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「なんだよ!大切な娘を婚約者何人も侍らせてる男……なんかに取られそうだってのに、本当にその程度の反撃しかできねぇのか!?寄生されただけでも笑いもんなのにザマァねぇなあ!!!」
「エリザあああああああああああ!!!渡さないぞおおおおおおおおおおお!!!!」
「そして憑りついてる方もよぉ!魔王の体なんて言う極上の宿主使っておいてニンゲンのガキ相手に苦戦とか、そりゃファムからも忘れられるよなぁ!?忘却されるレーテーさんよぉ!」
「ふざ!!!ふざけええええええああああああ!!!!」
俺自身のメンタルもゴリゴリ削れるクソ野郎ムーヴを続けつつ、筋肉だるまのオッサンを煽っていく。
正直、今すぐ逃げ出したいくらいに魔王様の顔が怖いんだけれども……。
「大試ー!ウチを大試のお嫁さんにして~!」
「あわわ!エリザお嬢様がとんでもねーこと言ってるにゃああああ!?」
美少女にそんな事を言われたら、逃げ出すわけにもいかない訳で……。
単純に、エリザにそう言ってもらえると嬉しいってのはあるけれども、ここで逃げたらどう見られるかが怖いってのもある。
まあ、どっちにしろこの空間に場外という概念はないから、もし逃げようと思ったらギブアップするしかないんだけれども……。
その後、強制的に何でも命令を1週間聞かされるそうなので、恐らくその間に俺は魔王様に汚いジュースみたいなものにされるだろう。
床に落としたイチゴジャムみたいな姿かもしれん。
味は、多分酸化鉄味。
「聞こえるか!?どうやらエリザは、アンタらより俺の方を応援してくれるみたいだぞ?」
「「ああああああああああああ!!!!」」
「声ウルサイしハウリングというか何故か重なって2人分聴こえるんだけど……」
「「ぶちごろすうヴうううあああええええあああ!!!!!」」
俺としては、レーテーからは俺へのヘイトを稼いで、ファムとエリザから目を逸らすのが狙いだった。
そして、魔王様に関しては、メンタル面でレーテーを凌いでもらって、可能であれば自力で肉体の主導権を奪ってほしかった。
それがどうだ?
あれってさぁ……シンクロしてない?
色々な理由があるにせよ、現時点で恐らくあの2人の至上命題は一致しているんだ。
つまり、「目の前のいけ好かない男(=俺)をブチのめす!!!!」って事でだな……。
だから、肉体を操って使っている筈のレーテーの力と、本来の肉体の持ち主で、怒りで肉体の主導権を取り戻しつつあった魔王様の力が、うまい具合に嚙み合っている感じがするなぁ……。
混じりっけなしの殺意感じるもん。
「まあ……ここまで殺意向けるなら、殺されても文句言えないよな?魔王様!」
「大試ー!パパなんてやっつけちゃってー!」
「さっさと終わらせて帰るニャ!これ以上わけわからん奴の相手して変な事になる前ににゃ!」
「「うがあああ゛ああああ゛ああああ!!!」」
うん、女性陣からのOKも出たので、ここからは手加減無しでぶん殴ろう。
彼女たちの言葉の一つ一つが、魔王タッグの心の炎にニトロをくべるかのように作用しているし、早めに何とかするのが彼らの為でもある気がする……。
俺は、母さんが父さんに殴りかかる時の動きを真似て、瞬時に魔王ボディとの距離を詰める。
走り込むというより、両脚の開閉を利用して跳ぶようなといえばいいのか、呼び動作が少なくて相手の対処が遅れやすいんだ。
といっても、今目の前にいるオッサンは、怒りに我を忘れていて、パンチのラッシュをする事しか頭になさそうだけども……。
とはいえ、結局どんだけ壁のようにラッシュを叩きこんできていても、実際の腕は2本しかない。
もしかしたら、第3形態くらいになったら生えてくるんじゃないかってきもするけれども、少なくとも今の筋肉だるま親父状態の魔王様の腕は2本だ。
だから、相手に狙いを定める余裕さえ与えなければ、そのラッシュの間に体を滑り込ませて、こちらの拳をノーガードの急所に叩きこむことも可能!
やってる側の俺があまりのクリティカルヒットな感触にちょっと焦る程の一撃が、魔王様の鳩尾に決まった。
「「がっああ!!!?」」
「ラッシュが止まってるぞ魔王様!」
動きが止まった魔王様に追撃を連続で叩きこむ。
流石にすぐに体制を立て直した魔王様だったけれども、さっきの一撃がかなり効いているらしく、こちらが優勢だ。
……とか余裕ぶった事言ってるけれども、その一撃を入れた後に関しては、お互いにノーガードでの殴り合いを始めてしまったので、ちょっとリードしているだけで双方ボコボコなんだけども……。
「こちとら無駄に疲れてんだよさっさと死ねクソ野郎!!!!!!!」
「「おおおおおおお!!!エリザああ!!!ファムああああああ!!!」
「煩い!喋るな!!顎!!砕けろ!!」
「「べぶっ!?だぁべるああああああああああ!!!!!」」
「ごぼっ!あああああくっそ!!!顎砕けても喋るのかよ死ね!!!!」
「「うおおヴぁあああああああああああ!!!」」
途中からは、完全にただの罵り合いである。
どうやら俺も、相当ストレスが溜まっていたらしいと、どこか頭の片隅で冷静に自分を診断していたけれども、口からはとにかく切ったねー言葉が響いていた。
「うらああああああああ!!!」
「「べばああああああ!!!!」」
「死ねやあああああああ!!!」
「「くたばべえええええええ!!!!」」
「「「おおおおおおおおおおあああああ!!!!!」」」
俺を合わせた3つの雄たけびが空間内に響いた。
全力のクロスカウンターを決めた俺達。
視界がグラつくけれども、それでも脚に力を入れて次の動作をするためにすぐに構えをとった。
しかし、魔王様がいるはずの場所にその姿が無い。
何事かと思えば、足元に筋肉だるまが倒れ込んでいた。
「……ハァ…………ハァ…………」
まあつまり、こっちも脳みそが同じような馬鹿な状態になって、同レベルの戦いを繰り広げてしまったわけだ。
あの状態のオッサンたちと似たようなもんだったとは、流石に恥ずかしいな……。
まあでも、これでどうやら問題は片付いたようだ。
「勝負はついただろ?これで、エリザとファムは俺の女だ。二度と口出しするなよ!!!」
ずっと片付けるのがめんどくさかった部屋の一角を奇麗に仕切った時並みの解放感を得ながら、倒れ伏すオッサンにそう吐き捨てる。
まったく!
なんでこんな苦労しないといけないんだ!?
エリザとファムと婚約しようとしただけだったのに……。
あれ?
いや違うな?
そんな話じゃなかったはずだ。
なんか、相手のノリに俺の方もシンクロしちゃって、いつの間にかエリザとファムとの婚約を認めてもらおうとしているような感じになってたけれども、実際には魔王様を救おうとしてた筈だったんだよな……?
何言っちゃってんだ俺……?
そこまで考えて、はっとして後ろを振り向いた。
そこに居るはずの2人の女性を見るために。
「~~~~~~~~~~!!!!」
「ニャ…………」
口を両手で押さえて顔を真っ赤にしながら、喜んでいるらしいエリザと、少女のようにモジモジしながら顔を赤くしているファムが見えた。
いや、だから、魔王様助けに来たはずだったんだけどなぁ……。
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