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明治2年(1869年)12月 アメリカニューヨーク 佐藤百太郎商会 伊達正

その後、シカゴへも足を伸ばし投資に足る相手を探したが、見つけることは叶わなかった。ニューヨークへと戻った時には、年の瀬も押し迫っていた。その足で百太郎殿を訪ねた。「今、ニューヨークへと戻って来たよ」百太郎殿は、右手を差し出し歓迎の意で迎えてくれた。「どうでした、五大湖周辺地域は?」そう言って、椅子に掛けるよう促してくれた。「中々に見所がある会社があって、投資をしてきたよ。ただ、今直ぐ芽吹く訳では無いので、来年には一度日本に戻ろうと思っている」と告げると、百太郎殿は複雑な表情で言った。「そうですか、私も一度日本に戻ろうかと思っているのですが…一定の成果も上げずして戻ることには、ためらいがあります」そう話す顔には、寂しさが浮かんでいた。「とりあえず後1年、ここで経験を積んではどうかな?成果は出ずともそれは貴重な体験にはなるはずだ」そう言って、励ますと。「そうですね、後1年いやもう1年頑張って見ようと思います」その言葉を聞いて、彼に託そうと決めた。「佐藤百太郎商会の事業もあるだろうが、ダスティ商会のニューヨークでの事業を請け負わないか?」やや困惑の表情が見て取れるが、意を決したように。「分かりました、私でお役に立てるのであればお引き受けいたしましょう」そこには、これまで思い悩んでいた姿は無かった。「今回、投資した先にパークデイビス社という薬種商がいる。彼らが資金繰りの相談を持ってきたら、状況に応じて乗ってやって欲しい。これは、今後の君のためにもなる話だ」そう言って、今後のダスティ商会の方針などを話し合った。


そんなやり取りをしている間に、年が明けるのが一刻ほどに迫って来た。「日本より持ち込んだ蕎麦があるのです、一緒に手繰って行きませんか?」もちろん快諾し、久方ぶりの日本食にありつくことにした。年が明ければ、ニューヨークではニューイヤーパーティーなどが催される。そこへ顔を出し、情報を収集し顔を繋ぐ。忙しくはなるが、大事な仕事でもある。忙しくなる前に、燗にした日本酒をかちりと合わせ来る年に期待を込めた。窓の外では、年越しを待ちきれぬ人々の歓声が聞こえる。異国の空の下ではあったが、その夜だけは故郷の正月を思い出していた。今年は帰ろう。息子の顔を見に。

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