第22話 「定例会議・3」
部屋は、再び静寂に包まれた。
パトラが。
ハルが。
怒っていた老採取師が。
啖呵を切った女性が。
バネッサの知らない、隣のごつい採取師が。
みんな、バネッサの方を向いて固まっている。
「ぶっ、くくくく」
クロエが我慢できず、口元に手を当てて、バネッサに背を向けた。
それを見てしまった女性採取師も、バネッサに背を向けて肩を震わせる。
「なんだあ、嬢ちゃん。お前、腹が──」
怒っていた老採取師が、毒気を抜かれたようにバネッサへ声を掛けようとした。
だが、隣の老採取師に口を塞がれる。
「言わないでやれ」
静かな室内にいた全員が、それを聞いてしまった。
そして、あちこちで肩が震え続けた。
◆ ◆ ◆
パトラは、アネッサを探している。
会議はその後、つつがなく進行した。
けれど、横に立っていたアネッサは、顔を真っ赤にして俯いたままだった。
ホリイが会議終了の挨拶をした瞬間、アネッサは顔を赤くしたまま、部屋を飛び出していった。
走る、というより跳んでいた。
まるで猫のようだった。
自分だったら、もっと耐えられない。
その場で泣いていたかもしれない。
パトラは、この現場が苦手だ。
男の人が多すぎる。
しかも、ガサツで、口が悪いおじいさんばかりだ。
二か月ほど前。
この商会で、二回目の定例会議があった。
その日、パトラはオフだった。
商店街で生活物資を買った足で、そのまま会議に参加した。
ワンピース姿。
足元には、買い物を入れたビニール袋。
長身で美人のパトラを、老採取師の一人が指差した。
「おい。いつから採取師は、若奥さんでもなれるようになったんだ?」
パトラは固まった。
「まあまあ、ゲンさん。ありゃあお客様だから、そう言ってやんなよ」
「そうだぞ、ゲンさん。この前見てたら、すげえ飛んでたぞ。猿みたいに」
男性恐怖症。
あがり症。
どもり癖。
パトラは青い顔をして、一言も返せなかった。
最初のおじいさんは、どうしてあんなことを言うのだろう。
後の二人も、フォローしているつもりなのか、追撃しているのか分からない。
採取師頭目のホリイさんが、何とか場を静めてくれた。
あの人は、すごく苦労しているみたいだ。
当たりも柔らかく、そんなに苦手ではない。
翌日。
ゲンさんが、目の上に青あざを作ってやって来た。
二人の老採取師に連れられている。
「すまねえ、パトラさん。悪気はなかったんだが、余計なことを言っちまった」
「……え、え、え」
「あのよ、パトラさんが、死んだかかあに似ててよ。つい、口を滑らせた」
「どう滑らせたら、あんな台詞になるってんだ、ゲン!」
「ちょっとだけ……意地悪したくなっちゃったんだ」
「ゲン、子供かお前は! まだ詫び入れてねえぞ、早く言え!」
「パトラさん。俺が悪かった、です。堪忍してくれ、です」




