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犠牲の先にある奇跡  作者: 人生浪人
犠牲の先にある奇跡
7/14

高津マリア

――――吸い込まれるような碧眼に見つめられドキっとする。


「あ、あの違いましたら申し訳ございません!」

少女の声にハっとする。

「あ、いや、俺が神無祐人(かんなしゆうと)です、はい。」

こういうタイプの女の子って話したことないからどう接すればいいかわからない。

「ああ!やっぱりそうでしたのね!良かった…。」

少女がホッとし、嬉しそうな表情で手を胸に当てる。

・・・よく見ると結構なものをお持ちだ。


チーン エレベーターが五階に到着した。


「あ、えーととりあえず俺の病室にでもく、来ます、か?」

「はい!あ、あの無理せず御友人とお話するよう接していただいて結構ですよ。」

「そ、そう?」


カチャ

「どうぞ、そこの椅子座ってもらっていいから。」

「はい、ありがとうございます。」

行儀良く座る少女

「あの、ところで君は・・・」

「あら!私(わたくし)ったら自己紹介がまだでしたね。」

「私、高津マリアと申します。どうぞマリアとお呼びください。」

「えっと、じゃあマリア。俺の記憶が正しければ五日前、トワに襲われてた子・・・だよね?」

「はい・・・、あの時は危ない所を助けていただき、本当にありがとうございます。神無様は命の恩人ですわ。」

ぺこりとお辞儀をする。

あの時は必死でよく見てなかったけど・・・なるほど、溜息が出る程の美少女とはこういうことを言うのか。


「あの・・・どうかなさいましたか?」

おわっ、思わずみとれてしまった。

「いや、たまたま通りかかった時に悲鳴が聞こえたからさ…。」

「あの時は突然現れた彼から逃げるのに必死でした。・・・もし神無様が来てくださらなかったら今頃・・・。」

マリアはそういいながら顔を曇らせる。

俺はちら、とマリアの腕を見る。右腕の袖からに包帯が巻かれているのが少し見える。


俺が駆けつけた時、確かに怪我は無かったはずだ。

たぶん、俺の怪我が無くなっているのも関係してるとは思うんだけど。

「あのさ、その、君の腕の怪我なんだけど。」

マリアはハッとしてそれを隠す。

「その怪我、あの時に受けた傷って聞いたんだけど。俺が来た時、無かった…よね?」

「・・・・・・。」

黙ってしまった。聞いたら不味かったのかな・・・。

「あー・・・その言いたく無ければいいんだ。もしかしたら俺の勘違いかもしれないし。」

マリアは黙って俯いている。

「・・・ただ、俺は気になってるんだ。どうして俺は怪我も無く無事だったんだ?

正直、俺はあの時・・・死ぬと思った。それくらい酷いダメージを受けてた。

なのに何でか、俺は蹴られた痣ひとつ無く無事だった。」

「・・・・・・。」


「・・・何があったかわからないけど、もしマリアが何かして助けてくれたなら・・・。」

「ありがとう。俺を助けてくれて。」

「・・・!」


そう、どっちにしろ俺が助かったことには変わりない。

例え勘違いだったとしても、救急車を呼んでくれたのもマリアなんだし。

なんにせよ、俺自身もマリアに対してお礼を言いたかった。


「・・・神無様は」

それまでずっとだんまりだったマリアが口を開く。


「・・・私に【不思議な力】があるって言ったら信じていただけますか?」


それを聞き俺は耳を疑う。

不思議な力。俺と同じような力をマリアも持ってるっていうのか?


「・・・信じるよ。」

俺はコクリと頷く。

それを聞き、マリアは少しだけ嬉しそうな顔をして語りだす。

「小学生の頃、私は自分にこの力があることを知りました。」

「ある日、お友達と帰宅途中の私は交通事故にあいました。私は頭をすり血を流していましたがそれ以外は軽症、ですがお友達は全身を強く打ってしまい、息も絶え絶えな状態でした。」

「私は泣きながら彼女に近づき話しかけ続けました。嫌だ、死なないで、と。」

「その時、私から流れた血が彼女にかかった瞬間、彼女の身体が淡い光に包まれたのです。

そして光がおさまると彼女の怪我は無くなり、元通り元気な状態でした。」


なるほど・・・彼女の【不思議な力】っていうのは


「私の力は・・・【私の血をかけた相手を癒す力】。」

そう言って彼女は右腕をさする。


そうか、この子は俺の怪我を治すために自分で右腕を傷つけたんだ。


「・・・気味が悪いですよね、こんな力。・・・すみません、黙ってて。でもこんな力信じてもらえないと思っておりましたので・・・。

あの方が逃げていった後、駆け寄ると神無様が息をしていらっしゃらなかったので力を使うしかありませんでした。幸い、あの方がナイフを残していったのですぐ使えましたが。」


まったく・・・助けるべき相手に助けられるだなんてざまあない。

「・・・謝るのは俺の方だ、俺が早く駆けつけられればマリアに腕を傷つけさせる必要なんてなかったんだ。ごめん。」

「いえ!私がこうして生きていられるのも神無様のおかげですので・・・謝らないでください。」

「いや、正直この際だからマリアには教えておきたい。あの時俺がボロボロだったのは・・・俺も、マリアと同じように不思議な力によるものなんだ。」

「え・・・?」


俺は自分の力のことを説明した。

自分を犠牲にして奇跡を起こす力。あの時は力で身体がボロボロだったこと。


「そう・・・だったのですね。神無様にもそのようなお力が・・・。」

「俺の場合は元々死んだ母さんの力みたいなんだけどね。母さんは俺を守って死んで、力は俺に引き継がれたんだ。」

「まあ!・・・神無様はお母様も立派だったのですね・・・。」

寂しそうな、悲しそうな今にも涙が出そうな目でマリアが言葉を返す。

あ・・・なんだか暗い空気になってしまった。


「いやー、まあでも俺と同じように不思議な力を持つ人がいるとは思わなかったよ。」

「そうですわね、私も神無様が初めてです。」


・・・!そうだ不思議な力といえば。


「マリア!ちょっと聞きたいんだけど。」

「はい、なんでしょうか?」

「君もあの時、トワが黒い渦に消えていったのは見たか?」

「・・・はい、見ましたわ。あの方が何やら黒いものに吸い込まれ消えていくのを。私も信じられなかったので警察には黙っておりましたけど。」

やっぱりマリアも見ていた。

「あの方も私達と同じように不思議な力を・・・。」

「いや、あの時あいつは誰かに頼んでいたみたいだった。つまり共犯者がいてそいつが俺達みたいな何か力を持っているんだと思う。」

「警察の方々が私達をしばらく護衛するとは言っておりましたが、あのような力があるのでは・・・。」

「・・・あいつは去り際に『覚えてろ』って言っていた。・・・正直、いつまた襲われてもおかしくないな。」


がばっ


マリアが抱きついてきた。

「ちょ・・・」

「神無様!私、怖くて仕方ありません・・・!いつまたあのような目に遭うかと思うと・・・!」

マリアは瞳に涙を浮かべ、震えている。


そうだよな。普通ならトラウマで外に出るのだって怖いはずなんだ。

それなのに、俺に会うために頑張って来てくれたんだ。

・・・こうなったのも運命かもしれない。


「マリア。」

俺は抱きつくマリアの頭に優しく手を置く。

「大丈夫、俺が君を絶対に守ってやる。あいつも、トワも捕まえる。」

「え・・・?」

「俺には不思議な力がある、誰かを守るための力が。」

「・・・で、でも、そのお力を使っては神無様が・・・。」

マリアがかすれた声で心配そうに言う。

「『私が犠牲になることで誰かが救われるなら私はそれでもいいと思う』。これが母さんの口癖だった。

俺もそう思う。だから俺が死んでも君を守る。」

「神無様・・・そんな死んでもだなんて。」

「心配すんなって。まあ今回はさすがにちょ~っとばかし危なかったけど次は気をつける!」

「・・・ありがとうございます。」

抱きついていたマリアが離れる。

「・・・でも、きっと神無様はまた今回みたいに無茶をするでしょう?」

「う・・・。」

まあそれは結果そうなるかもしれないのは否定できない。

「ですから、捕まえるのに私にもご協力させてください!」

「・・・え?」

「私の力があれば神無様が傷ついても癒すことができます!だから、私も一緒にあの方を捕まえます!」

あれ、この子こんなアクティブな子なのか?

「いや・・・でも女の子を危ない目に遭わせるわけには・・・。それにマリアの力も身体を傷つけなくちゃいけない、年頃の女の子にそんなこと。」

マリアが左腕の袖を捲くって見せる。

「あ・・・」

よく見ると、いくつも傷あとが残っている。それもひとつやふたつではない。

「・・・私もいろんな人や動物を助けるのに何度も力を使ってきました。今更傷が増えた所でどうってことありません、ですから・・・。」

彼女が真剣な眼差しで俺を見つめる。


そうか・・・彼女も俺と同じで誰かを助けるのに自分が犠牲になることを厭わない人間なんだな。

「ふう・・・。わかった、協力しよう。でも本当に危険な状態じゃない限りその力は使わないこと。」

ぱあっと彼女の顔が明るくなる。

「わかりましたわ!」

うーん、まあでも俺もマリアも狙われてる可能性があるってことはできるだけ一緒にいたほうがいいっちゃいいのか・・・?


こうして俺達に変わった協力関係が生まれた。


連絡先を交換し、帰るマリアを入り口まで見送る。

「あ、そういえば神無様はどちらの学校へ通ってらっしゃるのですか?」

「俺は園田高校に通ってるよ。五条ヶ丘女学院とは結構離れてるな。」

「園田高校ですね・・・わかりました。ありがとうございます。」

少し考えた表情をし、迎えに来た車に乗りマリアは帰っていった。

「・・・すげえ高そうな車だったな。さすが五条ヶ丘の生徒。」


なんだか長い一日だったな。

そう思いながら俺は病室へ戻っていった。



――――六日後

検査も問題無く、昨日退院した俺は今日からまたいち高校生へと戻っていく。

「退院おめでとう。」

「無事で良かったねー。」

クラスの友達から各々心配した声をかけられる。

「おう、退院おめでとう。」

荒井も声をかけてきてくれた。

「ああ、見舞いありがとうな。」

「なんてことない。」

相変わらず口数は少ないが嬉しそうに見える。

「俺がいない間なにかあったか?まあたかだか一週間くらいじゃ何も・・・」

「それがあるんですよ!お兄さん!」

ちびっこ高校生道野辺(みちのべ)が俺の言葉を遮り入ってきた。

「なんだよ、またバス乗ろうとして小学生に間違えられたのか?」

「ちっげーーーよ!しかも間違えられたのは電車だよ!」


こんなやりとりが本来の日常である。


「で、何があったんだよ。」

「それが二年に超美人の女の子が転入してきたのよ。」


ふむ


「でもってそれがまさか五条ヶ丘女学院からの転入よ。」


ん?まさか


「金髪碧眼の子でねー。」

「神無様ー!」

俺を呼ぶ聞いた声にクラスの皆振り返る。

そこに立っていたのは。

「そうそう、あんな感じの・・・って本人じゃん!」


高津マリア、その子であった。


つかつかと教室に入ってきて俺の前に立ち止まる。

「クラスを聞くの忘れておりましたので探しましたわ!私、昨日こちらに転入いたしましたの。

その、神無様とできるだけ一緒にいたいので・・・。」

ははは、そのセリフは誤解を招きそうだから止めてくれ。


このあと取材という名目で道野辺にめちゃくちゃつっこまれた。

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