↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/65

第5話

クロエは店を後にした。


やれやれ。

バネッサさんを、ずいぶん落ち込ませてしまった。


あとでアキラに、色々と小言を言われそうだ。


しかし、これから楽しくなる予感がする。

それくらいは、我慢しよう。


◆ ◆ ◆


バネッサとアキラは、そのまま打ち合わせに入った。


今回は、ゆっくり準備している時間がない。


まずは偽装用の書類である。

アキラはバネッサに必要事項を確認しながら、手早く情報をまとめ、部下にメールを送った。


次に、店のこと。


バネッサは、アルバイトのリーダーであるミサトに、ひと月ほど店を空けることを伝えた。

その間の代理店長として、アキラを紹介する。


ミサトは最初こそ目を丸くしていたが、アキラが厨房に立つと、すぐに納得した。


アキラは料理が上手い。

しかも、覚えが早い。


バネッサが出汁の取り方を説明すると、彼女は一度で大まかな流れを理解した。

二度目には、火加減と香りの変化まで見ていた。


「……すごいですね」

「いえ。面白いです」


アキラは真面目な顔で鍋を見つめている。


その横顔を見て、バネッサは少しだけ安心した。


装備品の手入れも行った。


今回は、長丁場になる可能性が高い。

普段はあまり使わない道具も、念のため持っていくことにする。


山に入るための靴。

雨具。

携帯食。

採掘用の道具。

隠蔽用の魔道具。

そして、いつもの収納用の小さなトランク。


最後に、アキラに手伝ってもらい、髪を黒く染めた。


本当はカラーコンタクトで瞳の色も変えたいところだったが、体質に合わない。

そこは諦めることにした。


鏡の中には、いつもより少し地味なバネッサがいた。


地方から来た、無名の助っ人採取師。


そう見えればいいのだが。


◆ ◆ ◆


三日後。


バネッサは、東北へ向かう列車の中にいた。


列車は、海岸沿いを走っている。


窓が開いたら、きっと気持ちいいのだろう。

そんなことを考えながら、バネッサは光る海を眺め、駅弁を頬張った。


現地の地図や詳しい状況は、到着後、相手の商人を交えて説明を受ける予定になっている。


人見知りであり、さらに久遠でもあるバネッサは、新しい人と出会うのがあまり得意ではない。


珍しがられる。

探られる。

昔のことを聞かれる。


そういう時間は、できれば避けたい。


しかし、今回はうどん屋の未来がかかっている。


バネッサは、ぱん、と両頬を叩いた。


気合を入れる。


そして、二つ目の駅弁の蓋を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。