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明治16年(1883年)2月 アメリカニューヨーク ダスティ商会 アイザック・レヴィ

2月のニューヨークは、まだまだ冬の中だ。先日など、7インチ(18cm)もの雪に降られて冬に逆戻りだ。1週間前には、53.6°F(12°C)まで上がったのが嘘のようだ。そんな冬のニューヨークダスティ商会に、ボスからの電信が届いた。『今季の配当を受け次第、StandardOilTrust5%からStandardOil New York10%とVacuum Oil25%への転換交渉をされたし』というものだった。


これを見たパトリックとオットーは、Trustは十分に配当を出しているのに何故だ?と言い合った。自分も疑問におもったが、StandardOil New YorkとVacuum Oilという2社が気になった。

「確かにこれはどう見ても、こちら側が不利益を被る交渉になる。こちらの持つTrustの株式規模は350万ドル、方や2社合わせても51万ドルにも満たないからな」

「だろう、アイザックも可怪しいと思うだろ?」

パトリックは納得がいかない様子で、腕組みをして考え込んでいる。

「だが、ボスがそんなこと知らないはずは無い。これには何か、ボスなりの考えがあるはずだ」

オットーが言うことは、皆が分かっていた。だが、それが何なのかが分かりかねていた。その時、追加の電信が横浜より齎された。『New Yorkは欧州への玄関口、Vacuumには潤滑油と特許がある…後はアイザックに任せる』New Yorkは欧州への玄関口。Vacuumは潤滑油と特許がある。その2つの言葉を何度も頭の中で反芻した。会社の規模ではない。投資先の将来性でもない。そうか!

「分かったぞ!これは会社への投資じゃない、言わば俺達三人への投資なんだ!俺達はただここに座って、StandardOilTrustからの配当金を待つだけの存在か?違うだろ。この2社を使って、俺達に経験を積め!そう言っているんじゃないのか?」

それまで暗く張り詰めていた空気が、一気に弾けたように思えた。

「そうだな、その通りだ!俺達は金を数えるだけの番人じゃない。New Yorkは欧州だけじゃないぜ、シカゴへもワシントンへも供給出来る。Vacuumだって鉄道にも工場にも必要な会社だ」

パトリックが鼻息荒く、まくし立てると。

「これまではボスが敷いてくれたレールを走っていたが、これからは俺達でレールを造って行くんだ」

と、オットーが答えた。そうだ、俺達はそれに見合うだけの答えを出して行かなければならないんだ。

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