第21話 「定例会議・2」
北側の調査報告が終わり、現在調査中である南側部隊の進行報告に移った。
現在この会議に参加していない、残り半分の参加者たち、ということだろう。
すでに調査を完了し、こちらに向かっているチームもあるようだ。
だが、戻るのは早くても二日後になるらしい。
一通りの報告が終わり、今後の予定の話になる。
北側で今回調査できなかった地点について、今後の調査予定が説明されようとした。
その時だった。
「ちょっと待てよ、頭目。いつから俺たちは採掘できるんだよ」
「主要な鉱山は無事だったんだ。早く掘っちまわないと盗られるぞ」
「今の補填金じゃ、酒も飲めねえんだよ。勘弁しろよ」
前列の老人たちが騒ぎ出した。
ホリイが必死に宥めるが、収まる様子はない。
パトラの顔を見ると、ため息交じりに苦笑いしていた。
毎回、こんな感じなのだろうか。
「ゲンさん達、落ち着いてくれ!」
どでかい声で、ハルが叫んだ。
老人たちが振り返り、ハルを見る。
「ハル社長さんよお。先代はもっと早く片づけてたぜ」
「補填金も、今よりたくさん出てたぜ。昆布で稼いだ金があるんだろ。出し惜しみすんなよ」
「あんたがそんなだから、俺らの仲間も大勢出ていったんだぜ。反省してんのか」
ハルが、ばあん、と机を平手で叩いた。
そして、扉側の壁にかかっている、たくさんの写真を指差す。
「あんたら、アキちゃんの写真の前で、そんなひでえ台詞、いつまで言うんだよ」
◆ ◆ ◆
バネッサは、この手のどろどろが嫌いだ。
こんな喧嘩を、これ以上観察する必要があるのだろうか。
ああ、嫌だ。
ちょっと、別のことを考えよう。
ぱん。
クロエが、黒手袋の両手を打ち鳴らした。
「ハル社長も、皆さんも、落ち着いてください」
「な、誰だあんた」
「ハル社長の友人の、しがない商人ですよ」
クロエはハルの肩に手を置き、静かに座らせた。
老採取師たちはまだ騒いでいる。
「部外者には関係ねえだろ。黙っててくれねえか」
「これが落ち着いていられるか、ってんだ」
ホリイが額に手を当て、大きく息を吐いているのが見えた。
クロエさん、収拾をつけられるのかなあ。
◆ ◆ ◆
「ああもう、いい加減にしろよ。このくそじじい共がよ」
鋭い女性の声が、部屋中に響いた。
「あのさあ。あたしら、別の商館から、あんたらがピンチだっていうから派遣されてんだよ」
窓際に立っていた、長身で凄みのある女性が前に出る。
袖なしの赤いシャツ。
深緑のツナギは上半身を脱ぎ、腰で袖を結んでいる。
腕の筋肉の付き方と足の運びから、格闘術の心得があると分かる。
「調査業務。ああ、やるぜ。お仕事だもんな。喜んでやらせてもらうよ」
彼女は、一番騒いでいた老採取師に歩み寄った。
「ただなあ、打ち合わせはノーギャラなんだよ」
女採取師は、静かに周囲を見回す。
「これ以上わめいて時間を食うなら……今この部屋で立って聞いてる連中に、あんたがギャラを払ってくれるのかい?」
室内が、しんとなった。
ああ、嫌だなあ。
こういうの。
そうだ。
今日の夕ご飯、どうしよう。
あそこの居酒屋のアジフライ定食にしようかな。
「ぐぐうー」
腹の虫の音が、部屋中に響き渡った。




