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何故かはわからないけれども、15歳で王都に来てから、長期間の休みが取れた覚えがあまりない。
休めるぞ!って思ってたら、次の日トラブルが起きてデッドオアアライブったり。
それが解決してやっと本当に休めるぞ!って思ってたら、次の日はもう休みも終わって学校だったり。
という訳で、今日から俺は、王立魔法学園の3年生だ。
いや、籍的には4月1日からだったんだろうが、今日から授業なんでね。
てっきりもっと先だと思ってたよね……。
だって、日にちを把握できる程心に余裕なかったし……。
「明日ちゃんと来てくださいね!約束ですよ!」
「明日……?明日な……あいあい……」
って疲れ果て寝た後の夜中に掛かって来た彩音からの電話が無ければ、入学試験に手伝いとしていく事すら無かったかもしれない。
前世では、曜日の感覚や日にちの感覚が無くなる事なんて無かったんだけどなぁ……。
船乗りが金曜日をカレーの日にする気持ちが分かったわ。
「あ……カレー食いたいな……」
もう、俺の口から零れる言葉に知性を全く感じない。
その自覚があるのに、それをどうにかするだけの脳の余裕がない。
「あ!いいですねカレー!僕も食べたいなー!」
「私も賛成です。カレーは良い」
「我もだ!」
「フフ……カレーも良い……非常に芸術的な料理だ……」
くっそ……周りの2年生男子たちが煩い……。
俺のボソッと漏らした言葉に反応するほど至近距離にくるんじゃねぇよ……。
今日は、新学期最初の日なので、授業は午前中で終わっている。
なので、昼には学園から帰ってもいいんだけれども、なんだか積極的に家に帰るのも怠くて、もう昼食をダラダラと食べてから帰ろうかなって考えた俺。
そう言う場合、食堂は危険だ。
一般生徒用の食堂だろうが、上級貴族御用達の食堂だろうが、午前中だけで帰れる今日という特殊な状況をぶち壊すトラブルを起こす奴と出会いやすいのがこの学園だ。
なにせ、モデルとなったのがゲームの中の学園だからさ。
トラブル起こすことでゲームとして成り立っていた訳で、逆に何のトラブルも起きなかったらゲーム足りえないんだ。
とはいえ、俺はこの世界に主人公として設定された存在じゃない。
トラブルを避けるようにこっそりしていれば、ソコソコ平和に動けるんじゃないかと思ったんだよ。
ってことで、学園の売店で売れ残っていたパンを大量購入して、学園の裏庭、しかもあまり人が来ない後者の陰になっている所で食べることにしたんだ。
この学園の売店は、生徒や職員に庶民が多少居て、そいつらは食堂を使うのを俺と似たような理由で躊躇しやすいからって事で、昼食用の安くて美味いパンを多めに売ってるんだけれども、余裕を持った品ぞろえにするために在庫が過多になるように発注されているらしい。
そもそも利益を見込んで経営されている売店ではなく、福利厚生の一環として存在しているからこそできる手段なんだけれども、かといって売店のおばちゃんたちもパンをただただ廃棄するのはもったいなく感じるらしく、残ったパンは自分達で持ち帰っていたらしい。
「家畜の餌に再利用するって名目で業者に引き取られても、そもそも家畜にあまり塩とか砂糖が使われた食品を食べさせるわけにいかないから、本当は廃棄しているのよ!もったいないじゃない!?」
って愚痴っていた。
それでも、やっぱり毎食パンだと当然飽きるから、持って帰って消費するのも限界がある。
なので、俺は定期的に売店で売れ残ったパンをドカ買いしていた。
我が家の場合、パンなんて有れば有っただけ消費するメンバーがいるからな。
エルフにオリジン、その他大勢。
今日もそんな感じで、パンを大人買いした上でここに来ていたんだけども……。
「あ!大試先輩!」
「……ん……?」
俺が、チョココロネの中のチョコクリームを吸いだしてやろうかと画策していると、聞き覚えのある声が響いた。
そちらを見れば、ヤンキーコスプレを止めて、真面なショタキャラっぽくなった似非ヤンキーと、剃ったはずの髪がやっと生えそろって、普通の髪の長さになったロン毛と、インドダンサーと、花咲ガニがいた。
そして、至る現在。
「クリームパンおいしいな~」
「私の餡ドーナツもかなり美味しいぞ」
「ホント!?一口ちょうだい!」
「いいとも」
女性プレイヤーが喜びそうな絡みをするイケメン共。
お前ら、何俺の買ったパンを当たり前の顔で食ってんだ?
いや、幾らでもあるから問題ないけども。
「チクワパンだと!?何故チクワを入れたんだ!?」
「パンを通して未来が見渡せる……これは、そういうメッセージ……」
「成程な!どれ!ここらで一曲踊ってやろうではないか!ミュウウウウウジックカマアアアアアン!」
「ここには楽団はいないさ……」
こっちの2人は、顔の造り自体はイケメンではあるけれども、何かイケメンをはき違えている気がする。
黙らせるか?
面倒だから良いか。
「なんでお前らここに来たんだよ?」
「え?お昼ご飯食べにですよ?」
「ここなら、食べられる草が生えていますからね」
「うむ!我ら、先輩に負けてお小遣いを減らされてしまったからな!」
「痛恨の極み……」
「……はぁ?」
え?何?
お前らここで道草食おうとしてたの?
どういうこと!?
「流石にそれは無いだろ!?いくら小遣いが減らされるなり全くなくされるなりしたって、昼飯を売店とかコンビニで買えるくらいの金はあるだろ!?貴族なんだし!」
「え?そんなのないですよ?だって、僕らはお金を全部ママに管理されていますから。動画収入とかも、ママが受け取ってからお小遣いとして渡される感じだもんね?」
「だね」
「ああ!」
「いかにも」
「えぇ……?」
どんな困窮した状況になるほどのやらかしだったのか?
流石に重くない……?
いや、寮とかいけば飯ってただじゃなかったっけ?
「それに、それまでに貰って溜めてたお小遣いは、この前皆で一緒に焼肉に行った時に全部使っちゃったもんね」
「アレは楽しかったよ」
「七色のドリンクはすごかった!」
「芸術的な色だった……が、豆板醤の味しかしなかった……な……」
「何してんだお前ら……」
何青春してんだコイツら?
ちょっとうらやましいじゃん……。
それにしても、すごいメンツだなぁ。
確か、こいつら全員フェアリーファンタジーでは、ネームドキャラだったはずだよな?
そいつらが集まって、やってることが小遣い全部使ったバカ騒ぎなんて……。
こいつらと一緒に居たら、俺までバカになりそうだ。
あれ?冷静になると、今の俺ってどんな風に見えるんだろうか?
なんだか、クラスになじめず後輩相手に偉そうにしている可哀想な上級生ヤンキーか何かみたいじゃない?
いや、見たいって言うか、そのままっていうか……。
まあいいか。
切り替えて行こ。
気分を切り替えたら、もう口がパンの形じゃなくなっちゃった。
今の俺の口に合うのは、カレーだけだ。
カレーくいてぇ……。
今日は……カツかな!?
俺は、すっと立ち上がった。
迷いなど無い。
今日は、カレーを食いに行く!
「あれ?先輩どうしました?」
「カレー食いに行く」
「さっきのアレ本気だったんですか?じゃあ一緒に行きます!」
「ごちになります」
「うむ!」
「ゴチ……始めて使う言葉だな……」
「えぇ……?まあいいけども……。俺のお気に入りの店だから、騒いだり迷惑かけるような事するなよ?店主めっちゃ怖いから」
俺がそう言うと、元気に肯定の返事をしてくる馬鹿4人。
多少不安だけれども、流石に草を食おうとしてた奴らをここにほっぽり出して行くのもな……。
そしてやってきました魔王様がやってるカレー屋。
この時間なら、エリザも学園から帰って来て店員バイトとして働いている事だろう。
俺は、ドアを開けて中へと入った。
ポポーポポポポ
ポポーポポポポ
相変わらずの曲が流れる。
「あれ?大試いらっしゃい!お昼ごはん?」
「そうだ。カレー食いたくなったから来た。テーブル席空いてる?」
「空いてるよー。って、あれ!?大試が王子様以外の男の子の友達連れてきてる!?」
「そこ、驚く所か……?」
「そりゃそうだよー!いらっしゃいませー。エリザだよ!」
エリザが俺の後ろの男子4人に笑顔で話しかけた。
「「「「…………」」」」
静かなので振り返って確認してみたら、バカ男子4人が、全員顔赤くして固まっていた。
お前ら……。
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