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第39話

翌朝。


バネッサは装備の点検をし、保存食などの消耗品を補充した。


本日帰還するクロエ商会の採取師たちを待つ関係で、バネッサたち第二部隊の出発は午後になる。


いつもより少し遅めにハルの商館へ向かう予定だ。


だが、部屋にいても、もうすることがない。


コンコン。


パトラのノック音だ。


彼女も、時間を持て余していたらしい。

少し早いが、昼ご飯を食べに行こうという話になった。


居酒屋ではランチも出している。

だが、昨晩も行ったばかりで、少しつまらない。


久しくうどんを食べていない気がする。

バネッサは、パトラとニックのうどん屋へ向かうことにした。


商店街とも呼べない。

しかし、そこそこの店舗が集まっている区画へ向かう。


昼前の通りには、宅配のトラックなどが走っており、そこそこ活気があった。


日差しは柔らかく、良い風が吹いている。


この後、仕事がなければ散歩日和だったのに。

バネッサは、そう思った。


「こ、今回もレモンさんと、い、い、一緒で嬉しいな」

「パトラ、レモンさんと仲良しですね」

「な、仲良し、に、み、見える?」

「はい。レモンさんと話すパトラは、緊張していないように見えますよ」


まるで、おじいちゃんと孫。


とは、言わない。

転生者には、血縁関係のある人間がいない。


ハルとハルアキのように、こちらの世界で作るしかないのだ。

これは転生者同士の、無言のマナーである。


「レモンさん、や、優しいから、だよ」

「男性でも、優しい人はいますよ。私の師匠も優しかったです。ガサツで雑だったけど」

「お、表じゃなくて、根っこが、や、優しいと思うの。か、か、感じたの」

「何だか分かりますよ。最初はサングラスとランニングシャツで、変なお爺さんだと思ったけど」

「そ、そうだね。あれは、へ、変だね」


二人で笑い合う。


バネッサは、パトラにはあまり良い出会いがなかったのだろうかと思った。


だが、そこまで踏み込んで聞くことはできない。

バネッサは、他人に踏み込むことが怖いのだ。



うどん屋には、そこそこ客が入っていた。


相席は嫌だなあと店の外から覗いていると、店主のニックが気づいて手招きした。


食事が終わり、ビールを飲んでいた男性客をカウンターへ移動させ、バネッサとパトラをテーブル席へ案内する。


「ニックよぉ。客を何だと思ってるんだぁ」

「大事に思ってるよ、タカさん。でも、そこの方がテレビ見やすいだろう?」

「まあ、それもそうかぁ。嬢ちゃんたちぃ、今日は春菊天がおすすめだぜぇ」

「タカさんが何度も注文するから、もう売り切れだよぉ。あ、お嬢さん方、ごめんね。春菊天以外で好きなやつを注文してね」


他の客がいるためか、ニックは転生者の話題を出さなかった。


二人にフレンドリーに話しかけながら、ごぼう天をサービスしてくれる。


普通に、一般社会に溶け込んでいるニック。


もし自分も互助会に助けられていたら、こういう人生を歩めたのだろうか。


いや。


久遠である自分は、同じ土地に長く根づく生活はできないだろう。


自分のうどん屋も、そのうち退去することになる。

そう思うと、少し寂しくなった。


店を出て、バネッサは両の頬をぱちんと叩く。


さあ。


うどんもチャージしたし、今日もがんばろう。

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