表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
63/67

明治4年(1871年)8月 大阪府 西長堀九十九商会 伊達正

又四郎は商いの勘が良く、仕入れや値付けを一度教えるだけで覚えてしまった。忠七ですら舌を巻くほどであった。それでも、語学についてはまだまだ忠七、に一日の長が見て取れた。


8月の頭に、通貨の統一をするという情報を新政府の官僚から仕入れた。これをそのまま、自分の儲けを増やすために利用しても良かった。だが、ふと神戸で会った男の顔が頭をよぎった。九十九商会の岩崎弥太郎、坂本さんとの浅からぬ縁を持つ男。彼に又四郎との顔を繋いで、また違った商売を経験させたいと思った。最初、忠七は。

「なぜ某ではないのですか」

と憤っていたのだが、自分の。

「そなたは利左衛門殿より預かった、アメリカでの商いをさせるための人材だ。国内で起業させる者では無いので、此度は又四郎を連れて行くことにしたのだ」

と説明すると、まだ納得はいっていなようだったが自分の意に従ってくれた。


船で横浜を発って、神戸へ。そこから大阪は瓦町に入った、今はもう適塾は無いが懐かしき地だ。ここから南に歩いて船場へ向かっている途中で、坂本さんに初めて会ったのだ。同じように歩を進め、船場から西に行けば西長堀だ。旧土佐藩邸に、九十九商会はあった。先に連絡はしてあったが、岩崎殿は快くこちらを迎えてくれた。

「ようお越しくだされた正殿、して今日はどのような趣で参られたのかな」

豪放磊落、この言い回しがぴったりな様であった。

「此度は良き報せを持って参りました。そして、貴方との繋ぎを取るため弟子を連れて参りました」

そう言って、又四郎を紹介した。

「ほう、まだ若いが正殿の薫陶を受けているからには、非凡なものがあるのでしょうな。して、良き報せとは?」

腹の探り合いなど一切挟まず、聞いてきた。

「私の手に入れた情報では、新政府は通貨の統一を8月末にも行うとのこと。それを前に、藩札及び太政官札を出来るだけ掻き集めれば、大きな資金となりましょう」

その情報を聞いて、岩崎殿の眉がぴくりと動くのが分かった。

「しかしながら、我が商会には余剰の資金が枯渇しており、身動きが取れませぬ」

残念そうな素振りで、こちらを窺っている。

「今後の縁を結ぶために金子にして5万両を目処に投資しましょう」

豪快な笑いと共に、右手を差し出してきた。

「いやはや、正殿には敵いませぬな」

はて、手玉に取られているのはこちらなのだが。

「参りましたな、話を持って来たつもりが金を出す事になってしまいましたな」

困惑気味に、握手に応じた。

「流石は正殿、話が早い。此度の儲けは折半でかまわぬ、今後ともよしなに願います」

気付けば、こちらが資金を出し、岩崎殿は人脈と商機を手にしている。損をした気はしないのだが、どうにも一本取られたような気分だ。この人は坂本さんとはまた違った、人たらしなのであろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ