零れ話《優しいウソつき》
――――――――実はあたしには隠してる秘密がある。
あたしは【人の嘘がわかる】のだ。
話してる相手がウソをつくと頭の中で音が鳴る。
それは電話ごしだろうとテレビ番組だろうと関係無く鳴ってしまう。
音はウソにもよって様々。
不気味な音や悲しい音、寂しい音。
正直、この力のせいであたしは寂しい幼少期を過ごしてきた。
周りの子がウソをついていると話すとその子たちからは虐められ、力のことを親に話してもまったく信じてもらえなかった。口では信じてると言っても頭の中に渇いた音が鳴り響くだけだった。
ウソじゃないのにウソつき呼ばわりされてるみたいで悲しかった。この後あたしはこの不思議な力のことを話すのをやめた。
いつかはこんな力無くなってくれるかも。
そんな期待もしてたけどまったく無意味だったわ。
中学にあがっても
「今日のテスト全然勉強してねえよー。」
――カラン
はい、ウソ。
「昨日、早坂くんと歩いてるの見たけど付き合ってるのー?」
「ち、違うよー。そんなんじゃないって///」
――コオン
これもウソ。
あいも変わらずくだらない嘘で溢れてた。
「私はこの国を愛しております!この国を共により良い国にいたしましょう!」
――オォン。
あれもウソ。
「あなた、今日も遅かったじゃない。」
「ああ、残業が長引いてな。」
――ヴヴヴ
それもウソ。
大人達もウソをついてばかり。
世の中ウソつきだらけだ。
あたしはだんだん人を信じられなくなりだし、次第に距離も置くようになっていき、孤立していった。
将来にたいして夢も希望もなくなんとなく過ごしていたある日、たまたまテレビで真実を暴くジャーナリストという特番を見た。
その人は正義感の塊で番組内で色んな悪事を暴いていった。
「こんな人がいるんだ。」
それを見たあたしは単純にも感化されジャーナリストを目指すことを決めた。
でも、勉強し始めたのが遅かったのもあって第一志望校は落ち、園田高校に通うことになった。
ま、新聞部があるのは知っていたのでそこで少しでも何か学べればと思っていた。
そして入学式の日、あいつと出会った。
あれは学校へ向かう途中のこと。
ビル建設の工場現場近くを歩いてた時だった。
「危ないっ!」
その声に気づいた時にはもう遅かった。
上を見ると何本もの鉄骨が私に落ちてきていた。
一瞬のはずなのにこの瞬間、世界がスローモーションに感じた。
ああ、あたし死ぬんだ。
あっけないな、と目を閉じ死を悟った。
ガシャーン!ガラガラ!
「大丈夫か?」
その声に目を開ける。
ぼさぼさ髪の眠たげな顔した少年があたしを抱きかかえていた。
「あたし・・・生きてる?」
「ああ、間に合って良かった。」
お姫様抱っこされた状態からおろされる。
「子供かと思ったけど、今日俺と同じ学校の制服着てるってことは同じ新入生か。」
さらっと人が気にしてることを言われたけど
「あ、助けてくれてありがと・・・。」一応お礼を言う。
「いいってことよ。モタモタしてるとお前も遅刻するぞ。」
そう言いながら少年は右足を少し引きずりながら学校へ向かおうとする。
「ちょ、ちょっとあんた!あたしを助けたせいで足怪我したんじゃないの!?」
「え?いや、これはさっきこけたせいだ。」
――ぽぉん
初めて聞く音。優しい音だった。
この人、ウソをついた。
たぶん、あたしが責任を感じないようにって咄嗟についたウソ。
初めて聞いたこの音にあたしは少し驚いた。
人のためにつくウソってこんなに優しい音だなんて知らなかった
「・・・まったく、そんな状態でいけるわけないじゃん。」
「いや。大丈夫だ、問題ない。」
――キン
音鳴ってるし、絶対この顔やせ我慢してる。
「はいはい、馬鹿なウソつかない。タクシー!」
通りかかったタクシーを止め、遠慮しようとする少年を無理矢理連れ込み学校へ向かった。
・・・お小遣い貯金してて良かった。
学校に着くと恐らく教師だと思われる女性が来て少年は隅の方に連れてかれなにやら怒られていた。
「・・・まああとで改めて会いに行こうかな。」
式をつつがなく終え、自分のクラスへ行くと今朝の少年とばったり出会った。
「よう、同じクラスか。」
保健室から借りたのか松葉杖をついている。
「あんた、やっぱ怪我してるじゃない。」
「俺は必要無いって言ったんだけど無理矢理持たされたんだよ。」
いやいやいや、必要と判断されたから渡されたんでしょ。
「そういや、自己紹介してなかったな。俺は神無祐人」
「あたしは、道野辺流花。」
「道野辺か、よろしくな。」
よろしくとか言っておきながらアイツは次の日からしばらく来なかった。
足を骨折していたため入院したらしい。
あたしは担任から入院先を聞き、一応お見舞いに行くことにした。
「お、道野辺じゃん。どうした?」
個室でのんきに声をかけてきた神無はギプスにまかれた右足を吊られた状態だった。
「どうした、じゃないよ!折れてんじゃん!重症じゃん!」
思わず大声を出してしまった、いけないいけない。
「あー、らしいな。」
「何でそんな他人事なのさ・・・。」
「んー・・・まあ入院するなんてよくあるから。」
音がしないってことは本当なのね・・・どんな生活してたらよく入院すんの。
「てか、わざわざ見舞いに来てくれたのか?」
「そ、そうよ。一応、あたしのせいでしょ・・・。?神無君の足が折れたのって・・・。」
「だから、違うって。朝階段から落ちたんだって。」
――ぽぉん
またウソをつく。
「なんでそんなバレバレなウソをつくかな。」
「あー、もう道野辺は無事!俺は入院!この話は終わり!」
何かを隠すように話を終わらせようとする。
どうしてこんなにかたくななのかな。
「ハァ・・・もういいよ、早く元気になって学校来なよ。」
「おう。ありがとな。」
三年間同じクラスになってわかったけどこの男、しょっちゅう何かしら怪我をしている。
少し気になったので本人に内緒で調べてみるとたいてい誰かしらを助けての怪我だった。
あたしのように人を事故から助けたり、カツアゲされてた少年を助けようとしたり。
今思うとやっぱこの時もあたしを助けての怪我だったんじゃないかな。
その後学校に来れるようになった彼とよく話すようになり、彼の友人・荒田とも知り合った。
神無君はむず痒いから止めてくれというのでカンナちゃんと呼ぶようにした。
それも女の子みたいだから止めてくれと言われたけどあたしは気に入ったので使ってる。
気がつくと、いつのまにか昔の斜に構えたあたしはいなくなり、普通に女子高生をしてるあたしがいた。
力が無くなることはなかったし、そりゃやっぱりウソをつく人はいるけど必要以上に忌み嫌うこともなくなった。
おかげで他にもいろんな友達ができた。
もちろん新聞部の活動も忘れてない。お世話になった先輩と寂しい別れを告げ、後輩とも仲良くできてる。最近は見聞を広げ、オカルト関連にも興味を持ち始めた。
修学旅行の写真を見る。荒田は相変わらず仏頂面だけどみんな笑顔で写ってる。
今のあたしがいるのはたぶんあいつのおかげ。
あいつが優しいウソつきだったおかげ。
――――そんなカンナちゃんを知ってるから今回の件に対して少し腑に落ちない部分があるのだ。
そう、あいつが暴漢に襲われたという件。
お見舞いに行くと案の定、暴漢に襲われて入院した、というのはウソだった。
最初は「ああ、また誰かを助けて入院したんだな」って思って気にしなかった。
でも、あの子「高津マリア」って子との話を聞いておかしなことに気づいた。
「彼女が暴漢に襲われていたのを守って気を失った。」
この話を聞いた時、音がなった。
あの時と同じ、優しい音。
ウソをついてるのはわかってた。でもこの話のどこにウソがあるのか。
どうしてウソをつく必要があったのか。
わからない。あたしの力はその話がウソかどうかわかるだけ。
だから思わず怒鳴ってしまった。
・・・きっとあいつのことだからあたし達に心配させまいと思ってるんだろうけど。
「・・・もう少し、頼ってくれてもいいのにね。」
だから何か知ってるあのマリアって子に正直、少し嫉妬してる。
そりゃあたしはあの子に比べたら小学生みたいな見た目してるし、性格もおしとやかじゃないしー。
いやいやいや、違う違う。そうじゃない。
「あ~~~!!もう!」
こうなったらあいつに明日直接会って問いただそう!
――――6月15日
というわけで連絡せずに朝からあいつの家の前に来たのだがちょうど家からカンナちゃんが出てきた。
どうやらにどっかでかけるみたい。
・・・少しつけてみよう。
駅に着いたけど誰かを待ってるのかな?
「神無様~!」
カンナちゃんを呼ぶ聞き覚えのある声、マリアちゃんだ。
え?なに?ま、まさかデート!?
なにやら話ながらどこかへ向かっていく。
見失わない程度に距離をおきながらあとをつけていく。
これ、ジャーナリストっていうより浮気調査してる探偵の気分だわ。
探偵もありかなぁ。
おっと、危ない危ない。二人を見失うとこだったわ。
ん、どこか入ってく。
「だ、ダムダムバーガー・・・」
まさかこんなマイナーチェーン店でデート?
ってああ、もうお昼じゃん。
あたしも何か食べようかな。
とりあえずハンバーガーだけ注文し、二人の席を遠くから見張る。
話はわからないけどマリアちゃんが時折怒って声を荒げたり、何か思いついたような声をあげてる。
でも、なんかデートって感じでは無さそう。
ピリリリリ
あたしの携帯が鳴る。
やば!音量上げたままだった!一回店から出よう。
――着信の相手は・・・カンナちゃんだ。
「もしもし」
「うん、大丈夫だけど。」
「聞きたいこと?」
電話で話すくらいなら偶然を装って直接話した方が早いよね。
「あーカンナちゃんは今どこにいるの?」
「駅前のダムダム?ぐーぜーん、今近くにいるからそっち行くよー。」
プツ
まさかウソつき嫌いのあたしがウソつくようになっちゃうなんてね。
これもカンナちゃんの影響かな?なんて。
あたしは店に入りなおし、特Lサイズのジュースとジャンボパフェを注文した。




