第36話
「この鉱山は、先週の火曜日に捜索隊が確認しました。その際は問題ありませんでしたが、翌日の水曜日が大雨。盗掘作業は、木曜日以降に実施されたと考えています」
オリヅルが真面目な顔で仕事をしているのを初めて見て、バネッサは感心していた。
「根拠はなんですか、オリヅル」
「削った岩石の上に、細かい岩の粒が多く乗っていました。雨が降れば流れ落ちるサイズです」
「なるほど」
「私たちの捜索隊が到着したのが、今週の水曜日。私は周辺を確認しながら、こちらへ戻ってきました」
今日は金曜日。
オリヅルは、二日かけて戻ってきたというわけか。
確実に分かったのは、盗掘が先週の木曜日から今週の火曜日の間に行われたということだ。
これまでの作業周期、平均一週間のペースにも合っている。
移動に往復四日。
採掘にかけた日数は二日。
掘削跡の規模から考えると、掘削担当は二、三人というところだろうか。
もちろん、もっと大人数でのんびり掘っていたとも考えられる。
だが、あの荒っぽい跡は共通している。
同じ癖の採取師が、そうそう何人もいるだろうか。
そう考えると、後者の可能性は低いように感じる。
そして、必ず必要になる周辺警戒に一、二人。
通常の採取師の採掘とは違い、今回は盗掘だ。
センサーだけの警戒とは考えにくい。
盗掘パーティの人数は、五人前後だろうか。
バネッサはそんなことをぼんやり考えながら、烏龍茶を飲んだ。
「ピン、差し替え終わりました」
テツが、クロエに告げる。
地図上には、四つの青いピンが差してあった。
北側に二つ。
南側に二つ。
クロエはハルとホリイを鼓舞し、こちらに戻ってきている採取師を緊急集合させた。
酒宴の車座は、社長室の端に移動して、その様子を見る。
集まった採取師たちはこちらを見て、何を酒盛りしているんだ、という呆れた目をしていたが。
ホリイが、十六名に作戦について説明した。
次に狙われる可能性が高い鉱山へ急行する。
被害がない場合は、周辺で監視。
不審な人間がいた場合は捕獲し、商館へ連行。
八人編成の二部隊が、それぞれ南側の鉱山へ急行することになった。
バネッサも即出動かと思ったが、残っている人数が足りない。
テツ。
パトラ。
オリヅル。
バネッサ。
レモンも息巻いているが、肩が上がらないと言っていた彼を戦力には考えたくない。
明日の昼すぎには、クロエ商会から来た戦闘力の高い採取師が戻ってくる。
ホリイとオリヅルが編成を相談し、バネッサは第二パーティとして北の第二ポイントへ行くことになった。
オリヅルとテツ、パトラも一緒だ。
バネッサは安心した。
あまり知らない人ばかりだと、緊張する。
本日は、一旦お開きとなった。




