表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/60

明治元年(1868年)11月 相模国横浜 関内アメリカ商館 伊達忠七

正様の元で学び始めて、早三月が経とうとしている。楓様も身籠られ、母としての自覚なのか愛されている女の余裕なのか、これまで以上に色香を漂わせている。正様の嫁御でなければ、ちょっかいをかけてしまいそうなほどだ。


利左衛門様が一目置かれるだけあって、正様の才は多岐に渡っていた。言語だけでも、すでに五つを解され。相場の解析や、海外の商人との情報交換など。どれ一つとして自分が、及ぶべくもない…と思わされてしまう。


今日はアメリカ商人の、ウォルシュホール商会を訪ねていた。横浜の商会を仕切るジョン・グリア・ウォルシュ殿を、待っている者の一人に正様が声を

かけられた。「いつもアメリカ商人の商館でお会いしますな、私伊達商会の伊達正と申します」と、正様が挨拶をされると。「これはご丁寧に、私森村商会を束ねる森村市左衛門と申します」と、挨拶された男は答えた。「アメリカに渡って商売をお考えですかな?失礼でなければ、現地を知る者を紹介することも出来ますが」そう申し出られた、市左衛門殿は。「いえ、滅相もない。我々にはまだアメリカに渡って商売を出来るほど資金がございませぬ故」謙遜なのか、判別がつきかねる笑顔で返された。「もし、資金にお困りでしたら5万ドル程度なら、出資することは可能ですが」市左衛門殿は顔色を変えることなく。「アメリカに渡る機会がありましたなら、その時は遠慮なく頼らせていただきます」そう笑顔で答えると、順番がきたのか執務室の中へ消えていった。


一連のやり取りに、私が驚き入って正様に尋ねた。「あの様に安々と資金提供の話などして、大丈夫なのでしょうか」驚いている私を尻目に、正様は淡々と。「単なる社交辞令だよ、あちらも本気にはしておらんよ。それよりも、5万ドルと言われても平然としておったろう。中々に胆力の備わった男だ」確かに、顔色一つ変えていなかった。5万ドルと言えば、下手な藩の一年分の出費にも迫る額ではないか。おいそれとは出せない金額なのだ。「正様は今、如何ほどの資金を運用出来るのですか?」急に険しい顔で、正様が答えられた。「いいかい忠七、商人にそれを聞いてはいけない。それはその者の体力であり、商会の命運を握るものなのだ。どれだけ信用の置ける相手であろうと、自分の腹を見せてはならない」その通りだ、詮無い事を聞いた。やはり、この方の元で学べる事は多い。しっかりとせねば、そう思い直して正様の後に続いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ