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「くぅ!!痛い!!痛いぞおおお!!?痛覚があるのがここまで厄介だとは……!!」
筋肉ムッキムキの大男が蹲った体勢でぐるんぐるん転がっている。
そんなに痛かったか?
顔面ちょっと凹ませただけだろうに。
「イヤならその体から出ろよ。邪魔くせーんだよ。死ぬときは潔く死ね」
「馬鹿が!生き残った者が勝者なのだ!醜かろうがなんだろうが私は生き残る!」
「あ、うん。俺もそのスタンス自体は賛成なんだけど、敵に言われるとすげぇ面倒だな……」
とにかくまず最初に自分が生き残るという結論を用意するのは人生の基本だよな。
最終的に聖羅たちを守るために自分の命を捨てることが絶対に必要だって確定した時には、いくらでも投げ捨てるだろうけれども、生きているからこそ皆を護れるんだ。
というわけで、ボコボコ続行っと。
蹲っている魔王様の顔面を蹴りあげる。
サッカーしようぜってノリだ。
「ぐべぇ!?」
浮きあがった所を反対に踵落としで地面にねじ込む。
「ごびぇ!!」
頭部に攻撃を集中していたからか、頭を両腕で護ろうとしているため、お留守になっている脚を木刀で叩き抜く。
「ぎええええ!?」
痛みに反応して脚へと手を伸ばそうとしている横っ腹へとヤクザキック。
「げぼっ!?」
………………………………うーん…………。
「どうしよう、弱すぎて流石に可哀想になって来た……」
「ボス、そんなよくわかんねー奴に情けかける必要無いにゃ。体の方だって、魔王様なら多少手足が吹き飛んで内臓が潰れても自分で回復できるしニャ」
「あ、ファム!下がってろって!感染したらどうすんだよ!」
「はいはい分かったニャ。ボスの愛しの愛メイドを大事にしたいって気持ちは痛い程わかるにゃ~。それはそれとして、なんかやり辛そうだったからアドバイスしに来ただけニャ」
「わかった!わかったから下がってろ!」
「にゃっにゃ~」
気持ちはありがたいが、俺のメンタルより自分の心配しててくれ!
流石にファムの筋肉を切除したりボコって中の奴追い出すなんてことはしたくないぞ!
あと、どさくさ紛れに言ってやがったが、何が愛メイドだ!?
「……ファム嬢……?愛……メイド……え!?」
そんな俺たちのやり取りを激痛にのたうち回りながら見てしまったらしいレーテー。
そういやこいつ、ファムのファンなんだっけ?
……あ、男のメンタルギタギタにする方法といえば、殴る以外にも方法あるな……。
俺は、また後ろへと下がっていこうとしていたファムの手を取った。
「にゃ?」
「ファム、話を合わせてくれ」
「ん?わかったニャ」
そして、猫耳メイドの肩を抱き、自分へと引き寄せた。
「にゃああ!?」
驚き過ぎだろ……。
そんなに嫌か……?
流石に傷つく……。
「悪いなレーテー。お前が大好きなファムは、俺が貰っちまった」
「な、なにいいいいいいいいい!?」
「もう父親を倒して、結婚の許可も貰ってんだよ」
「うそだ……うそだあああああああ!!」
「もう色々ヤっちまってるぜぇ?例えば、ファムがどんなパンツ履いてるかだってじっくり見させてもらったしなぁ?」
「いぎぎぎいいいえええええええ!?」
ヤバイ……自分で言ってて自分を殺したくなってきた……。
こんな男が目の前に居たら、ノータイムで顔面殴りに行くわ……。
「ファム嬢!嘘だろう!?貴方は孤高にして気高い女性だったはずだ!それがニンゲンの男なんかとズッコンバッコンしたというのか!?」
レーテーが魔王様の顔でそんな事を必死に聞いてくる。
魔王様の姿でなければそうでもなかったんだろうけれども、魔王様だって言う要素だけで笑いそうになってしまう……。
あと、ズッコンバッコンいうな。
「……えっと……まあ……ニャ……」
しかし、ファムも突然の事で戸惑っているらしく、顔を赤くして固まってしまった。
何恥ずかしがってんだ……?
「ボスは……強いしニャ……良い匂いもするし……美味いものいっぱい食べさせてくれるし……何だかんだで優しいし……だから、お情けで結婚してやることにしたっていうかにゃ……」
「あああああああああああああああああああああ!!!!」
ただ、その恥ずかしがり方が逆にクリティカルヒットだったらしく、レーテーの慟哭が辺りに響いた。
(とはいえ、お情けってお前酷いな……)
(う、うるせぇにゃ!結婚してやるんだから有難く思うニャ!)
(あーはいはい。ありがとうな)
(ニャ……)
案外こう言う事になると耐性が無いらしく、顔を真っ赤にして口を閉ざしてしまったファムを後ろへと送り出し、エリザの辺りまで下がってもらった。
レーテーはといえば、大分弱ってくれているらしい。
とにかく今は、コイツを魔王様の体から出さないといけない。
魔王様の体に憑りついている状態を解除する方法は、まだ全くわからないけれども、メンタル的な部分で魔王様の耐性が下がって取り付けたって言うなら、逆にレーテー自身のメンタルをボコればその憑依状態を何とかできるかもしれない。
そうじゃなくても、殴り続けてこれ以上体内に居たら魔王ともども死滅するわって思わせられたら、それはそれで出て来てくれるかもしれない。
体外にさえ出てくれれば、こっちには地獄の炎があるから、悪霊だろうが何だろうが焼き払えるはずだし、仮に俺の体に憑依でもしてくれれば、猶更対象が特定できて対処しやすくなる。
というわけで、ボコボコ再開だ!
「さて、人の女に手を出そうとした勘違い野郎には、追加で制裁しないとなぁ!」
「ごぼっ!あ、あああ、嘘だ……嘘だ……」
「……あー、えっとな……」
「そんな……ファム嬢が……こんな子供とズッコンバッコン……」
「だからズッコンバッコン言うなって……」
まずい!
この攻め方は不味かったかもしれない!
何故なら、俺自身の良心がギシギシ言ってるもん!
寄生虫を殴り潰すのは構わないけれども、男女関係で煽るのはすげぇイヤだ!
もう二度とやりたくねぇ!
しかもそれが嘘だとかもうアレだ!
「あーくそ!てめぇのせいで嫌な事しちゃったじゃねぇか!死ね!」
「ぎいああああああああ!!」
そこからも殴る蹴るの暴行を加えてみたけれど、悪霊レーテーが出てくる気配がまるでない。
悲鳴を上げるだけで、真面な会話すらなくなってしまった。
「うーん……このままやり続けてたら魔王様が死んじゃいそうだし、一か八かで筋肉全部切除してみるか……?それとも疱瘡正宗で何とかなるかなぁ……?いや、それやると結局筋肉全部が有害判定で消えちゃいそうだし同じか……」
割と追い詰められている気がする俺。
相手を殺さずに何とかしようとするのってやっぱり難しいなぁ……。
女の子じゃなくて、筋肉ムキムキの大男な上に、多少痛めても自分で回復できるオッサンだからまだマシだけども……。
ここからどうしようか俺が悩んでいる間に、蹲ってピクピクしていたレーテーが、やっと反応を取り戻してきた。
「ふ……ふふふ……」
「お?会話できるようになったか?ほらほら、出て来いよ勘違いや……あー、寄生虫やろう!」
もうNTRクソ男役はちょっと無理……。
「もう……許さんぞ……!許さんぞニンゲンどもがあああああああああああ!!!」
突如キレ始めて魔力らしきオーラを周りに放ち始めたレーテー。
もう許さんらしいから、こっちとしても再度遠慮なく殴る。
「ぎべぇ!?」
「出て来いって!」
「くそ!くそぉ!」
「ほら!俺になら憑りついて良いから!その後蒸発させてやるから!」
「まけ、まけるかああああ!」
「ほら!筋肉だぞ!上腕二頭筋だぞ!」
「魔王の体の方がマッスルモリモリなんだよぉ!!!!!……あ、そうだ!私の体は今魔王だったのだ!とう!!!」
「あっ!?」
突然何かに気が付いたらしいレーテー。
そのまま後ろに飛び去り、その場で何かの構えをとった。
何の構えかはわからんけれども、とりあえず今までのへなちょこ体術とは違う感じがする。
「フハハハハハ!魔王様が最強と呼ばれる所以の技を見せてやろう!これで貴様はおしまいだ!!!」
「あ?そんなもん使えるなら最初から使ってるよな?」
「馬鹿め!確かに魔王様の魔術の殆どは、私には難しくて使えなかったが!!!これだけは、肉体にギフトとして備わったこれだけは!!!私でも使えるのだ!!!今思い出した!!!」
「だったら使われる前に倒すしかねぇよなぁ!」
木刀を瞬時に雷切と倶利伽羅剣に持ち替えて斬りかかる。
それが魔王様の体に触れる直前に、何故か手の中から2振りの剣が消えうせた。
「ん!?」
「フハハハハハ!見たか!?これが魔王様が数々の強敵を打ち滅ぼしてきた最強の魔術!『パニックルーム』だ!この空間の中では、行使者である私が設定したルールに全ての者が従わざるを得ない!」
「はぁ!?」
「……限度はあるが」
「限度あるのかよ!?」
ほっといたら弱点まで教えてくれそうだが、なんにせよ、割とヤバ目の事態になってしまった。
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