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桜花祭当日になってしまった。
俺たち転生者の主人公パーティーは、今日やっと釈放された。
「犀果君に感謝する事だな。本来であれば、あのような事を叫んだ時点で、一族郎党徹底的に殺し尽くされても文句は言えないんだからな?平民ならともかく、お前たちは貴族なんだ。権力はあるが、それは同時に『平民には出来ない事でも出来てしまう』という事でもある。冗談で済まない範囲は、平民の比ではない。今後は真っ当に、真面目に勉学に励め」
「は!桜花祭の当日に開放するなんて卑怯なマネをしてくる相手に感謝だって?冗談じゃない。俺達は、今日ここで魔王を倒す!この世界をあるべき姿にするんだ!」
「……そうか。まあ、犀果君からは、『多分そう言う事言ってくるだろうとは思いますが、それでもそのまま送り出して下さい』と言われているが……。正直、こちらとしてはお前たちをこのまま警察に連れて行った方が世の為人の為なんじゃないかと思っているぞ」
警備員のオッサンが偉そうに色々言ってくるけど、アンタらだってあの犀果大試に疑問とか感じないのか?
滅茶苦茶なことして、美人の女をどんどん囲ってハーレム作ってるクソ野郎だぞ?
最近だと、更に美人を周りに侍らせてるらしいしさ。
今の生徒会長だって、原作であんなキャラじゃなかっただろうに、まるで犬か何かみたいに犀果大試に尻尾振ってるし……。
あーくそ!俺だってあんな美人を何人も嫁にしてぇ!
……そういや、海鈴は結局来なかったな……。
アイツ、やっぱり犀果大試に……。
アイツは俺のヒロインなのに!
他人の婚約者に手を出して平気なんて、頭おかしいんじゃないか!?
頭の中が、眠気と変な天使の筋肉と怒りでぐちゃぐちゃになりながらも、俺たちは参加者用の待機所まで辿り着いた。
チーム登録は、俺たちがあの牢の中にいる間に教師がやってきて申請書を渡してきたから、それに一緒に捕まってた奴等全員と、海鈴の名前を書いて出してあった。
それが受理されたという連絡と集合場所は、その翌日に再度やってきた教師にプリントで渡されていたから、迷う事も無かった。
ただ、桜花祭が開始されるまで、参加者全員がここに集合させられるというのは少し嫌だな……。
周りの生徒たちが俺達に向ける目が、明らかに碌なもんじゃない。
恐怖や嫌悪、蔑んでいるような物ばかりだ。
今に見てろよお前ら!俺がこの世界の主人公で、世界の平和を取り戻すところを見てから態度を変えてももう遅いからな!
「あ、キミら来たんだ?偉い偉い。絶対サボると思ってたよボク!はい、試技バッチ!コレ身につけておかないと、参加どころか桜花祭開催エリアに侵入する事もできないから気をつけてね!」
2年の生徒会に入った原作のネームド男子がふざけた事を言ってくるが、舌打ちするに留めて大人しくしておく。
ゲームの方のキャラとは大分違うようだけど、イケメンで何でも持っている奴が偉そうにしているのが気に入らない!
とはいえ、相手は高位の貴族だし、今の俺は、覚醒イベントや強化イベントをまだ経ていないから、何か言った所で説得力も無いしな。
だけど、後で吠え面をかくのはお前だぞ!
主人公を舐めるな!
武装は、一応手に入った。
部屋に戻る事すらできなかったが、受付で基本装備のようなショボいものであれば借りる事が出来たからだ。
ハッキリ言って、ゲームだったらまず使わないカッコ悪い物ばかりだけど、贅沢も言えない。
まあ、ゴミ装備を技術でカバーするのも主人公らしいといえばらしいし、我慢するさ。
俺達が武器を持って包囲して本気で攻撃すれば、いくらあの犀果大試が強いとしても、勝てるだろうしな。
それに、最悪の場合でも、筋肉天使がアイツをどこかへ連れ去ってくれる筈だし……。
……そう言えば、俺達と言ってはいるけれども、1人メンバーが足りないままだった。
海鈴。
この世界の俺の婚約者。
流石に桜花祭本番には来るだろうと思っていたのに、まだやってきていない。
俺は、アイツとどう向き合えばいいんだろうか?
他の男に一度寝取られたヒロインを広い心で受け入れるべきなのか、それとも新しいもっと美人のヒロインをメインにするべきか……。
『あ、皆来てたんだ?お待たせ。少しは反省した?あのさ、あの時も言ったけど、改めて言うね?犀果先輩に手出してもいいこと無いから、本当に止めといた方がいいよ?あの人化け物だから……』
そんな中、数日ぶりに聞く彼女の声が聞こえた。
今一番会いたくて、だけど会いたくない女の子の声が。
でも、スピーカーから出ているような声だな?
「海鈴か!?」
『あ、佐藤君、私たちもう婚約者でもなんでもないから、二度と下の名前で呼ばないで。って、私も『佐藤君』って呼ぶの止めといた方がいいよね?今度からは雷堂さん、とかの方が良いのかな?』
「……は?」
今、何て言ったんだ?
婚約者じゃ、無い……だって?
「ど、どういうこと……婚約……」
『ん?あれ?聞いてなかった?雷堂さんのご両親と私の両親が話し合って、雷堂さん有責で婚約解消されたよ?流石にアレは無い、って即決まったらしいね』
「へぁ……?」
なんだ?なにがおきている?
……ああそうか!やっぱり犀果大試を殺さないといけないんだ!アイツがいると、世界も俺も滅茶苦茶にされる!今!今日やらないと!
「海鈴ちゃん、その格好どうしたの……?」
『これ?いいでしょ!犀果先輩からもらったの!1分間に1000発の魔道弾を連射できる魔道マシンガンと、歩兵用バトルスーツ!だって今日この後、リアルFPSできるんだよ?このくらいの武装は欲しいでしょ!』
「リアルFPS……ってなに……?」
『天使を狩り尽くすんだって』
「天使!?まさか、バレて……」
「そんな……」
「いや、でも天使だぞ?人間が勝てる訳ないじゃないか……」
他のメンバーが海鈴と何かを話しているようだったけれど、その時の俺には全く耳に届いていなかった。
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