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まるで、この世界の主人公が自分であるかのように、彼は自信満々に宣言した。
「犀果大試!この桜花祭で、俺達がお前を排除する!そして、このフェアリーファンタジーの世界を正常なものに戻す!全ての歪みを直し、世界のあるべき姿にしてみせる!」
すごい気持ちが良さそうだ。
きっと、こういうのを夢見て来たんだろう。
世界を救う自分を。
彼の宣言に追従するかのように、何人かの1年生らしき生徒もステージに上がって来た。
彼の仲間なんだろうか?
男女合わせて10人くらいいるようだ。
ただ、何といえばいいんだろうか……。
この世界のネームドキャラたちと比べると、全員がちょっと地味な見た目に思える。
こう……ネトゲのキャラクリでプリセットされてる地味目なキャラデザっぽいというか……。
髪色は、全員金色とか白銀とかの派手な奴なんだけど……。
あ、でも、さっき俺のフンドシ姿を要求した子もいるな。
ただ、かなりアワアワ慌てて何とか周りの奴らを止めようとしている感じだ。
その娘だけ髪は、大人しめの茶髪ロングストレートだし、クソデカぐるぐる丸レンズのメガネをかけているので、あんまり顔のデザインが分からんが、休み時間と放課後は、図書室に行けば雰囲気。
まあいっかその辺りは。
本当にどうでもいい。
コイツらが転生者っぽい事とか、俺の事を転生者だと知ってるっぽい事とか、その辺りも含めて今は些事だ。
「桜花祭当日、絶対に逃げるなよ!そんな無様な真似をしたところで、絶対に逃がさないぞ!」
そう言って彼は俺を指さしながら睨みつけてから、ステージを降りようと背中を見せた。
お仲間も、それに合わせて動いている。
他の生徒たちは皆、いったい何が行われたのか理解が追いついていないのか静かだ。
まあ、俺も詳しくわかっている訳でもないから、そりゃそうだろう。
分かっている事は、一つだけだ。
だから俺は、木刀を手に持った。
最初の一歩で隙だらけの宣言君の元まで到達しそのまま奴の左肩から左脚の根本辺りまで叩き斬る。
木刀とは言え、力を込めれば十分人は斬れる。
むしろ刃がそこまで鋭くないので、相手を苦しませるのであれば、神剣の中でも最適クラスとも言える。
でも、まさかここまで簡単に斬れるとは思わなかった。
俺に喧嘩売ってくるくらいだから、もっと何か対策をとっているかと思ってたのに……。
しかも、背中思いっきり見せてくるから誘いかとすら思ったのに……。
「え?」
斬られた宣言君は、まだ何をされたのか分かっていないらしく、間の抜けた声を出していた。
その隙に、次は右脚を狙う。
斬り飛ばすとパーツを探すのが面倒だから、今度はただのローキックで脛の骨を叩き折った。
「ひぃえあああああ!?」
やっと理解と痛みが追いついてきたのか、恐怖の表情と悲鳴を上げだす宣言君だけれど、まだ右腕が残ってるんだよなぁ。
いや、こっちは拷問用に残しておくか。
脚の支えを無くして、ステージ上に倒れ込む宣言君の股間を踏み抜く。
激痛に悲鳴すら上げられずに気絶したので、顔面を蹴って目を覚まさせる。
「あぎゃ!?え!?な、なにして!?」
「あ?人に殺害予告しておいて、何も無しで帰れると思ってたのか?」
「だ、え!?まだ戦闘パートじゃ……」
「訳わかんねーこと言ってんじゃねぇよ!!」
「ひげぇ!?」
股間を追加で踏むと、煮込んだトマトみたいな感触がする。
残った右手で必死に自分の失った部位を確認しつつ激痛に耐えようとしている宣言君の胸倉をつかみ持ち上げた。
「おい、俺は別にさぁ、魔王扱いでもいいんだよ。そういう役どころで今回はやろうとしてた訳だしさ」
「痛い!痛いいいいい!!!?」
「だから、俺に勝利宣言をするとかなら別に良かったんだよ。勇者現る!ってネタにしてやる程度だったろうさ」
「たすったすけっ!!!」
「でもさぁ、俺をこの世界から排除だっけ?ロールプレイで行ってるだけかと思ってたら、わざわざ俺の個人情報だのなんだのを公表して、その上でってなると多分本気で俺を殺すつもりだったって事だよな?」
「だ、だって!お前!まお」
「俺さぁ、割と色々な奴の運命とか命握っちゃってるんだよ。俺が召喚者で、俺が死んだらどうなるかわからん奴とかも多いしさ。俺が出した神剣で命を繋いでる奴だっている。俺が死んだあとにその剣が無くなって、そいつが死ぬ可能性が無いとも言えない訳で、やっぱり死ぬわけにはいかない。でも、お前からしたら、そういう奴らも排除対象って事だよな?世界のあるべき姿って事はさ?」
「だって!ゲームで!」
「ゲームゲームうるせぇなぁ!!」
残しておいた右手の指を1本引きちぎる。
悲鳴が響くけれど、無視してつづけた。
「そのゲームでは死んでたけど、この世界では生き残ってるって奴らも多い。そいつらも排除対象なんだな?」
「ちが……おまえが……」
「俺さぁ、お前の言う歪みに該当しそうな人間沢山知っててさ、大切な人も多いから、こんな大胆にそれらを排除するって宣言されたら、逆にお前を……いや、『俺達が』って言ってたっけ?なぁおい?」
後ろで呆然としているお仲間たちを見る。
なぜ、魔王だとかなんとか言って堂々と排除宣言した奴相手に、自分達が何もされないと思っていたんだろうか?
こちとら去年、桜花祭前に普通に人殺しをしようとしてきた奴らを逆に殲滅してるんだけどなぁ?
前例がある以上、冗談で済む問題ではないんだぞ?
あ、アレって詳しくは公表してないんだったか?
わからんけど。
「すみません!こんな事するつもりなかったんです!」
俺が睨んでいると、ぐるぐるメガネちゃんがそう叫ぶ。
まあ、キミはそうっぽいよね。
でも、他の奴らはどうなんだろうか?
あんなにこっちを睨みつけて来ていたけども?
「他は?」
「!?いや!オレは止めとこうっていってた!んです!」
「わたっ私も流石にヤバいって言ってたのにこいつが勝手に!」
「み、みみみみ!皆が行くからちょっとノリで着いてきちゃっただけなんです!」
「……ふーん?」
相当ビビっている様子。
目線を宣言君に戻す。
「だってさ」
「そんな……皆……ギルドの仲間だって……」
絶望顔の宣言君。
そりゃさぁ、ここまで何も準備せずにやってきて、不意打ちとは言え一方的にやられてる奴見たら、見捨てたくもなるだろうさ。
「下らないなぁ……。なんだ?俺はお前のヒーロー願望を満足させるためだけに利用されたのか?その下らねぇもんのために、こうしてステージの上がお前の汚い血で汚れてんの?すごい不愉快なんだけども」
「血……ち……たすけて……死んじゃう……」
「いや、お前は俺を殺すって宣言したんだぞ?なのに自分が殺されかけてるってだけで何言ってんだ?助けねぇよ」
「そん……な……」
「俺さぁ、できれば人殺しなんてしたくないんだけどさ。でも、俺や俺の大切な人の命を奪おうって奴は、さっさと殺すべきだと思ってるんだわ。だから……」
「ひぃ!?」
片手で宣言君を吊り下げたまま、もう片方の手で持った木刀の切っ先を宣言君の顔面へと向けて、そして突き刺そうとしたその瞬間……。
「ふんっ!!!!」
「ひげぇえええ!?」
横合いから叩き込まれた拳によって、宣言君は吹っ飛ばされていった。
それを放ったのは、見事な残身を披露しながら俺に向き直った聖羅だった。
「ふぅ……。大試落ち着いて」
「聖羅……」
「大丈夫、私たちは大丈夫」
「でもさ……」
「うん、堂々と大試を悪く言ったアイツは殺したかったけれど、でも大試に殺させたくはないから」
「…………」
「聖女パンチでイナフ」
「イナフって……」
ふんすっと拳を見せてくる聖羅。
その姿に、俺は冷静さを少し取り戻した。
そもそも、頭では宣言君たちがただの転生先でヒーローになりたいだけの奴だろうだって事はわかっていたし、だからといってうちの家族がこんな奴らにどうこうされる事なんて万に一つも無いであろう能力差があることもわかっているんだけれども、万に一つの可能性があるというだけでも、俺が全力で潰す理由になっちゃうんだよなぁ……。
飛んで行った宣言君の方を見れば、壁にぶつかって気絶しているようだけれども、傷は既に治っているようだ。
聖羅の聖女パンチで、ぶっ飛ばされながら治されたんだろう。
あー……でも、やばいな……。
ステージ上が血の海じゃん……。
それに、周りで見ていた生徒たちだって、相当ドン引きされてるだろうなぁ……。
彩音たちも……。
てか、冷静に考えれば俺、今フンドシ一丁なんだった……。
最悪じゃん……。
そう思って周りを見れば、リンゼや有栖たち俺の身内は、皆戦闘態勢で加勢するつもりだったっぽい状態で苦笑いしており、彩音は宣言君を絶対零度の目で見ており、紗枝は俺の真っ赤に染まったフンドシに興奮するというヤバイ状態だった。
ただ、ステージ下の生徒たちはといえば……。
「何アレ?演出?」
「そりゃそうだろ?じゃないとあのタイミングで訳わからん宣言しに行かないだろ。意味わからんし」
「今年の1年は活きが良いなぁ」
「フンドシ……張り付いてる……!」
「「「キャアアアアア!聖羅様ァ!」」」
と、なんか知らんけどそこまで騒ぎになっていなかった。
それを見て、聖羅が自分の所持している木刀を手に持ってから通常サイズに戻し、天に掲げた。
「桜花祭で魔王を倒すのは私!そして、魔王を1日好きにする権利を手に入れる!邪魔する者は全て叩き潰す!」
俺の知らない勝利報酬が追加された瞬間だった。
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