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ベーコンエッグ。
これは、何でこんなにも単純な造りをしているのに、人の食欲を刺激するんだろうか?
カリカリのベーコンの食感と旨味。
そして、その上の目玉焼きによる追い打ち。
塩コショウもいいけれども、俺は、半熟状態でご飯の上に置き、黄身に穴をあけ、そこに醤油を少し流し込んでから食べるのが好きだ。
「美味い」
「納豆ベーコンエッグは最高なのれす!」
「それは、あんまり同意できんが……」
俺の体を拘束していた面々が目を覚ましたので、とりあえずさっさと身支度をし、食堂で朝食をとることにした。
多分、俺を拘束していた聖羅たちも、なんでソフィアさんたちが一部屋に集まって寝ていたのか疑問に思っているだろうし、俺は俺で、なんで皆が俺を雁字搦めにしていたのか気になっていた。
それでも、その前に空腹を満たした方が、脳の働きも活発になって話は早そうだと思ったわけだが……。
「むすっ……」
「自分の声でむすって言った奴みたの初めてだわ俺」
「むすむすっ……」
「なんだ?何か怒ってる?」
「私が面倒な話し合いしているときに、大試たちは楽しそうにお泊り会してた」
「あのなぁ……。確かにリンゼたちは、一緒にお泊りしていたようなもんだけどもさ、俺は1人……いや、リエラと2人か?マッサージしたらやることも無くなって、仕方ないから部屋の隅っこで寝たってだけの寂しいイベントだったんだぞ?」
「でも、少なくとも私と有栖がやってた話し合いよりは楽しそうだった」
「私たちの話し合いは、私たちが損をしないようにすることはできても、特することはあまりない物でしたから……」
「何か聞くだけで面倒な感じだな」
俺は、正直そんな面白い要素があまりない状況だった訳だが、嫌な思い自体はしていないからなぁ。
それに比べたら、確かに教会に行って長時間話し合いさせられた聖羅と有栖は、文句も言いたくなるかもしれん。
「あはは……。私は、パーティに裏方のオブザーバーとして参加して、ある程度問題なく終わりそうだから帰って来たってだけだったよ。そしたら、皆が大試君に群がって寝てるから何事かと思ったけど、面白そうだしとりあえず私も参加しちゃえって」
大分ノリで行動したらしい理衣が、てへへと頭を掻くように照れる。
「私たちは、教皇のオジサンが教皇辞めるって言うから、次の教皇をどう決めるかを話し合ってた」
「へぇ~…………………………え?」
続く聖羅の言葉に、俺は数瞬遅れて驚いてしまった。
サラッと聖羅は言ったけれども、大事件なのでは?
「恐らくですが、そろそろ教会の内部も外部も大騒ぎになっている頃合いではないかと!」
俺の驚きを理解したのか、有栖が同意するようにそう言う。
だよね?
聖羅が世間話みたいにサラッと言ってるのがおかしいんだよね?
「帰ってきたら、大試がソフィアたちとお泊り会しているってアイから聞いて、私も見に行ったら、大試が寝てたから一緒に寝た」
「私もその欲求に抗えませんでした!」
「うん、ありがとう。そんな事より、もっと重要な話題が今出てたよな?」
「?」
「心底わからないって顔で首を傾げる聖羅は可愛いな」
「ありがとう」
確かに、美少女が俺の隣で寝たいと思ってくれるのは、俺としても非常に重要な事ではある。
結婚前の男女が添い寝とか、俺のピュアマインドだとちょっとアレだけども、それはそれとしてそれを魅力的だと思ってもらえるのは非常に嬉しい。
だがしかしだ、世界的な宗教組織である教会のトップが自分の意思で退き、後任を選ぶ方法を聖羅と有栖が昨日の、長くても10時間かそこらで話し合いして決めたと聞いたら、話の重要度としては……。
あれ?やっぱり美少女の添い寝の方が重要度は上か?
教会とか、ぶっちゃけ聖羅が巻き込まれなければどうでもいいし。
今世界を管理しているリスティ様を祀っているようで、本物のリスティ様の事を全然知らないオッサン共の事なんてなぁ。
そもそも、あいつらリスティ様がこの世界を作ったって考えているみたいだけれども、実際にこの世界を作ったのは、今和室でぐーすか2度寝を決めているリンゼだしな。
それすら知らん奴らの事は、学園を卒業して俺たちが開拓村に引き上げた時点で、ノイズとしてすら俺の思考に入ってこなくなるかもしれんし……。
「まあいいや。因みに、結局の所次の教皇は、どうやって決めることになったんだ?」
「うん、『教会バトルロイヤル~奥多摩がリングだ!~』」
「そうかそうか。有栖?」
「大試さん、これは聖羅さんが説明を省いているのではなく、教皇様が本当にこの名称のイベントを開催すると決められたものでして……」
「それはそれで怖いな……」
あの教皇何考えてんだ?
普段から何となく目線がネチョッとしてて薄気味悪いなって思ってたけど、これで更に何考えてんのかわからなくなったぞ?
「バトルロイヤルって、開拓村でたまにやってたやつか?」
「うん。大抵義母さんが勝ってたやつ」
「アレを教会の偉い奴らにやらせるのか?」
「教皇のオジサンは、神への信仰心が強ければ、この程度の困難乗り越えられるはずって言ってた」
「そうかなぁ?」
「あと、教皇のオジサンは、大試の身体能力で何とかする姿に憧れて、最近は自分も筋トレを続けてるらしくて、すごく強くなってるみたい。だから、教皇を目指す人たちの壁になるために、自分も『教会バトルロイヤル~奥多摩がリングだ!~』に参加するって」
「自分で辞めといて自分で再選のためのイベントに出るのか……」
やりたい放題してんなあの爺さん……。
「それにしても、優勝したら教皇になれるなんてすごいな。ああいう人たちって、戦闘には不向きなイメージあったんだけども。だから聖騎士なんてやつらがいた訳だし」
「優勝したら、教皇を指名できる権限が貰える。だから、本人じゃなくても代理でもいいって」
「あぁ……それは、傭兵みたいなのがガンガン参加してきそうだな。後は、教会の教皇選定に一枚噛んで、うまい汁吸いたい奴とか」
勝てば何でも良かろうの精神で参加する奴ら多そうで、今から面倒な気配がビンビンするわ。
とりあえず朝飯を食い終わるまでそんな面倒な事は忘れておこうかなと、ベーコンエッグを割って流れ出る黄身を見ようとした俺だったがしかし……。
「それは丁度いいのう!」
俺の左手首につけた腕時計からソフィアさんが飛び出してきて、何故か大喜びで俺の横の席に座った。
「どうしました?ってか、まずそのネグリジェ着替えてくれません?R-18になりかねないんで」
「大丈夫じゃろ?それよりじゃ!その『教会バトルロイヤル~奥多摩がリングだ!~』じゃがのう、リンゼに彩音、それと咲愛を参加させたらどうじゃろうか!?丁度いい実戦経験になるんじゃないかと思うんじゃが!」
どうやら、関わらないようにしようという俺の目論見は、早速崩れそうだった。
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