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第52話

ミカゲが撮影してきたデジタルカメラの画面を見ていたオシロが、声を上げた。


「ミカゲ、こいつって」


採掘跡だけなら、スマホでよかった。


だが、商館周辺を撮影するため、ミカゲはデジタルカメラを購入していた。

スマホのシャッター音の消し方が分からなかったためだ。


出入りする採取師の顔を撮影していたのだが、ミカゲは懐かしい顔を見てしまい、つい撮影した。


「ハルアキ坊ちゃんかよー。男前になったなあ」

「私にも見せて……ああ、相変わらず鼻筋と口元がアキちゃんそっくりですね」

「くくく。あご髭、生やしてるよ。あのハルアキ坊ちゃん、が」

「他の写真ないのかよ。もう、ミカゲは気が利かねえなあ」


この個室内の温度が、少し温かくなった気がした。


◆ ◆ ◆


四人が握手を交わした夜から、四か月が経った。


ハクビの事務処理能力は若い頃のままで、少しも衰えていなかった。


ハル商会の商圏の南方面に、テレビ番組のモデルになった港町がある。

海外からも聖地巡礼として観光客が訪れるそうで、老人四人が歩いていても目立ちにくい。

ハクビは、現在所属する商会のコネを使い、拠点としてこの港町にアパートを借りた。


車も用意した。

保存食の材料など、各種の物資や機材をアパートへ運び込んだ。



オシロは変装をして、酒場でハル商会の若い採取師に話を聞いて回った。


老採取師が仕事を探している体で、ハル商会の様子をそれとなく聞く。


若手の採取師は、お勧めできないと薄ら笑いで答えた。

代替わりしたばかりの採取師頭目が、年寄りの採取師連中のわがままを制御できていないらしい。


タイミングを見て他の商会へ移るつもりだ。

そう言う若い採取師の言葉に、オシロはさらに怒りを強くした。



ムーバーとミカゲは、ルート運用にイレギュラーがないかを徹底的に確認した。


天候によって数日ずれることはあるが、ほぼ十年前と変わっていない。


オシロが得た、頭目急死による代替わり。

そして、引き継ぎがうまくいっていなかったという話。

それは本当だと、ミカゲは確信する。



リハーサルがてら、四人は最近採掘が終わったばかりの鉱山に入った。


各人の能力の衰え。

魔道具の動作確認。


昔からの、古いフォーメーションが通用するのか。

それらを確認する必要があった。


ムーバーが、大まかに岩を砕く。


彼は、阻害と静穏を所持している。


阻害は、センサー妨害。

静穏は、音響遮断装置だ。


大きなつるはしが出す音を、周囲に響かせないための静穏である。

このため、二つ持ちの彼はセンサーを持つことができない。


サポートとして、ハクビとオシロがそれぞれ阻害とセンサーを持つ。


ハクビのセンサーは対鉱物探索。

オシロはセンサーは対人捜索。


ムーバーが大まかに砕いた岩石から、二人で魔法鉱石をハンマーとタガネで採取する。


採掘作業後は、オシロが痕跡を消す後片付けをする。

性格が荒っぽいオシロだが、この仕事は確実にこなす。


ミカゲは、阻害と対人探索センサーを装備し、周辺を警戒する。


リーダーのモーリが生きていた頃は、ミカゲとともに周辺警戒を担当していた。


何かあれば連携し、どちらかが作業をしている三人に連絡する。

そういう役目だった。


今回は、その連絡をミカゲが一人でやるしかない。



「なあ、みんな。俺、足がこれなもんでよ。だから、いざという時は俺を置いて逃げてくれよな」


オシロがビールを飲みながら、他人事のように言う。


そんな真似はさせない。


俺があのぼんくら連中をいち早く見つけて、あんたを背負ってでも逃げてやる。


ミカゲは無言でビールをあおった。

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