824:
「雷堂運命……あー、面倒だな。佐藤の奴は、そこまで真剣にこの世界を何とかしようとしてたんじゃなくて、目立ってモテたかっただけって感じだと海鈴は予想してるってことで良いか?」
「はい!十中八九そうだと思います!っていうか、そもそもそんな先の事を見据えて頑張れる奴じゃないんですアイツは!前世からもうそんな感じでしたし!」
「ふーん……なんか詳しい気がするけど、仲良かったのか?」
「仲ですか?家が隣だったので。転生してからは、婚約者でしたね」
「マジか!?婚約者アレなのか!?」
「あ、さっき解消されたらしいですよ?パパからさっき連絡来ました。貴族ってこういう時スピーディーですよねー」
「そんな他人事みたいに……」
宣言君改め佐藤は、どうやらそこまで巧妙に策を弄するタイプではないらしい。
直接的な手段に出てくるのであれば、あの程度なら軽く消せるからまだマシかもしれん。
ただなぁ……。
朝のあの態度とか海鈴から聞いた内容からするに、考えが足りないタイプであるようなので、後先考えずこちらへ嫌がらせのような事をして来たら面倒かもしれんな。
婚約がこんなにすっぱり解消された事からも、社交界では、もう既に排除されたようなもんだろうし……。
「因みに佐藤たちは、強さ的にはどうなんだ?まさかとは思うけど、ネトゲみたいに100レベル超えてるのが当たり前みたいな状態なのか?」
あんだけ弱かったんだし、恐らくそんなことは無いだろうなとは思いつつも確認しておく。
やっぱりレベル差ってのは、この世界での強さに於いてとても重要だからなぁ。
相手が100レベルを超えているかどうかで、対処方法もかなり変わってくる。
「あー、100レベルになんて誰も到達してませんよ?まず、この世界で私たちまだギルド結成してませんしね。ギルドハウジングクエスト受けないと早々100レベルになんてなれませんよ」
「そうなのか。因みに、ここはそのギルドハウジングというか、ギルドハウスみたいな場所でな?ここに宿泊さえすれば、だれでも100レベルになれるぞ?」
「…………………………はい?」
「あと、ハイヒューマンにもなれるぞ」
「……………………はい………………あー、えー…………わかりました!」
なにか一瞬全てを諦めたような表情になった海鈴だったけども、どうやら開き直って理解したつもりになることにしたようである。
実に結構。
そういう前向きさ、この世界で生きる上では大切だって俺も思うもん。
「何故そんな場所にお前をわざわざ連れて来たかというと」
「さきあんとぐちょぐちょの百合を咲かせている所を眺めるためですよね!?大丈夫ですお任せください!」
「違う。それ以上下ネタで俺の発言を遮ったらそろそろキレるぞ?何より俺は、大事な家族にそういうきったねー単語を聞かせたくねぇんだよ!」
「あ、はい。そういう面倒な感じですね……」
ウルサイ。
競泳水着着せるぞカスが。
「海鈴には、お前の言っていた前世でギルメンだったっていう転生者集団のかじ取りをしてもらいたい。納得できない奴に逆上されて攻撃されるかもしれないけれども、そのために今夜、報酬の前払いを兼ねて100レベルを超えてもらう。ハイヒューマンにもする。どうだ?やってもらえるか?」
「良いですよ別に?って言っても、成功するかはわかりませんが」
「まあ、ダメもとで言ってる部分もある。失敗したってそれだけを理由に叱ったりしない」
「ならおっけーです!」
「前世で隣の家で幼馴染だった上に、転生してからは婚約者だった男相手に裏切り行為をするのは辛いかもしれんけど、寧ろあいつらの為だと思ってやってみてくれ」
てか、その佐藤とか言う奴すごいよなぁ。
幼馴染要素と婚約者要素と生まれ変わっても一緒って要素もある女の子の前で「ハーレムつくりてぇ!」とか言ってたのか。
死ねばいいのに。
どの口で言ってんだって言われそうだから指摘しないけども。
「あ、佐藤君の事なら大丈夫ですよ?」
俺がちょっと心配しながらかけた言葉に対して、海鈴は事も無げに答えた。
「そうか?無理なら無理で他の手段もあるけども……」
「いえ、全然大丈夫です。というか、前世も今世も、佐藤君の事なんて微塵も好きでは無いので。寧ろすごい嫌いです。生理的に無理」
「えぇ……?」
あれぇ?
俺の思ってた幼馴染の関係と大分違うんだけど……?
「前世では、昔から家が隣同士だったからってやけに馴れ馴れしく接してくるのがウザかったんですよ!学校でも私と特別仲がいいって言いふらしてたし!んな訳ないでしょと!私が好きな男性は、ゲームが上手くて、ムキムキっていうより引き締まったタイプの筋肉質な男性なのに!あんなひょろひょろでゲームも弱くて誠実さも無い奴を好きになる事なんて絶対にないです!」
「お、おう……そうか……」
「というかですね、寧ろ私は女の子の方が好きなんですよねー。可愛い女の子目当てでスマホのゲームやり始めたくらいですし」
「あぁ……へぇ……」
「そしたら、女の子はどんどん可愛くてエロいデザインになっていくのに、男性キャラはどんどんネタ要素が強くなっていくんですよ!ネットでも皆その話をしながら笑ってましたけども!」
「まあ、そういう話は聞いたことあるかもしれんな」
というか、正に俺もゲハゲハ笑ってた気がする。
ネタ画像につられて掲示板的なとこを見に行っただけで、ゲーム自体はやっていなかったから、ボロ出さないように見るだけのROM専だったけども。
「でもですよ?ネタとして皆が笑ってるその筋肉丸出しの男性キャラが……その……」
さっきまでの早口が治まり、なぜかもじもじしながら話す海鈴。
お前、なんで股をこすり合わせるかのように動き出してんの……?
「性的な意味で、いいな……って思っちゃったんですよね……」
「あー……」
性癖、拗らせちゃったか……。
「そういう意味だと、先輩のフンドシ姿はカッコよかったです!尻のほっぺにできる窪みが特に!」
「あーそう……ありがとう……」
何故か今日は、ケツを褒められる日だな……。
「ただ、ごめんなさい……。それでもやっぱり一番好きなのは、さきあんかニパのどっちかなので、先輩の気持ちには応えられません……」
「俺の気持ち的には、お前と今後関わらないようにした方が良いかを本気で検討し始めている所なんだけども」
「え、酷い」
酷いのはお前だ。
「あーあー!転生してからMMOみたいなのばっかりやってるから、そろそろストレス発散にFPSやりたいなー!そういえば、前世ですごいデタラメなプレイするフレがいたんですけど、あの人みたいなプレイする男性がいたら、本気で好きになっちゃうかもですねー。さきあんとニパの次くらいに」
「FPSもするのか?」
「というか、本当はそっちがメインだったんですよね。ファンタジー系のゲームは、キャラクリと衣装集めくらいしか楽しめてなかったです」
「へぇ」
「あー!また一緒にやりたいなー!『tatataiC』さんまだ元気に戦車相手に生身で突っ込んで行って勝ってたりするのかなー!?一緒に『ファアアアッ○!!!』って叫びたいよおおおお!」
「言ってることが割とヤバ目だなお前……ん?『tatataiC』?」
錯乱するように昔の事を思い出しているらしい海鈴の台詞の中に、何故か俺がよく知る名前が出てきた気がする。
あれ?もしかして……?
「あのさ海鈴、もしかして前世でFPSしてた時のネームって、『maririnrin46』とかだったりしないか?」
「えっ!?なんでわかるんですか!?ヤバい怖いです!」
「いや、えーとな……」
「その『tatataiC』って俺だわ」
「は?」
「戦車相手に突撃して対戦車地雷ごと自爆して倒してた覚えもあるし、殆ど掛け声程度しか喋らないボイチャ同士のフレもいた覚えもある。ただ、ボイチェンで女声にしているだけだと思ってたんだけど、まさか本当に女だったのか……?」
「え?え!?まさか本当にtatataiCさんですか!?もしかしてコレって運命じゃないですか!?」
「いやぁ、それはどうだろうなぁ……?」
リスティ様なら、その位の運命幾らでも用意できそうだから否定もできんな……。
「…………ちょっと」
なんて呑気に話していた俺達だったけれども、突如部屋の中に広がった殺気の様なプレッシャーに顔をひきつらせた。
なにかと思えば、ずっと部屋の中で静かにしていた聖羅が、なんか悍ましいオーラを放っていた。
「海鈴が前世からの知り合いだとしても、大試と一番ラブラブなのは私。大試の初めてを貰うのも私。わかった?」
「は、はいいいい!?わか、わかわ、わかりました!なんで怒られてるのかわかりませんが!」
「わかったならいい。これからも励んで」
「はぁ……?えっと、何を励めば……?」
聖羅はそう言うが、大分治まったけれども、まだ多少オーラが出ている状況なので、気軽に声をかけられない俺。
だけども、それでもできれば聞いてほしい聖羅。
多分、転生前からの知り合いって事で、俺と海鈴が近づくんじゃないかって危惧したんだと思うけれども、流石の俺も、ぐちょぐちょの百合をしたがる女と結婚はキツイと思うぞ……?
そういうのは、エルフの集落で間に合ってます……。
感想、評価よろしくお願いします。




