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「な、なんだ今のは!?」
「魔獣!?いや、それにしては神聖さすら感じたが……!」
「一瞬見えた質感的には、樹木のように感じたが……だが、動いていたな……。何より、私たちに見向きもせず走り去った。魔獣であると考えるのは難しいな……」
枢機卿3人が戦慄と困惑の綯い交ぜになった表情で話しこむ中、教皇は1人考えていた。
(ああ……成程。神よ、貴方はそうお考えなのですね?)
それが、本当に神の考えなのか等、教皇にはわかるわけもない。
しかし、だからこそ教皇は信じる。
信じる者は救われる。
信じているからこそストレスを軽減して生活できるし、筋トレの効率も上がる。
つまり、信仰とは人の生そのものであるし、筋力だ。
というのが、大試に毒された末に教皇が至った悟りだったりする。
「ふぅ……。どうやら、私はまだ負けられないようです」
「「「は?」」」
教皇が零した言葉に枢機卿爺さん3人は、一瞬言葉を無くした。
何故なら、こんな面倒な事態を起こしたのは、教皇という立場を投げだすと宣言した教皇自身なのだから。
「「「ふざけるな!」」」
その立場に今更未練でもできたかと憤慨するのも当然だろう。
とは言え、教皇は教皇という立場に今更何の魅力も感じていない。
それでも、彼は教皇という立場を捨てる事が出来なくなった。
「皆さん、先ほどの獣を見ましたか?」
「話を変えるな!どういうつもりだ!?」
「あれは恐らく、犀果大試君が関係しているナニカでしょう」
「何を根拠に言っている!?大体、だとしてなんだというんだ!?」
「我々がこうして雌雄を決しようとしているタイミングで、アレほど我々の理解を超えたモノが割り込んでくる意味……。神に使える貴方達であれば、その位わかりそうなものですが……」
「……まさか貴様、神が犀果大試を教皇にしろと言っているとでも?ありえんわ!妄想も大概にしろ!」
「ええ、それは無いでしょうね」
「なんだと?」
「神は、こうおっしゃっているのです。『犀果大試に余計な手間をかけさせるな。面倒事など可能な限り貴様らが負担しろ』と」
「馬鹿馬鹿しい!なんだそのふざけた物言いは!教皇が面倒事だと!?ああそうだろう!面倒な事などいくらでもある!だが!それ以上に権力も金も手に入る!何より、教会という組織を如何様にも操れる!聖にも邪にもできるのだ!どこぞの未開地よりやって来た蛮族の餓鬼に、教会という人々の祈りを護るべき尊き存在を渡してなる物か!」
「ええ、ですから、犀果大試君は、教皇になりたいなんて微塵も思っていないでしょうし、自分の息のかかった者を送り込むつもりすらないでしょう。自分の大切な人々に迷惑さえかけてこないのであれば、好きにしてくれ、という所でしょうね。彼にとって教皇なんてものは、そこらの学校の教師と大差ないものでしかない。偉そうにしていようが何だろうが、邪魔なら倒す!それが彼のスタンスですから。男の子でしょう?」
「……ならば何故、貴様はこうして教皇の任命権を得る機会を得ようと戦っている?どういうつもりだ!?私には、貴様の考えがさっぱりわからんぞ!」
「いえ、もともと私としては、大試君に教皇という肩書を押し付けるつもりでしたよ?彼が教皇になって、男の子らしく頑張っている姿が見たかったので」
「なんだと!?」
「まあ、きっと彼は嫌がるでしょうが、婚約者である聖羅さんの関係で、完全に拒否もしないだろうなぁという打算もありましたが。ですが、これではっきりしました。私の役目は、彼が彼らしく生きて行けるように、再び教皇として力添えしていく事なのでしょう。もし、私よりもその役目に相応しい者が現れたなら、また神がそれを伝えてくれる筈。それを楽しみに、私はここで死力を尽くして、勝ち残ろうと思います」
「……悪いが私は、今の貴様の話を聞いたうえで、貴様が狂ったんだとしか思えん。何故そこまであのガキに肩入れする?貴様の中で、奴の何が特別なんだ?」
「簡単な事です。私は、彼から神を感じたんです」
「……はぁ……下らん。馬鹿馬鹿しいわ」
そう吐き捨てると、プロレスラー枢機卿は、構えを解いてエリア外へ向かって歩き始めた。
その姿を見て、長年のライバル同士の会話に入り込む暇も無かった2人の枢機卿たちもやっと我に返った。
「おい!どういうつもりじゃ!?」
「ここまで追い詰めておいて日和ったのですか!?」
絡め手枢機卿とメガネ枢機卿は、上手くいけば自分が教皇になれると考えて今回のバトルロイヤルに参加した。
もちろん、プロレスラー枢機卿だって同じように考えたから参加したんだと考えていたし、実際本人もそう考えていた。
にも拘らず、プロレスラー枢機卿があっさりと引き下がったのが信じられない気持ちだった。
「ふん、この狂人のいう神を感じるガキがどういうものか、それを見てやろうというだけよ。妄想をどれだけ信じていられるか、見物だろう?」
「本気ですか!?教皇の椅子が目の前なのですよ!?自らの想いを最短で形に出来るというのに!」
「そうじゃ!貴様の神への信仰はその程度じゃったのか!?」
「……ならば、貴様らだけでそこのジジイと戦ってみれば良い。勝てば、教皇だぞ?とはいえ、狂信者に勝つのは難しいだろうがな」
「「くっ……」」
悔しそうに顔を歪める2人の枢機卿だったが、プロレスラー枢機卿が言うように、2人には自分たちだけで目の前の教皇に勝てる気がしなくなっていた。
あまりに強くて、不気味にすら感じる信心に気おされてしまったのだ。
彼等を置いてまた歩き出すプロレスラー枢機卿。
その背中を追うように、2人の枢機卿もまたエリア外へと歩き出さざるを得なかった。
「それが、貴方達の選択ですか……。ええ、ええ。それもまた、神の思し召しでしょう。きっといつか、貴方達にも見えるようになりますよ。神の御心の一端が」
枢機卿たちを見送りながら、1人奥多摩に残る教皇。
こうして、始まりの騒々しさとは打って変わり、静かに『教会バトルロイヤル~奥多摩がリングだ!~』は終わった。
因みにだが、今回の一件にリスティ様はまったく関わっていない。
「は?なんでこんな流れになんだ?オレ別にそんな設定してないよな……?えぇ……?」
と1人呟いてしまうくらいに、無関係だった。
一方その頃、大試は……。
「ちょっ!?まて!分かった!分かったから待て!ソフィア!舐めるな!お前の舌ヤスリみたいになってるから!鉄鋼用なんて目じゃないくらい荒いから!あとデカいから単純に重い!落ち着け!」
『んべぇにゃにゃにゃ!!!(オス人間ちっちゃい!可愛い!しょっぱくておいしい!)』
全長80mの猫型木像に舐められ頭突きされ、地面に膝まで打ち込まれていた。
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