第二十話 おじいちゃんと救援部隊
訓練場では、第一騎士団と第二騎士団の騎士たちが慌ただしく出撃の準備を進めていた。
鎧を身に着ける者。
馬へ荷を積む者。
弓や槍の点検を行う者。
魔導士たちも魔道具や回復薬を確認し、救援部隊は刻一刻と出撃態勢を整えていく。
ガレスは集まった騎士たちを見渡した。
「今回の任務は討伐ではない」
訓練場に静寂が訪れる。
「第一目標は村人の救助と避難」
「第二目標は魔物の排除」
「魔物は必要以上に追うな」
「住民を守ることを最優先とする」
「はっ!」
数百を超える騎士たちの声が響き渡った。
◇
その様子を見つめていた剣一郎は、静かに国王の前へ歩み出る。
「陛下」
アルフレッドはゆっくりと頷く。
「剣一郎殿」
「わしも救援へ同行させていただきたい」
訓練場が静まり返る。
ガレスも剣一郎へ視線を向けた。
「昨日助けた兄妹の母親がおる村です」
「見過ごすことはできませぬ」
国王は迷うことなく答えた。
「願ってもないお言葉です」
「どうか騎士たちへ、お力添えを」
剣一郎は静かに一礼する。
「承知しました」
◇
そのやり取りを見ていた悠真が一歩前へ出た。
「僕も行きます」
ガレスが視線を向ける。
悠真は木剣の柄を強く握る。
「僕にできることはまだ少ないです」
「でも、何もしないまま待っていることはできません」
美咲も杖を胸の前で抱き、一歩踏み出した。
「私も同行します」
「怪我をした人がいるなら、回復魔法で助けられるかもしれません」
国王は二人の決意を静かに見つめた。
「ガレス」
「はっ」
「お二人を同行させよ」
「ただし、決して無理はさせるな」
「必ず守り抜け」
「承知いたしました」
ガレスは二人へ向き直る。
「皆さんは私の近くを離れないこと」
「勝手な行動は命取りになります」
「はい!」
二人は力強く返事をした。
◇
王城の薬師の部屋では、レオとリナが落ち着かない様子で窓の外を見つめていた。
そこへ悠真たちが姿を現す。
「悠真さん!」
レオが駆け寄る。
「村へ行くんですよね?」
悠真は真っ直ぐ頷いた。
「うん」
「必ずお母さんを助ける」
レオは目に涙を浮かべた。
「お願いします……」
美咲はリナの前にしゃがみ込み、優しく微笑む。
「大丈夫」
「お母さんも、村のみんなも助けるために行くから」
リナは小さな手で美咲の手を握る。
「お姉ちゃん……」
「お母さんを助けて」
「約束する」
美咲は優しく頷いた。
その様子を見ていた剣一郎は、レオの肩へ静かに手を置く。
「心配じゃろう」
レオは涙を堪えながら頷く。
「はい……」
「じゃが、お前さんはここで妹を守るんじゃ」
レオは顔を上げる。
「お母さんも、お前さんたちが無事であることを願っておる」
その言葉に、レオは拳を握り締めた。
「……はい!」
◇
やがて城門前には、第一騎士団と第二騎士団、総勢三百名を超える救援部隊が集結した。
騎兵。
槍兵。
弓兵。
魔導士部隊。
さらに荷馬車には大量の回復薬や食料が積み込まれている。
村人を救うための準備は万全だった。
ガレスは騎士たちを見渡す。
「ハルト村には二百を超えるゴブリンに加え、ブラックファング、オーガも確認されている」
「油断はするな」
「魔物の目的はまだ分かっていない」
「各隊、互いに連携を密にしろ」
「はっ!」
騎士たちの力強い返事が響く。
剣一郎は静かに鞘へ手を添える。
悠真は剣を抜き、ゆっくりと息を吐いた。
美咲も杖を握り直す。
ガレスが右手を高く掲げる。
「第一騎士団、第二騎士団!」
「出撃!」
城門がゆっくりと開く。
三百を超える騎士たちが一斉に行軍を開始した。
その先に待つのは、王国始まって以来とも言える未曾有の魔物災害。
果たして彼らは村を救うことができるのかーー




