返事するマリア。その表情はまさにどやぁって感じだ。
「いや面白い話だと思うし、もし実在するならその男って奴もなんらかの能力者かもしれない。でもなぁ。」
「いえ!ちゃんとモデルの学校もあるそうなんです!」
「ちなみにどこなの?その学校は。」
「そ、それは・・・私も存じ上げませんですの。で、でも学校自体はあるって聞いたのです!」
うーん、まさに都市伝説って話だよなぁ。
「俺その話自体初耳だしなぁ・・・。」
「あると言ったらあるに決まっておりますのー!」
むくれながら言ってくる。
意外と頑固なとこがあるなこの子。
「せめてこの話のモデルになった学校っていうのがどこなのかわかれば見に行けるんだけどなぁ・・・。」
ちょちょいと携帯で調べてみるけどどうやら話自体はあるようだがモデルとなった学校までは書いてない。
うーん、まあ確かに気にはなるんだが。
「あ、そういえばこの手の話に詳しい奴がいたな。」
そう、色んなとこに取材だなんて言っては飛び回ってる新聞部に所属するちびっ子女子高生。
――――道野辺流花、俺の友達だ。




