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「大試さん、あっ!んっ……そこ……いいで……すぅ!」
「……そうか」
「んんっ!そんな奥に!指……入れちゃ……らめぇ!」
「いや、腰のツボ押しただけだろ……。数ミリしか入ってねぇよ……」
生徒会室のでけぇソファーの上、そこにうつ伏せに寝ている彩音にマッサージをしていました俺です。
なんか、全体的にエッチな事を言われている気がするし、顔もトロ顔でとんでもない事になっているけれども、彩音は別にそういうネタで言っている訳じゃない。
これが素だ。
何でこんな事になっているかといえば、彩音が突然生徒会長というまったく経験の無い仕事を始めた結果、かなり疲れた溜まっていたらしく、体中に不調を来し始めたという話を本人から聞いた俺が、「だったらマッサージしてやろうか?」と軽く言ってしまったのが原因だ。
「お願いします!!!」と、それはもう食い気味なくらいで頼まれてしまったわ。
そして始めて見れば、そりゃ体の不調を自覚するわというくらいどこもかしこもガッチガチだった。
太めの筋肉がどこも、半解凍状態の鶏むね肉みたいな感触になってたもん。
氷姫って異名は、そこから来てたりしてな!
無いか……。「マッサージしてもらうのなんて初めてです!」って言ってたし……。
貴族の御令嬢のそんな台詞で、ちょっと涙出そうになった……。
「はぁ……幸せ……。毎日して欲しいくらいですね……」
「学園に来てる日ならやってやるから、無理するなよ?」
「本当ですか!?はい!毎日お願いします!マッサージされる時用の服装って何かありますか!?水着の方がいいですか!?」
「……学園に来てる日なら、だからな?毎日じゃなくて……。あと、服装は何でもいいぞ。体操着でもなんでも……。水着は止めろ。生徒会室で水着で男と会ってるなんてバレたらとんでもない事になるだろ……」
「そうでしょうか……?友達同士ならそういうのが当たり前なのでは?」
「お前の友人観は、少しガバガバすぎるぞ」
完全にコリをほぐす事は、流石に難しかったけれども、なんとか半解凍状態から解けかけの死後硬直くらいまでは持って行けた。
うん、碌なもんじゃねぇな……。
本当に毎日やってやった方が良いか……?
「それにしても、何でそんなに疲れてたんだ?新しい生徒会が始まってすぐの忙しさは大分落ち着いたと思ってたけど、また忙しくなるようなイベントあったっけ?」
「何言っているんですか?桜花祭ですよ」
「桜花祭?アレって、もうひな形ある程度あるんだし、そこまででもないんじゃないか?」
「そのひな形が、今回はどれも役に立ちそうにないんです……」
桜花祭といえば、学園の新1年生相手に、2~3年合同軍が戦ってわからせるイベントだ。
自分はエリートだ!ってイキってやってくるアホを躾けるためのイベントである。
まあ、俺が入学してからの桜花祭は、1回目が1年生の殆どのメンバーが2~3年側に寝返った上で俺が数秒で終わらせたし、2回目はそもそもアホ主人公様が色々やらかしたせいで中止になっているので、あまり参考にはできないかもしれない。
でも、俺が入学するまでの企画書だの引き継ぎ書だのも残っていたし、そっちは割と無難な内容だったから、今回もそれで行けると思ってたんだけどな?
学年主席をリーダーにして、学年全体をまとめ上げて戦わせるだけだろ?
「それが、今年の学年主席の涅さんが、主将役を断固自体したので……」
「あー……」
言われてみれば、涅にそういうのは無理だ。
あいつ、俺が言うのもなんだけど、かなりコミュ障だもん。
慣れたら寧ろ滅茶苦茶喋るようになるんだけど、それでも突然黙ってスマホ弄りだすような奴だし……。
「それで、他に主将に相応しい奴がいないとか?」
「いえ、いるにはいるんですけど……」
「ん?」
マッサージで少し乱れたシャツを直しつつ、彩音が歯切れ悪く答える。
「1位の涅さんが、余りにもダントツの成績でしたので、2位以降がどんぐりの背比べ状態になっていると言いますか……」
「あぁ」
「その状況で、単純に2位の成績の生徒を首相にして良い物かと」
リエラにバフもりもりかけられた涅が放った一撃は、試技エリア以外でぶっ放していたら大事件になる様な火力だった。
だから、それ以外の学園に入りたての生徒たちがそれを基準に比べられちゃうと、そりゃ判断も難しいか……。
適当でいいんじゃなぇかって気もするけれども、彩音はその辺り割ときっちり考えちゃう性格っぽいしなぁ……。
「もういっそのこと、今年はサバイバルのチーム戦にしちゃえばいいんじゃないか?」
「サバイバル?」
「自分たちでチーム組ませて、そいつらが取得するポイントで勝敗を決める感じで。学年ごとにチームにするんじゃなく、学園生とだったら誰とでもチームを組めるようにしてさ」
「それだと今までまったく前例がない物になりますけど、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃないか?心配なら王様に許可とってくるぞ」
「本当ですか!?じゃあそうしましょう!それと、チーム組んでください大試さん!」
「いや、彩音は生徒会だから運営側で仕事だぞ?」
「そんな!?こんなに友情が育めそうなイベントなのに!?」
となりで服装をきちっと直して、姿勢正しくソファーに腰かけていた彩音が絶望の表情になった。
流石は、友達欲しくて生徒会長しているだけの事はある。
だったら運営側で頑張る事でそっちのメンバーで友達作ればいいのにと思わないでもないけど、コイツ仕事自体は真面目にしたがるから、多分運営中は威圧感すごい氷姫フェイスになりっぱなしで友達なんてできないんだろうなぁ……。
こんな美少女なのに、なんで友達どころかナンパにすら合わないのかといえば、きっとそう言う事なんだろう。
悲しい……。
「……彩音、何かやってほしいことは無いか?」
「はい?突然どうしました……?」
「いや、特に何かあったわけじゃないんだけど……。まあ、何も無いならそれで」
「あります!耳掃除してください!」
「耳掃除?え?女の子が男にされたがるもんなのかそれ?」
「?この前読んだ本だと、主人公の女の子が男友達にしてあげてましたよ?」
「それは……いや、まあ……いっか……」
何となく不憫になって色々手伝ってやろうかと思った故の提案だったけれども、まさか女の子の耳の中を凝視する羽目になるとは思わなかった。
「あっ……そんな奥まで……!?んんー!!」
「……大人しくしてろ」
後日、俺が生徒会室で変な事をしていたと噂が出たり出なかったり、そんなんいつも通りだろと言われたりしたのは別の話。
感想、評価よろしくお願いします。




