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明治19年(1886年)5月 アメリカニューヨーク ダスティ商会 伊達正

3月にサンフランシスコに到着した我々を待ち受けていたのは、強烈な中国人排斥の感情だった。2月にはシアトルで反中暴動があり、多くの中国人が帰国のための船を待つ姿が見受けられた。さらに同じ東洋人であるある我々にも、『お前も中国人か?』と執拗に聞かれ日本人だと答えても中々信じて貰えない。という事がニューヨークに到着する迄に、幾度となくあった。


だが、この出来事はまだまだ序の口だった。つい先日、シカゴで8時間労働を求めて労働者の大規模なストライキが発生した。これが拡大し、ヘイマーケット広場で警察官達に爆弾が投げ込まれ、双方に多くの死傷者が出た。この一報に、自分は。株を所有しているStandardOilNYとVacuumOilにアイザックとオットーをそれぞれ派遣し、労働者達に不満が無いかの確認と調整を命じた。パトリックには、ニューヨーク港へ行かせ港湾労働者達とマネージャーとの調整に向かわせた。着いて早々、大きな暴動に対応するため、多くの時間を費やすことになった。


ただ、この騒動はニューヨークにまで波及することはなく、シカゴでの労働運動は、世間に無政府的な暴力革命の印象を強く残すことになった。人心地つくことが出来た我々は、今後の方針を話し合う場を持った。まず、アイザックが口火を切った。

「ボス、今我々は鉄道会社や工場を中心に潤滑油を卸すことに注力しています。ですが、これでは問屋と何らかわりません」

「そうだろうな、まず我々が何者であるか考えろ。それが分かれば、自ずと答えが出るはずだ」

するとオットーがすかさず答えた。

「我々は投資家です。より利益を上げる会社に、投資するのが本分です」

「そうだ。なら、我々がやることは潤滑油を売ることじゃない。売れるようにアシストすることは大事だが、そこを履き違えてはいけない。我々の持つ株の会社に、どの会社を繋げてやれば利益が上がるか?そこが一番大事なところだ」

この言葉にパトリックが膝を叩いて。

「俺が港から持ってくる情報も、何処がよりOILによって伸びるか?何処が潤滑油によってさらに利益を上げられるかを中心にすればいいって事ですね」

「その通りだ。そうやって利益を繋げていき、より利益を産む会社に投資していくことが我々投資家に求められていることだ」

一つ一つ成功体験を積み上げて、成長に繋げていく。それこそが、自分を慕って付いて来てくれた者達に望んでいるものなのだから。

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