都市伝説 その2
ぷぷぷ ぷぷぷ ぷぽろん
「どなたに電話しておりますの?」
ピリリリリ
「友達に噂話とかそういった類いの話を良く知ってるやつがいるからちょっとね。」
マリアの言う都市伝説の話を詳しく知らないか俺はクラスメイトの道野辺に連絡をとろうとしていた。
ぷ
「あ、もしもし道野辺か?今電話大丈夫か?」
「いや、ちょっと聞きたいことがあって…。」
「え?今濱戸駅のダムダムだけど。」
「あ、うん。わかった。」
「どうでしたか?」
「なんか近くにいるからこれから来るらしい。」
まあ電話より直接の方がいいか、とは思うんだけど。
道野辺ってやたら勘がするどい、というか誤魔化しが通じないからなぁ。
俺もマリアもうっかり口を滑らせなきゃいいけど。
「道野辺様とはどんな方なのですか?」
「ああ、ほら前にマリアが俺のクラスに小学生みたいにちっちゃい女の子いただろ?あいつが道野辺。」
「小学生みたいで悪かったわねー」
後ろからの声に振り向くと特Lサイズの飲み物とジャンボパフェを持った道野辺が若干ひきつった顔で立っていた。
「よ、よう道野辺来てもらっちゃって悪いな。」
「これ、カンナちゃん持ちだかんね。」
「あっはい。」
その量の食べ物はお前の小さな体のどこに入っていくんだ。
「でも良かったのかなー?デートのお邪魔だったんじゃないのー?」
「いや、そんなんじゃないから。」
「はい、デートではございませんね。」
二人揃って否定する。
「そ、そう?まあお邪魔じゃあないならいいけどさ。」
道野辺は少しあっけにとられた表情をしてマリアの隣に座る。
「そういえばちゃんと自己紹介してなかったわね。あたしは道野辺流花、カンナちゃんのクラスメイトよ。」
「私は、高津マリアと申します。よろしくお願いしますね。」
「で?聞きたいことって何さ?」
パフェのクリームを口につけたまま道野辺が聞いてくる。
「道野辺ってさ、確か都市伝説とかにも詳しかったよな。」
「詳しいって程じゃないけどまあ一応そういったのも調べたりもしてるかな。珍しいじゃない、そんなこと聞くなんて。」
「いや、マリアがちょっと気になる話をしてさ。いつまでも取り壊されない廃校があるって話、知らないか?」
「・・・ふーん、でも取り壊されない廃校の話なんていっぱいあるしな~。」
「男の人が取り壊しに来た人を追い返してるって話みたいなのですが。その後追い返された方々は身の回りに不幸が起きたって。」
「男の人が追い返して、その後不幸に・・・。んー、何か似た話はあったと思うんだけどにー。」
ちょっと待ってね、と道野辺は鞄から小さいノートパソコンを取り出し、何か差した。
「ちょっと調べてみる。」
そう言い、カタカタとパソコンを打ち始める。
「ふんふん、何件かそれっぽい話はあるみたいだけど内容はバラバラだねー。」
「バラバラ?」
「うん、まず男、もしくは女に追い返されたってのが三件、次は取り壊し中、取り壊し業者の人達に不幸があったっていうのが二件。あとはまあ河童が出て襲われたとかそういった類のが四件ね。」
「河童が出ますの!?」
変なとこで食いつくな、この子。
「さすがに河童は・・・。」
いや、もうなんか無いとも言い切れないかも。河童とは言わずとも何かに変身する人間がいないとは限らないし。
「まあ、都市伝説や噂なんて年月とともに尾ひれがついたり変化するからね。カンナちゃん達が言う話もこの[男に追い返された]っていうのに他のが混ざったんじゃないかなー。もしくはその逆もあると思うけど。」
確かにこの感じだと混ざって伝わってるかもしれないな。
この中だと気になるのはやっぱ人が出てくるとこだな。河童はまあ、後回しだ。
見間違いじゃない限り誰かしらが学校を取り壊す邪魔をしているってことだもんな。
「ちなみに人に追い返されてる話の元の学校がどこかとかはわからないか?」
「んー、ちっと待って。」
カチャカチャカチャ
しばらく待つ。
「どれも話の元になった学校までは書いてないわねー。」
「やっぱ単なる噂でしかないのかな。」
「うーん…あ、一件見つけた。男が出たってとこは南川名木にある黒楼谷高校が話の元みたいよ。」
「黒楼谷・・・」
確か進学校で有名だったって学校だ。何で廃校になったかまでは知らないけど。
「で、行くわけ?」
「え?」
ジトっした目で道野辺が俺を見る。
「だって元になった高校まで聞くなんてこれから行きたいから教えてくれって言ってるようなもんじゃん。」
「え、あっほらちょっと早い肝試し?みたいな?」
「はい、ウソつかない。」
なんか知らないが道野辺にはウソがきかないんだよな・・・。
「・・・一体何を隠してるのさ?」
「・・・ごめん。それは、言えない。」
俺とマリアを交互に見る道野辺。
「はぁ・・・。カンナちゃんとはまだ二年ちょっとの短い付き合いだけどさ、でもひとつだけあたしだってわかってることがあるんだよ。」
「カンナちゃんがそうやって積極的に動くってことはまた誰か助けるために何かしようとしてるんでしょ。それで今回はその件にこの子も関係してる。」
「・・・。」
「で、あたしにそれを隠そうとするのはあたしを巻き込みたくないって思ってるんじゃないの?」
お前、ジャーナリスト目指すより探偵の方が向いてるんじゃないか。
「カンナちゃんはいつもそうだよね。人のことばっかしで自分のことなんか全く気にしない。でもさ、それでいつも傷ついてるカンナちゃんを心配してる人達だっているんだよ。」
・・・あの時泣いていた美鈴さんの顔が頭に浮かんだ。
「カンナちゃんが他人を巻き込みたくない気持ちはわかるよ。でも、その他人にあたしを含めないで。」
「あたしは・・・たぶんあの時カンナちゃんに助けてもらってなかったら死んでた。今度はあたしがカンナちゃんの力になりたいの!だから、本当のこと教えてよ!」
強い感情のこもった瞳が俺を見つめる。
「本当に危険なんだ。」
「マリアちゃんはいいわけ?」
「それは・・・。」
「神無様。」
今まで黙って話を聞いていたマリアが口を開く。
「私は道野辺様の情報は大変貴重だと思うのです。恐らくこの先もきっと色々頼りになると思います。無責任かもしれませんが、私もこの方には本当のことをお話して協力していただいたほうが良いかと思います。」
・・・それはそうかもしんないけど。
「・・・本当に良いんだな?」
「神無様!」
「一度は死んだと思ってるんだし、覚悟はできてる。」
「・・・わかった。」
俺は、道野辺に全てを話した。
俺の力のこと、マリアのこと。そしてトワのこと。
「カンナちゃんにはそんな力があったのね・・・通りでいつもケガしてるわけだわ。それにしてもマリアちゃんもその、不思議な力があるだなんて。」
「信じられないか?」
「ううん、信じるよ。・・・あたしもそういった感じでは無いけど、不思議な力はあるから。」
「「えっ!?」」
俺とマリアは思わずハモって驚いた。
「あたしは、その人が話したことがウソか本当かわかる。それだけだけどね。」
まさか、道野辺がそんな力を持ってたとは。どおりでウソが通じないわけだ。
「それで、トワってあの指名手配されてるトワのことでしょ?まさかそんな奴が関わっていたなんてね・・・。」
「ああ。あいつは殺し損ねた俺らをまたいつか狙ってくるかもしれない。」
「だから他の人には話さず、二人だけでトワを捕まえようと思ったと。」
「はい。」
「なるほどねー。うわ、ちょっとあの生放送のこと思い出しちゃった。」
そういえば道野辺はあの放送を見ていたんだったな。
「しかも向こうも妙な力の協力者がいるとはね。そりゃ警察だけじゃ任せられないわけねー。」
「こんなこと話しても信じてもらえるわけないからな。」
「ふむふむ、まあ事情はなんとなくわかったけどそれが何で今回の都市伝説につながるのさ。」
「俺とマリア、それにトワの協力者。まあ道野辺がいたら4人になるけどこれだけ力の持ち主がいるってことはあいつを捕まえることに協力できる力の持ち主もいるんじゃないかって思って。」
「・・・カンナちゃん、あんたその協力者にも危険が及ぶかもしれないってとこまで考えてた?」
「あ・・・。」
なんて間抜けだ。確かに道野辺の言うとおりだ。
「まったく、ダメなブレインだこと。」
返す言葉も無い。
「ま、そこはおいおい考えるとしてとりあえず黒楼谷高校に行くつもりなの?」
「まあ気になるしな。」
「って言っても管理者の許可なく入ったら一応犯罪だかんね?」
「う・・・それは。」
「・・・少々私、席を外しますわね。」
マリアが店外へ出て行く。
「でも凄いよね、妙な縁とはいえ不思議な力の持ち主が3人集まるなんて。」
「確かにな。」
偶然なんだろうか。
俺とマリアが出会い、間接的とはいえトワの協力者。
そして隠していたとはいえ同じく力を持つ道野辺。
何かがおき始めてる気がする。
ぱたぱたとマリアが戻ってきた。
「すみません、ただいま戻りました。」
「どうかしたのか?」
「ええ、お父様に頼んで黒楼谷高校へ入る許可をいただいてきましたの。」
「はぁ!?」
「マリアちゃんってあの高津グループのお嬢様だったのね。」
高津グループといえば建設関係からアパレル等幅広くやってる世界でも有数の企業のひとつだ。
「黒楼谷高校はお父様のお知り合いである会社の方も関わっていたみたいです。あまりこのような形で頼みごとなどしたくはないのですが手段を選んでる暇もございませんし・・・。」
しかし、よくそんな頼みごとを聞いてくれるな。
「あ、お父様から神無様に伝言がありましたわ。」
「え!な、なんて?」
「その、娘を必ずお守りください、ですって。」
・・・大企業の娘さんを守れとかそれもうSPとかの仕事じゃないのか?
「でもおかげで黒楼谷に入れるんだし、まだ昼過ぎなんだから早めに行った方がいいんじゃない?」
「そ、そうだな。」
「あ、すみません少々お待ちください。」
そう言うとマリアは少し離れた席に座ってる近寄り難い見た目の男二人の席へ近づく。
「佐森様、右城様。ここから先は危険ですのでもうお帰りください。」
・・・いるんじゃんSP。
「し、しかしお嬢様。お嬢様を警護するのが私共の役割ですので危険な場所に行くなら尚更。それを私達が危険だからと帰るわけには。」
「私なら大丈夫です。神無様もおりますし。」
すげー怖い顔でお二方がこっちを見てるんですが。
「ふう・・・佐森、ここはお嬢の気持ちを汲んであげようや。」
「だが右城。 ! ・・・わかりました。」
二人が席を立ち店から出て行った。
「お待たせいたしました。さあ、行きましょう!」
いやあできればあの方達いた方が良かったんじゃという言葉は心にしまっておく。
さて私立黒楼谷高校はここから電車で四駅先の南川名木にある。
タイミングよく電車が来たので乗り込む。
さて。
俺はチラリと後方を見るとさっきの二人がやはり後をつけてきていた。そりゃそうだよな。
まあでも学校に着いたらマリアと道野辺を二人に任せて俺一人で乗り込むのも悪くはないな。
もし、噂が本当だったとしてそいつが安全な奴だとは限らないしな。
「カンナちゃんどうかしたん?」
「あ、ちょっと考え事してた。」
「そういえば私、南川名木って初めて行きますの。どのような所なのでしょう?」
「うーん、あたしの知る限り南川名木自体はあまり有名じゃないかなー。黒楼谷高校があるって感じで有名になってたようなものだし。」
「そういやなんで黒楼谷は廃校になったんだ?」
「知らないの?確か・・・突然学校の理事会が経営をやめちゃったのよ。」
「何でまた。後任とかもいなかったのか?」
「何か突然経営を諦めますとか言って辞めちゃったらしいわ。その後誰もあとにつかなかったから廃校になったんじゃない?」
「さすが道野辺様、情報に関して長けていらっしゃいますわ。」
「いや、それほどでもないけど。」
頭をかきながら謙遜してる。少し照れてるようだ。
《次は~南川名木~南川名木~》
「お、着いたみたいだな。」
俺らは電車を降り駅前に出る。
「学校はここから歩いて20分くらいみたいね。」
道野辺がナビのアプリで調べてる。
今は午後4時を過ぎたとこだ。
あの二人は・・・ついてきてくれてるな。
俺達は学校を目指して歩き出す。
「あ、そういえば。」
先を歩いてた道野辺が急に立ち止まる。
「どうかしたか?」
「黒楼谷って数年前【さいていの男】って呼ばれてた人がいるらしいのよ。」
「最低の男?どういうことだ?」
「あたしもそんな風に呼ばれてた人がいたってことくらいしか知らないのよ。」
「もしかしたら取り壊しの邪魔をしているって男の方と何か関係があるかもしれませんわね。」
そうこうしているうちに目的地についた。
「ここが・・・黒楼谷。」
まさに廃校って感じではなく思っていたよりも外観は綺麗だ。
「あ!」
マリアが声をあげる。
「どうした!?」
「いえ、今学校の窓から誰かこちらを見てる気がしたのですが・・・気のせいだったみたいですわ。」
「もう、驚かせないでよー」
「すみません・・・。」
はっと思い後を振り向くと俺達の後について来ていた二人の姿が消えていた。
『妙な縁とはいえ――』
・・・俺はこの時、なんとなくこの学校にいる気がした。
――――【さいていの男】が。




