第53話
ハクビとミカゲは、今回の計画の目標とスケジュールを決めた。
雪の季節になるまでの六か月の間に、アキ商会時代の一年分の鉱石を掘る。
現在対象としている鉱山の推定埋蔵量からすれば、不可能ではない。
だが、このチームの体力が持つだろうか。
ミカゲは不安になる。
鉱石の隠し場所は、鉱石が掘れないとされている、商会近くの半島にした。
ここは慣例で、二年に一度、調査業務が入る。
ミカゲが設定したものだ。
ルート運用が変わっていないため、来年には半島への調査が入るはずだった。
これで、自分たちに何かあっても、ハルアキに鉱石は戻るだろう。
この鉱石はハルアキに捧げる。
そう書いた手紙を添える。
差出人は、アキのファンより、とした。
森の入口に、四人が立つ。
作戦開始、最初の日だ。
まだ夜明け前。
目の前の森は、かすかに霧がかっている。
見慣れた遠くの山の峰が、ぼんやりと見える。
何だか、違う山のようにも見えた。
「久々だな、ここ。俺、アキちゃんおんぶして、鉱山まで、行ったん、だぞ」
ムーバーが、いつもより言葉数が多い。
「アキちゃんは、いつもついていくって聞かなかったもんな」
「あの頃の俺たちは、ルートも何もなしに強引に進んでいたからな」
返す軽口も、何だか表面ばかりをつるつると滑っている感じがした。
「……では、山に入りましょう」
ハクビが三人に目を向けず、森に向かって言う。
全員、無言で頷き、歩き始めた。
森の中を進む。
この先の鉱山は、ミカゲのルート設計では、採掘は一か月以上先の予定だった。
ミカゲとしては、一番安全なルートを選択したつもりだ。
それでも、警戒しながら進む。
全員、無言で歩く。
森を歩く採取師としては当たり前なのだが、ミカゲにはこの空気が辛かった。
目標地点の直前で宿営する。
焚火は焚かない。
各人、保存食をかじり、順番に寝床に入る。
ミカゲは、深夜から明け方までの周辺警戒を担当することが多い。
今回も同様にしていた。
寝袋に潜り込む。
しかし、ミカゲはなかなか寝つけなかった。
翌日。
鉱山に到着する。
全員が、よく知っている現場だ。
各員、黙々と配置に着いた。
周辺警戒を担当しているミカゲは、遠くから、鉱脈の前に立つ三人を見る。
心拍が上がる。
今なら、まだ引き返せる。
走って止めに入りたい。
だが、オシロの覚悟の言葉が、ミカゲを引き留める。
そして、ムーバーの大つるはしが、大きく構えられた。
大岩に、突き刺さる。
音は、どこにも響かなかった。
◆ ◆ ◆
「レモンさん。ふざけているつもりはねえよ。これでも大まじめだ」




