第62話
「そういえば、レモンさん。どうして私たちがここにいることが分かったんですか?」
「いえ、俺がここに来たのは偶然です。先輩たちが次に狙うかもしれない四か所を、同時に調べたんですよ。俺はたまたま、この場所の担当に入れてもらったんです」
「そうですか。それは私たちの運が悪かったんですね。というより、今まで運が良すぎたのか」
ハクビが、焚火を見ながらため息をつく。
「ハクビ先輩。答え合わせさせてください。今回の盗掘の種明かしを」
ハクビは頷いた。
レモンは淡々と、これまでバネッサと推測した内容を説明する。
ルートの更新がされていないことを使った、捜索の回避。
難所のない鉱山ばかりを狙った理由。
今回は、それだけでここにたどり着いたこと。
レモンたちの推測を聞き、ハクビはあっさり白状し、細かい部分を補足した。
驚いた点がある。
彼ら老人四人が盗掘を始めたのは、三か月前からではなかった。
五か月前からだった。
「そんな。私たち老人が、毎週毎週、休みなく岩を掘れるはずないじゃないですか」
ハクビは苦笑いしながら答える。
五か月前に、次のパトロールが一番遅い鉱山を掘った。
そこが発見されたのが、たまたま三か月前だっただけだという。
勤勉に見えていたのは、偶然の産物だった。
「まあ、最初の頃は、ハル商会のぼんくら連中だけが調査していたしな。時期のずれとか、気づかなかったんだろう」
オシロが、欠伸をしながら言い捨てた。
バネッサは、ここにハル商会のゲンがいなくて良かったと思った。
そこで、はっとする。
ハコネが、ゲンを連れていったことだ。
ミカゲはゲンと、まったく会話をしなかった。
その様子を見て、ゲンがいると、この焚火の会合がうまくいかないと考えたのだろうか。
もしそうなら、ハコネさんはなかなか切れる人ですね。
バネッサは、焚火をぼんやり眺めながら思った。
また、会話が途切れた。
バネッサはレモンを見る。
彼は焚火の炎を見つめながら、両手を固く握りしめていた。
本当に聞きたいことがあるのに、切り出せないでいる。
焚火の薪が、ぱちりと音を立てて崩れた。
赤い火花が立ち上る。
パトラが足を引きずりながら焚火に近づき、薪を追加した。
しゃがんだまま、レモンに顔を向ける。
「レモンさん、あ、足、い、い、痛いですか」
大丈夫、とレモンは片手を上げる。
全員が、その光景を黙って見ていた。
パトラの一言が、レモンの緊張を少し和らげたようだった。
レモンが胸のポケットから小瓶を取り出す。
ジンジンだ。
数粒を口に放り込み、噛みしめる。
「ジンジン、俺にもくれよ」
「私にも頂けますか」
「俺、俺も、欲しい、ぞ」
「懐かしいな。一粒頼むぜ」
レモンは立ち上がろうとするが、パトラが手で制した。
小瓶を受け取り、パトラが老人たちの口に一粒ずつ放り込む。
焚火の周りに、独特な芳香が広がった。
「先輩方。あまり時間もない。最後に聞かせてくれませんか」
「……」
「なんで、こんなことをやったのか。その理由を。……頼みます」
レモンが、絞り出すように、一番聞きたかったことを尋ねる。
「聞いてどうするのですか、レモンさん」
「どうもしない。商会に話すつもりもありません。ただ」
「……ただ?」
「分からないまま、納得できないまま、墓に入りたくはない」
「……」
「あんたたちが、ハル社長憎しだけで、こんなことをやるはずがないんだ。俺は納得できない」




