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慶応4年(1868年)4月 上野国三ノ倉 水沼河原 小栗忠順

反抗の意思がない旨、高崎藩に遣いに出した養子の又一が捕縛されたという。どうやら後ろ暗い連中の、陰謀に巻き込まれてしまったようだ。事ここに至っては、観念するより他ないだろう。だが、母の国子と妻の道子だけは落ち延びさせねばならぬ。道子の腹には我が子が宿っている、なんとしても生き延びて貰いたい。信用の置ける臣下達に、母と妻を託し三ノ倉屯所へと赴く。


屯所に着いてすぐ、何の説明も無く捕縛された。奥へと引き立てられると、そこにはどう見ても高崎藩の者では無い、珍妙な毛の被り物を被った男がいた。「その方、幕府御用金を持ち出し反抗を企てているとの密告があった。相違ないか」成る程、こんな珍妙な被り物をするだけはある。「はて?御用金など、お役を罷免された某には動かしようもないのですが」どうやらこの代官も、詳細は知らされておらぬらしい。「何処ぞの狸に化かされて、踊らされておられるようですな」と、皮肉の追い打ちを掛けてやった。「無礼者!この謀反人を打ち首に致せ!!」激昂して喚く代官は、もはや自分を制御すら出来ていなかった。


翌日、水沼河原へと引き立てられた。やはり、正を上州に連れて来なくてよかった。あれはいざともなれば、ここに居る全ての者を消し去る事が出来る力を備えし男。無駄に散らせてはならぬ者だ。「言い残す事は無いか?」首打ち役人が、声をかける。必ずや、わしの想いを継いでくれる。子には会えなかった。だが、最良の同士を得ることは出来た。――正。

そこで思考は途絶えた。

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