↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
83/135

明治8年(1875年)11月 神奈川県横浜 ダスティ商会 伊達忠七

その後佐藤百太郎殿が福沢諭吉様との面会を経て、森村豊殿と鈴木東一郎殿を推薦された。鈴木殿は丸善の関係者らしく、慶応義塾の卒業生とのことだ。さらに、ニューヨークで茶の販売も担っていた百太郎殿の伝手で、狭山の増田林蔵殿も加わり自分も含めて5名の実習生が海を渡ることとなった。


以前に会った森村豊殿・新井領一郎殿以外の二人も気になっていた。どのような人物なのか、会って確かめようとまずは鈴木東一郎殿に連絡を取った。

「はじめまして、私今回共にアメリカに渡ることになっている伊達忠七と申します」

警戒心を抱かせぬよう、最初に交わす挨拶には一番気を遣う。こういう時は、自然と相手との距離を縮められる正様の所作を真似てみる。

「こちらこそ、はじめまして丸善の鈴木東一郎と申します。以後、よろしくお願いします」

うん、上手くいったようだ。警戒感は感じられない、むしろ歓迎してくれている感すらある。

「鈴木殿は慶応義塾の卒業生と聞き及んでおりますが、此度は福沢先生の推薦でのご参加なので?」

そう聞くと、鈴木殿は緩やかに首を振り。

「いえ、卒業生なのは事実ですが福沢先生にご推薦戴いてはおりません。此度は自ら志願して、佐藤百太郎様の応募に参じました」

その声音には、並々ならぬ決意が感じられた。

「我が丸善の創業者の早矢仕は、福沢先生とは昵懇の間柄。幾ら卒業生と言えど、その伝手を頼っては甘えとの誹りは免れませぬ」

さすがにそこまで気に掛ける者はあるまい、とは思うものの言わんとすることは理解出来る。

「私はアメリカで、最先端の商業技術を身に着け。丸善に貢献出来るよう、成長したいと思って此度の渡米を思いたったのです」

やや気負い過ぎな感はあるものの、実直で責任感に富んだ人物に思えた。


逆に、今一人の人物。増田林蔵殿には、違った驚きを与えられた。

「某、今の製茶業界には未来を期待できません。旧態依然たる持ち回りでは、この競争社会では生き残ってはいけません」

自分より幾分か若いはずだが、相当に今の業界に危機感を持っているようだ。

「今は珍しさで茶も売れています。しかし、それだけでは長くは続きません」

尚も続けて、危機感を口にする。

「品質、価格、販路。そのどれか一つでも負ければ、日本茶はたちまち見向きもされなくなるでしょう」

確かに今のような、大名商売では先行きは明るいものとはなり得ないだろう。

「正様も常々、人は一人では商いは出来ぬと申しております。何か力になれることがあれば、遠慮なく仰ってください」

そう言って、増田殿を宥めた。実に個性豊かな面々だ。どのような旅になるのか、今から楽しみでもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。