第20話 「定例会議・1」
ニックの店から、一旦アパートに戻り、シャワーを浴びた。
定例会議。
どのくらいの人数が集まるのか分からないが、パトラから男性が多いと聞いている。
ワンピースでは、少し目立つかもしれない。
採取師らしく、軽めの山登りをする時のような格好にした。
髪はタオルで拭いたが、完全には乾かない。
ドライヤーを持ってくればよかった。
まあ、歩いているうちに自然に乾くだろう。
小さな鏡で、あちこちをチェックする。
問題ない。
ちゃんと美少女だ。
隣のパトラの部屋をノックしてみたが、返事はなかった。
今日は終日、出かけているようだ。
時間には、まだ余裕がある。
汗をかかない程度に、のんびり歩くことにした。
商館の前まで来ると、路上駐車の車が何台も見えた。
駐車場から溢れたのだろう。
その駐車場に、クロエの車があった。
クロエも定例会議に出席するのだろうか。
開始予定の十分前に、社長室兼会議室へ到着した。
だが、室内にはすでに人が充満している。
窓側の隅に、テツとパトラが立っていた。
テツは深緑のTシャツに、いつものごついズボン。
パトラは薄桃色のシャツに、黒の七分丈のパンツ、サンダル姿だった。
ワンピースのままでも良かったかもしれない。
パトラがバネッサに気づき、小さく手を振ってくれる。
バネッサは人混みをすり抜け、パトラの横に立った。
椅子は、社長机を背にして、地図に向かう形で並んでいる。
二十脚ほどある折り畳み椅子は、すべて埋まっていた。
後ろからなので顔はよく見えない。
だが、座っているのは老齢の採取師が多いようだった。
窓際と壁際には、座れなかった者たちが立っている。
隙間に胡坐をかいて座っている者もいた。
狭い部屋に、今のところ四十五人ほど。
女性は、バネッサとパトラの他に、窓際に一人。
向かいの壁際に、二人。
それ以外は、男性だった。
時刻になった。
ハル社長とホリイが入り、その後ろからクロエが続いた。
クロエの姿を見た窓際の採取師たちが、わずかに緊張した反応を見せる。
だが、クロエはさりげなく片手を上げ、それを制した。
窓際側は、クロエ商会の手勢ということか。
ハル社長が社長席に座る。
クロエは、その横に立った。
ホリイが地図の前に立ち、挨拶する。
「えー、皆さん。いつもお疲れ様です。応援の方々もありがとうございます。定例会議を始めます」
◆ ◆ ◆
会議は、現状報告から始まった。
ホリイに指示され、若手の採取師が前に出る。
資料を片手に、釣竿で地図を指しながら説明を始めた。
北の方から順に、被害がなかった採掘場の報告をしていく。
主要な鉱山には、被害がないようだ。
バネッサは、会議を聞きながら室内を観察する。
窓の向かい側の壁際にいる採取師たちは、服装の雰囲気からして、複数の商人から派遣されてきたグループが混じっているように見える。
中央の椅子に座っているのは、二十四名。
雰囲気的に、この商会所属の採取師たちだろう。
前列と二列目には、老人が多い。
三列目は年齢層がばらばらで、一応、若手もいるようだった。
「おい。そこ、違っているぞ、若造」
室内が、しんとなった。
「今指した鉱山じゃねえ。俺たちが行ってきたのは、その右の緑のピンだ」
座っていた老採取師の一人が、強い口調で指摘した。
「あ、れ。あ、すみません。失礼しました」
地図の前に立つ若い採取師が、ぺこぺこと頭を下げる。
「ちゃんと指導してんのか、ホリイ頭目」
指摘した採取師とは別の老採取師が、少し笑みを含んだ声で言った。
バネッサは、ホリイを見る。
ホリイは無表情のまま、彼らに一礼した。




