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黒いねばついたオーラを纏った魔王ボディが突っ込んできた。
その右拳が俺の顔面をかすめる。
「うおっ!?」
「しねぇえあああああああああ!!!!!」
速さはすごいけれど、動き自体は小学生の喧嘩みたいなへなちょこパンチだ。
多分、レーテー自身にあまり肉弾戦の経験が無いんだろう。
筋肉は鍛えていたみたいだけれども、それを活用する機会も無く死んだみたいだし……。
とは言え、だ。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
そんなへなちょこパンチだろうと、魔王ボディから連続で繰り出し続けられれば、まるで壁か何かのように見える程の圧迫感がある。
多分、普通の人間が食らったら、一発で致命傷だろう。
しかも、なんだか1発撃つたびに洗練されてきてない?
まるで、物凄くこのパニックルームとか言う技に慣れているバトルジャンキーのようになって行ってるような……。
「っつぅ!!!?」
この部屋の中での俺と相手の動きを見極めるために回避に専念していたけれども、あまりに相手の動きが良くなりすぎていて、段々と避けきるのが難しくなってきた。
体を掠るヤバめの感触に、流石に反撃を決意する。
「らぁ!!!」
「ごぼ!!?」
「せいっ!!!」
「へぶっ!?!?」
「吹っ飛べ!!!」
「ぐおおおおお!!!!」
少し反撃をしただけで、形勢は一気に俺に傾いた。
何せ、魔王ボディレーテーは、身体強化すら使う事が出来ない状態で、魔力を纏っているだけの状態なので、そりゃ素の身体能力だけで戦闘を行う場合ならば、相当な強さだろう。
だけども、俺の場合は身体能力が神剣に依って上げられたままのようなので、単純な殴り合いであれば負ける気がしない。
現時点では、スピードもパワーもテクニックも俺の方が何倍も上だし。
なんだけどなぁ……。
「ぐるぅ……!負けん……!私は……俺は……負けん!エリザマモル!!!!」
「うへぇ……」
さっきから感じていたけれども、なんか魔王様が肉体の主導権取り戻しつつない?
その上で、ブチ切れてない?
だって、パンチが段々腰の入った重くて鋭い物になって来てたもん。
しかも、攻撃を受けても、馬鹿みたいに分厚い魔力の壁を巧みな魔力操作で構築するせいでかなりガードされるから、ダメージを完全に相殺されている訳では無いにせよ、中々相手をダウンできない。
こんな動き、さっきまでのレーテーでは……というより、レーテーが動かしている時点で無理だと思う。
レーテーが魔王様に憑りついた切っ掛けが、「パパ嫌い!」とエリザに言われた事だった事からも、レーテーの寄生は相手のメンタルによって効果がかなり異なるんだろう。
であれば、今みたいにエリザをクソ野郎がクソみたいな悪い顔で奪って行こうとしている状況にキレたオッサンの暴走メンタル相手には、レーテーが太刀打ちすることも難しくなっているのかもしれない。
となれば、ボコボコにして追い詰めることで、レーテーを魔王様から追い出させる作戦を並行しながら、メンタル攻撃してレーテーの脳破壊を狙うなら今が絶好の好機!
「なんだぁ!?ファムを自分の女にするとか言ってた割にショボいなぁ!魔王様の体使ってそれかよ!もう少し地獄で鍛えて出直してこい!」
「うるさあああああああっあごごごっご!!!ファムじょ!!わた!!!!エリザあああああああ!!!」
「ヤバい怖い!なんなのこの人!?」
何とか女の敵っぽい男を演じようとしてるんだけれども、相手のブチ切れ具合がすごくてちょくちょく素に戻ってしまう……。
そんな時は、後ろで応援してくれているエリザを見る。
「大試ぃ!パパやっつけてウチと結婚しよー!」
「…………」
正直、とても魅力的な話ではある。
エリザは美人だし、胸も大きいし、話していて楽しいので、結婚してくれるというならそりゃ嬉しいさ。
だけども!だけどもだ!
彼女にこうやって言われている以上、ブチ切れ魔王様とレーテーに俺が負けたら、絶対命令権で何をされるかわからない。
それが、あまりに怖いんだ。
「おおおおおうおおおおおおおおん!!!!!!」
だってさ、もう魔王様じゃないもん。
魔王様第二形態とかそんな感じだもん。
そして、パワーもスピードもどんどん上がっている。
だから、これ以上状況が悪化する前に決着をつけないといけないって訳よ!
段々と魔王様の体の周りに漂う黒いオーラが濃くなっていく。
禍々しさがすごいけれども、それでも俺は構わず魔王様の顔面に拳をぶちこんだ。
「ぐっ!!!」
魔王様の口から、苦痛の呻き声が漏れた。
しかし……。
「いっつぅうう!!?」
俺のパンチに対して、レーテーはクロスカウンターを叩きこんできた。
相手の攻撃が見えていたので、安全を考えて下がって回避する方が理性的な判断だったかもしれないけれども、俺は敢えてそのカウンターを顔面で受けた上で、魔王様へと自分の攻撃をクリティカルヒットさせることを優先した。
その効果は中々大きかったらしく、少し距離をとってからタタラを踏む魔王様。
多分、本人もこのパニックルーム中に相手に優位をとられた経験は少ないんだろうな。
つまりは、相手が魔王だろうが、寄生虫だろうが、俺がおまえたちの天敵だ。
「エリザとファムは貰っていくぞ!大人しくダウンしてろ!」
「させん!!!させんぞおおおおおおおおお!!!!」
もうほぼ魔王様っぽいけれども、それでもレーテーが出て来た訳では無さそう。
となれば、まだ俺にヘイトを集めておく必要があるし、この後魔王様がどこまでエリザの件でガチギレするか物凄く心配とは言え、俺は更なるクソ野郎ムーヴをキメるのだった。
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