第40話
うどん屋からアパートに戻り、いつもの仕事着に着替える。
見た目はキャンパーに見えるように改造したジャケットとパンツ。
登山用ブーツを履き、リュックを背負う。武装はサバイバルナイフのみ。
採掘の予定はない。防塵用のゴーグルとマスクは置いていく。
今回「アネッサ」は戦闘力は皆無という設定になっている。
荒事には基本対応しないつもりであるし、クロエもそこは了承している。
(まあ、いざとなれば切り札はありますが、あれは色々問題ですからね)
商館にパトラと到着。時間前だが、すでに他の採取師は集まっていた。
先輩を待たせてしまった形になる二人は恐縮しながら列の後ろに立つ。
ホリイとレモンから、昨日同様の説明があり、レモンは今回の相談役というよく分からない立場で同行すると紹介された。
ワンボックスカーと普通車に分乗して森の入り口まで移動する。
バネッサは初顔のメンバーが多いワンボックス、オリヅルとテツとパトラが普通車に。
パーティリーダーはクロエ商会のハコネと名乗った。
オリヅルの同期らしい。長身で締まった身体付きの戦闘特化。気が利くタイプで、バネッサが人見知りであるとすぐ見抜き、バネッサを初顔合わせが乗るワンボックスに乗るよう指示した。
後部座席に並んで座っているのは、クロエ商会のムギとジョナス。
小柄で年齢不詳の男性のムギは一般的な採取師、つまり採掘と潜伏を専門としているが、小柄な身体を生かした隠密行動が得意なのだそうだ。
一見外国人に見えるジョナス。30台前半の男性。調査を専門にしている採取師。レンジャー特化という珍しいタイプだ。
二人はクロエが抱える採取師の中でもトップクラスのレベルだそう。今回の密猟者捜索の成果がでないので、不機嫌で黙りがちだけど気にしないでとハコネが耳打ちした。
今回の道案内役であるハル商会の採取師は、例の定例会で一番騒いでいたゲン。
仕事モードなのか、助手席で腕組みをしながら黙っている。先輩であるレモンが同乗しているため緊張しているのかもしれない。
相談役であるレモンは、いつも通り(と言ってもバネッサも出会って一週間ちょっとだが)、に見える。聞かれたことには答えるし、軽い冗談も言って車内を和ませた。しかし、会話が途切れると窓の外をみて何か考えている。バネッサは気がかりだった。
北の第二ポイントに続く森の入り口に到着した。
周囲に駐車している乗用車が多い。近くにあるセメント工場の社員の車だろうか。
盗掘犯が使っている車が紛れていたとしても分からない。
出発が遅かったため、もう日が傾きかけている。
「じゃあ、山に入ろう」
一番近い宿営地点に向けて、ゲンが先導して森の中を進んだ。
◆ ◆ ◆
「アネッサ、君の隠蔽(光学隠蔽装置)のおかげで焚火ができたよ、ありがとう」
ハコネが真顔でバネッサに礼を言う。
バネッサの隠蔽(光学隠蔽装置)は周囲に焚火の光を漏らさない。今回の任務のような場合、通常は焚火をせずに野営するが、この装置によって身体と心の暖がとれる。
パトラが焚火をしますと言った時、ハコネは常識外れだと言いかけたが、相談役のレモンがアネッサの魔道具があれば問題ないと頷いたので試したところ、確かに周囲に光が漏れていない。
特殊な性能の魔道具だなとハコネは思ったが、メンバーも嬉しそうだし、まあいいかと素直に礼を言った。
「で、明日以降の予定ですが、今回の出動時間の関係で、この地点までしか進めていません。このため、現場への到着が明後日の昼になります。明日の宿営は、現場より少し離れたこの地点を目標として進みます。」
焚火を囲みながら地図を片手にハコネが説明する。
通常であれば早朝に商館を出発してもっと先で宿営して、翌日の夕方くらいには現地に到着するが、今回は別の任務から戻ってきたばかりのハコネ達をそのまま出動させた結果、もう一泊が必要になるとハコネが言う。
「ああ、すまない、リーダー。言いそびれていたが」
レモンが手を挙げてハコネに頭を下げる
「何でしょう、レモンさん」
「いま、俺たちがいるのは、正規ルートじゃない。土地勘のないあんたらを騙すような真似して悪いが、ここは旧旧ルートだ」




