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第38話

今まで、山のルートだけを考えてきた。


バネッサ自身、長い採取師生活の中で、森の入口までの行程など深く考えたことはなかった。


被害のあった鉱山同士を、車が通る道路を辿って追ってみる。


今回の盗掘事件の初期は、実際に被害があった日と、それが発覚した日が違う。

だから、順番としては少しちぐはぐではある。


しかし、あることに気づく。


それぞれの鉱山から鉱山へ移動するには、必ず海岸線と並行して走る県道を通過する必要があるのだ。


つまり、この商館の目の前の道路。

バネッサが隣町の駅に降り立ち、クロエの車でここへやってきた道だ。


海岸線の県道には、四本の自動車道がT字で交わっている。

各鉱山へ向かうには、必ずそのうちのどれかの道路を使う必要があった。


海岸線の県道を背骨とするなら、四本の道路はそこから山へ伸びる肋骨のようなものだった。


バネッサは、それらの道路を基準にして、被害があった順番をなぞる。


すると、今回の盗掘者は、同じ道路を連続して使わない傾向にあるように感じた。


盗掘者の癖、だろうか。


今回、被害のあった鉱山は、北から三番目の道路を使っている。


先ほど南方面に向かった二部隊と、明日の第一ポイントも、同じ三番目の道路を使う鉱山だ。


明日の第二ポイントだけが、違う道路を使う。


つまり、バネッサたちが向かう鉱山が本命である可能性が高くなってきた。


もしそうなら嫌だな、とバネッサは思う。


レモンは、バネッサに付いていくと言っていた。

ホリイが慌てて止めたが、じろりと一睨みされて黙った。


レモンさんは、直感で先輩たちが犯人だと考えている。

それが真実だとしたら、レモンが先輩たちと相対する瞬間に立ち会う可能性が高い。


正直、そんな場には立ち会いたくないなあ。


バネッサは、軽くため息をついた。


その様子に気づいたクロエが、声をかける。


「何か、分かりましたか?」

「クロエさん。結局、もやもやしただけですよ」


バネッサは、力なく答えた。


「ア、アネッサ。お、終わったなら、ご、ご飯食べに行かない?」


パトラがおずおずと尋ねる。


確かに、昼にファミレスで食べてからずいぶん経っている。

先ほど、おつまみを少し腹に入れた程度だ。

少し遅めなので、いつもの居酒屋で何か食べよう。


「あたしも行くよ」


オリヅルが、ジュースの缶を飲み干して立ち上がる。


レモンとオリヅルは、いつの間にか酒ではなくジュースに切り替えていた。

明日のことを考えてだろう。


男性たちを残して、三人は商館を出る。


クロエが何か複雑な表情をしていた気がするが、まあいい。


今日は何を食べようか。

ミックスフライ定食もいいな。


あ、もつ煮込み定食も捨てがたい。


◆ ◆ ◆


「クロエぇ、どうしたよ。変な顔してよぉ」

「うるさいな、ハル。私はもっと彼女と知的ゲームをしたかっただけです」

「ちてき? おまえ、むっつりスケベだったっけ?」

「あー、もう酔っぱらってるな。私は帰ります!」


バネッサと飯でも、と思っていたクロエだったが、パトラたちに奪われてしまった。


クロエはぷりぷりしながら、社長室を出て行った。

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