第13話
食後、三人は焚火を囲みながら、今日確認した掘削跡について所見を共有した。
大雑把な掘削。
丁寧な足跡消し。
断定はできない。
だが、やはり複数犯である可能性が高いと思う。
その点を頭に入れた上で、明日はパトラにも掘削跡の調査を手伝ってほしい、とバネッサは伝えた。
残りの掘削場は四か所。
バネッサが三か所を受け持ち、パトラが一か所を見る。
テツには引き続き、周辺警戒をお願いした。
また、警戒移動中に異臭がしたら、それが何か確認してほしいとも伝える。
「何の匂いだ」
テツに聞かれたが、バネッサにはうまく説明できなかった。
「森に普通にはない匂い、としか」
そう答えるしかなかった。
◆ ◆ ◆
翌朝。
三人は、それぞれウォーミングアップを始めた。
バネッサは手ごろな木の枝を拾い、日課にしている槍の練習をする。
「アネッサ、す、すごいね」
パトラが、バネッサの身のこなしを褒めてくれた。
さすがに、何十年も槍を振っているからです、とは言えない。
「どうして、槍を持ってないの?」
そう聞かれ、バネッサは少し困った。
「まだ、実戦では使えないのです」
そう言って、誤魔化した。
槍のことは、ギルさんから絶対に秘密にするよう厳しく言われている。
最後の切り札であり、バネッサの最大の弱点にもなる。
使う必要が出てくるような局面になる前に、その場から全力で逃げろ。
ギルさんには、そう言われていた。
バネッサ自身も、それを心がけている。
最後に使ったのは、五年以上前だ。
焚火の跡を始末し、三人は昨夜決めたそれぞれの作業へ向かった。
何か、新たに見つかるといいのだが。
しかし、バネッサが調査した三か所の掘削跡には、昨日以上の情報は残されていなかった。
パトラも同様だったようだ。
初回の調査としては、こんなものかもしれない。
最初から有益な情報が得られると期待する方が、間違っているのだろう。
それでも、最新の現場で得られた成果としては、少ない。
少なすぎる。
バネッサは、少し気落ちしながら下山した。
集合ポイントでは、ホリイが待ってくれていた。
次は、今回の盗掘現場より前に被害があった場所を調査したい。
バネッサがそう相談すると、ホリイは了承してくれた。
メンバーは、今回と同じという話になった。
新しい人と組まなくて済むのは、ありがたい。
商館に戻ると、バネッサは今回の調査報告書をまとめて提出した。
それで、本日は解散となった。
パトラと一緒に、宿舎であるアパートへ向かう。
道すがら、お菓子の話をした。
けれど、結局、二人はアパートの廊下で別れた。
バネッサは部屋に戻り、シャワーを浴びながら考える。
仕事の空振りなど、それこそ成功体験の何倍も経験している。
何も見つからない日。
読みが外れる日。
体力だけを使って終わる日。
そんな日は、いくらでもあった。
それでも今回は、想定よりはるかに成果が低かった。
自分を、過信していたのだろうか。




