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「犀果様、ここです、ここをよく見てください」
「ん?女子の……目か?」
「はい、一般観衆少女Aと呼称しましょう」
「いや呼び方はどうでもいいけど……それで、目がどうしたんだ?」
「瞳に薄っすらと、この筋肉天使が映っているのが見えますか?」
「……あー、確かに見える見える」
「つまり、カメラの異常でこんな不気味な存在が映り込んだのではなく、確実に光情報としてこの像が得られている事になります。となると、やはり皆さんがこの化け物に気が付かなかったのは、見えなかったのではなく、『見えないと思い込んでいた』という可能性が高いでしょう。恐らく、何らかのスキルの影響かと」
「おお!すごいな!なんか科学捜査っぽい!」
「ふふふ……私は、存在自体が科学の申し子ですから」
「かがくのちからってすげー!」
アイが無表情のままドヤ顔感を出してくるので、とりあえず褒めておく。
そうしたら頭をこちらに差し出してきたので撫でておいた。
愛い奴め。
「ズルいのです!ピリカも!」
「いちごも撫でて!」
「はいはい、順番な」
こいつら、素の状態だとかなり機械的な感じなんだけど、何故かこういう風に褒められる事に関しては、普通の子供並みに貪欲に要求して来るし、喜ぶんだよなぁ。
恐ろしく褒め甲斐がある。
愛い奴らめ。
「にしても、どう対処したもんかなぁ……。原因の予測はできたとしても、結局見えないんじゃ……」
「対策としては、我々が機械の目を用いてその筋肉天使の存在を把握し、犀果様に報告するか、犀果様自身が機械の乗り物の中に入ってしまい、視界をカメラによる映像で確保するようにするか、が現実的な手段かと考えます」
まあ、それしかないか?
自分の目で見れないなら、機械に頼るしかないのは確かに。
あれだな、スカイフィッシュみたいに、機械の誤作動でそう見えるだけで実はハエでしたー、とかなら楽なのになぁ。
その可能性すら潰されているんじゃあなぁ……。
「他にも方法を考えたのです!」
「もし人間の目に見えないのが『状態異常』だとしたら、ますたぁが神剣で自分を治療しながらだったらみえるかも♡」
「あ!ずるいのです!ピリカも一緒に考えたのです!!」
「わかったわかった!」
2人同時に頭を撫でる。
サラッサラだなぁコイツらの髪……。
「状態異常でみえないんだとしたら、なんか嫌だなぁ」
「状態異常をばら撒く存在なんて、不気味ですよね」
「うん……。見えないだけならさぁ、幽霊とかおばけ的な怖さでいいかもしれないけど、見えない上に状態異常をばら撒く筋肉モリモリで背中に翼生えてて頭にわっかが乗ってるオッサンだろ?控えめに言って嫌すぎる……」
ホラーはホラーでも、ジャンルがちょっと変わってくるぞ?
原因がウイルス的な感じに。
「それにしても、見えないならカメラにも映らなければいいのにな。フィルムカメラ全盛期の悪霊じゃあるまいし、デジタルな映像に映っちゃうと、やっぱり不可視の存在としては未完成な感じするよな」
「完全なる不可視の存在ですと、発見もしてもらえないのでホラーにならないでは?」
「まあ、ホラー作品と考えるならそういう弱点も必要かもだけども、だったら筋肉もりもりのオッサンにするなよなぁ……」
「ウイルス系なのです」
「ハーブで怪我が治る系かなぁ?」
ハーブで怪我が治るって、ラリって怪我を感じなくなるのかなって感じちゃうんだよなぁあのゲーム……。
「まあ、現時点ではさっぱりこのマッチョ天使の事が分かっていない訳だけども、映像を分析して何かわかったことは無かったか?たとえば、人間を傷つけるような事をしていたとか、もしくは逆に人間の味方っぽい行動をしていたとかさ」
「それが、ずっと仁王立ちで周りを見ていただけで、犀果様が佐藤を叩きのめしていた時にも、一切助力をするような様子はありませんでした。終始、周りをジロジロみていたようです」
「正体不明な上に、目的も不明ってなると、どんどんこの筋肉の塊が恐ろしい物になっていくな……」
なんでこんな明後日の方向に訳わからん事になるんだ?
俺は今日ここで、宣言チームたちの情報を得るために集まってもらっただけなんだぞ?
ホラーの検証をしに来たんじゃないんだぞ?
なんてウンザリしていたら、食堂の扉を開ける音がしたので振り向くと、そこには一人の少女が立っていた。
ちょっとよれよれな感じで、更に臭いを放ちながら……。
「……あれぇ……?犀果先輩だぁ……どうしたんですかこんなに真っ暗にしてぇ……?」
「セラフィか?なんか具合悪そうだな……。しかもちょっと臭いぞ?」
「あぁ……。ちょっと3日程ゲームしっぱなしだったのでぇ……」
「お前……学園はどうした?」
「心配ありませんよ……。行かなくても行ったことになるように魔術でちょちょいっとしてあるので……」
「お前……」
コイツ、我が家に……というかゲーム部屋に住み着いてやがるな?
あとで風呂に叩きこんでくるか……?
「で、何か用か?」
「あー、はい……。ちょっとエナドリとバランス栄養食的な物を補給しに食堂に来たんですけど……」
「いや、寝ろ。死ぬぞ」
「死にませんよぉ……。だって私天使……じゃなかった、まだまだ若いのでぇ……」
「寝ろ」
「ねませぇん……あれ?」
臭いたつ天使様の目が、俺達が今検証していた映像が映るスクリーンへと向いた。
そして、衝撃の一言が出た。
「パピー?」
「パピー?」
ぱっぴー?
「うちの父です。なんで地上に?天使なのにブラック企業作っちゃうカス親父ですが、自分もそのブラックに身を置くせいで、地上に遊びに来る余裕なんて無いと思うんですが……」
「おい、ちょっと待て。衝撃の事実をボコボコ投げ込んでくるな」
「あ、ごめんなさい。私は天使じゃないのでそのあたりどうかひとつ」
「衝撃なのはお前が天使かどうかじゃないんだこれ」
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