第28話
車を、森の入口付近に停める。
目立たないよう、枯草などを使って車体を隠した。
今回は、五日から六日の日程だ。
二か所の採掘ポイントが盗掘されているかどうか。
その確認が目的である。
森の入口から一番近いポイントまで、二日はかかる。
ほとんど徒歩の往復だけで、日程が消化されることになる。
装備の最終チェック。
問題なし。
水と食料の大半は、レモンが背負った。
「いえ、俺が持ちます」
テツが言うが、レモンはじろりと睨み、黙って背負子に積む。
「では、山に入ろう」
隊列は、パトラが前衛。
案内役であるレモンが、そのすぐ後ろにつく。
中衛のテツは、センサーで周辺を監視しながら歩く。
後衛は、バネッサ。
元々は山道だったのだろう。
だが今は、草が生い茂り、道としての機能を失って自然に戻りつつある。
草を分けながら進む。
必要なら、パトラとレモンが草を刈った。
もう肩が上がらないから、戦闘は頼むぞ。
そう言っていたわりに、レモンの草を刈る腕の振りは鋭い。
パトラとのハンドサインのやり取りも、まるで孫娘と会話しているように自然だった。
その姿を見て、バネッサは、ギルの時代の採取師の匂いを感じた。
この森を抜ければ、岩山の麓に到着する。
深い森を、四人は無言で進んだ。
レモンは、いつの間にかサングラスを外している。
初めて見たレモンの目は、かわいい垂れ目だった。
◆ ◆ ◆
麓と言っても、そこそこ標高のある場所で野営をすることになった。
大岩の影に、小さな洞穴がある。
過去に商会で整備した、野営用の場所らしい。
テツはセンサーを片手に、周辺警戒のルート確認のため外に出た。
離れて見てみると、大きな岩が洞穴の入口を隠している。
いい場所を選んだものだ。
パトラは、焚火ができると聞いて喜んでいた。
煙は大丈夫なのか?
バネッサはバネッサで、穴が気になるらしく、壁をじっと見ている。
テツはセンサーを打った。
周辺に、人はいない。
大きな岩の前は見晴らしも良い。
今夜はセンサーのモードを変えて、色々遊べそうだ。
◆ ◆ ◆
夜になると、レモンが干し肉と豆のスープを振る舞ってくれた。
商館に伝わる名物料理らしい。
少し辛みがある。
寒い時期なら、よく温まるだろう。
全員がおかわりできるくらいの、大きな鍋だった。
バネッサたちは、満腹になった。
食後は、焚火を囲んで雑談する。
車中の暗い話から一転、レモンの昔の失敗談を聞き、全員で小声でくすくす笑った。
そろそろ周辺警戒に出るか。
テツがそう考えていると、隣のレモンが、話をしながら胸元から小瓶を取り出した。
酒だろうか。
少し油断しすぎではないですか、レモンさん。
そう思ったが、小瓶の中身は、銀色の丸薬のようだった。
持病でもあるのだろうか。
「警戒に行ってくる」
テツが立ち上がった、その時。
それまで焚火を見ていたバネッサの顔が、ぴたりと止まった。
バネッサが小声で叫んだ。
「あの時の匂い!」




