830:
神の世界から戻ってきた俺は、すぐにボボンを拉致して食堂へと戻って来ていた。
「に……にひひひ!?なに!?なんであちしは、大試くんに誘拐されちゃってるの!?も、もしかしてとうとうムラムラが抑えられなくなって、あちしのヴァージンと大試君のチェリーを等価交換で……」
「そういうんじゃない。お前に協力してもらいたいことがある」
「あ、そうなんだ……。でも、いいよぉそれでも。なになに?」
「ちょっとさ、外の世界から来た天使ぶっ殺そうかなって思ってて」
「あーはいはい……え?」
「リスティ様から許可は取り付けたから」
「あはは!…………ギャグだよねぇ?」
「これ見ろよ。この筋肉だるま。俺を思いっきりロックオンして、しかも当たり屋的に攻撃受けたことにして、正当防衛とか言いながら誘拐するつもりらしいんだよ。しかも、下手したら大勢攫って行くつもりかもしれん。だから、誘拐しに来る天使全員を滅殺する」
「うわぁ……。あちしが完全な状態だったら、別に天使の1億や2億殺したところで何もないけどさぁ……。今のあちしは、ただの可愛い可愛い小さな女の子なんだよぉ……?」
「大丈夫だ。神も参加してれば相手がビビったり責任追及に及び腰になったりするんじゃないかなって期待しているだけで、全部をボボンのせいにするつもりなんて無いし、そもそも世界外からの天使は、今回で殲滅する予定だから。そいつらの主が文句言ってきたとしても、リスティ様が『ばーか!』って言って終わりにしてくれるらしいし」
「あの娘、ストレス溜まってそうだったもんねぇ……。まああちしは、大試くんに指示されたら言う事聞かないといけなくなっちゃってるしぃ、そうじゃなくてもちゃんと指示に従うよぉ」
「助かる。何があっても、俺が絶対守るから」
「んっ…………うん…………!」
満面の笑顔になるボボンを食堂の席に座らせ、隣の席に俺も腰かける。
コックっぽい服装の量産型アイが、俺たちの前にエナドリを置いていってくれたので、それをちびちび飲みながら待っていると、10分もしないうちにAIメイドたち3人も戻って来た。
3人が俺たちと同じテーブルの席に座ると同時に、また食堂の照明が落とされ、俺たちのテーブル付近だけが明るいという最近彼女たちが気に入ってるのかお決まりの会議風景になった。
「天使滅殺兵器の設計データをご用意しました。パワードスーツで携行が可能です」
「わかった。俺がまる義兄さんに頼んでおくわ」
「お兄ちゃん、何故ボボンちゃんがいるの?」
「あの天使がこの世界の外からやってきた奴らで、更にその上に神がいるらしいから、この世界の外からやって来た天使を殲滅する時の保険として連れてきた。複座の方に乗せようと思ってる」
「え?あの天使みたいなおじさん殺すの?いちご、そんなことして大丈夫なのか不安だよぉ……」
「心配ない。説明は省くけど、リスティ様がGOサイン出してくれた」
「「「了解、根絶やしにします」」」
「あ、一応言っておくと、セラフィはこの世界出身の天使だし、ゼルエルは天使を引退しているから、本人たちに敵対意思が無い内は何もするつもりないから、その辺りは注意な」
「「「了解、一部を除いて根絶やしにします」」」
「あはは、AIちゃんズこっわぁ…………」
ボボンがドン引きしているけれども、スルーして会議を続けた。
具体的に、どういう風にして天使を殲滅するのかを。
あくまで予想だけれども、今回の桜花祭に目を付けたらしいパピーことウリエルは、これを機にいっぱいの仲間を連れて、一気に誘拐しに来るんじゃないかと思っている。
人間に見えないようにしていたとはいえ、あんな堂々とやってきて下見していたんだから、多分この世界の人間や、管理するリスティ様を舐め腐っている筈だ。
そんな状態で多人数で戦闘するというイベントがあると知れば、そりゃ調子こいて当たり屋稼業に走るだろう。
何せ、セラフィ曰く、超ブラックな会社の社長らしいし、チャンスがあれば休日も休憩時間も無視して仕事をさせられるだろうしさ、当然部下もモリモリ投入してくるだろうさ。
だから、来る天使を滅してやれば、仲間がやられたことに気が付いた天使たちは、更に増援を送ってきそうだし、そいつらを更に倒せば~、ッという感じで連鎖していきそうだろ?
「試作型パワードスーツ、PS-0『ヘルシャフト』。俺がこれを操縦するんだけども、コクピットを複座型にしてもらおうと思ってる。そして、後部の席は銃座にして、ボボンには天使を手あたり次第消し飛ばしてほしい。とりあえず腕を4本に増加してもらうつもりだから、ガトリングガンもミサイルもモリモリ撃てるぜ。一緒に外来種の羽虫どもを叩き落そう!」
「殺意高いねぇ……。でも、面白そうじゃん☆」
段々ノって来たらしいボボンが、ニヤッと笑い始めた。
悪そうな顔だ……。
魔王役のサポートキャラにピッタリだな!
「じゃあ、協力してもらう以上、ボボンって呼び続けるのも悪いし、これからはお前の事をクリスティーナ……クリスって呼ぶわ」
「……えっ……あの、大試くん……」
悪そうな笑顔が、一瞬で惚けた顔になってしまった。
そんなにビックリする事だったか?
「どうした?何かあったか?」
「………………………………って……………………」
「ん?」
「もう一回言ってぇ!」
「え!?何を!?」
「あちしの名前!」
「名前?えーと、クリス……?」
俺が、改めて名前を呼ぶと、途端に目が潤みだし、すぐにマジ泣きを始めたクリス。
なんで泣く……?
えーと、その……とりあえず頭撫でておく。
「…………う、うぅぅぅぅ!!」
「どうした?何か嫌だったか?」
「ちがうよぉ!ボボンっていうのも特別感あってよかったけどぉ、やっぱり好きな人に名前呼んでもらえたら嬉しいもん!」
「…………お、おう、そうか」
流石にそこまで真っ直ぐに言われると照れるけども……。
何も名前程度でそんな…………。
なんて思っていたのは俺くらいだったようで、AIメイド3人も、ウンウンと頷いていた。
「わかります。愛しい方から名前を呼ばれるのは、それだけで処理能力が限界を迎える程の喜びを与えてくれます」
「ピリカもお兄ちゃんに名前呼ばれるだけで、嬉しくて1000年は耐用年数増えそうなくらいなのです!」
「いちご、もう永遠にますたぁに耳元で囁いてもらってたいなぁ……」
そんなに嬉しいのか……?
いや、名前くらいいくらでも呼んでやるけどさ……。
俺が照れながら、今度からはもっと名前呼んでやろうかな、なんて思いながら会議の続きをしていると、食堂の扉が開いて、風呂に行っていた面々が戻って来た。
聖羅たちに隅々まで体を奇麗にされたらしいセラフィがフラフラしながら一緒に居たので、首根っこを掴んで俺たちが囲むテーブルまで連れてきて、無理やり椅子に座らせて話しかけた。
「セラフィ、ウリエルとか言うお前のパピーをぶっ殺すことにしたから」
「……ファ……あぁ……ねっむい……。え?パピー殺すんですか?」
「そうだ。この世界で好き勝手しているらしいから、パピーの部下も纏めて殲滅する。セラフィとしては、同族を俺が殲滅する事に思う所があるかもしれないけど、耐え」
「あ、そう言うの無いです。ぶっ殺しちゃいましょう!お手伝いしますよ!」
「え?」
「シューティングゲームも割と得意なので!昔から天使学校の運動会では、弓の部で毎回優勝でしたしね!まあ私天使じゃないんですけど!相手がパピーなら気持ちよくぶっ放せるってものです!いやぁー!興奮してきたなー!これってもしかして眠すぎてハイになってるのかもしれないですねー!あはははは!……うぇっ……羽出た……」
我が家に住み着いた天使が、サラッと親殺しに参加することが決定した。
感想、評価よろしくお願いします。




