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「すぅ…………すぅ…………ぎぇええええええあ!?」
右目に激痛を感じて目が覚めた。
飛び起きようとしたけれど、右腕が何故か動かせず、更に体も何かによって固定されていて動けない。
仕方ないので、なんとか動く左手で自分の右目を押さえた。
痛みは、相変わらず強い。
しかし、眼球が潰れているという訳ではないらしい。
衝撃からして、普通の人間だったら確実に失明クラスの物だった気がするんだけれども、俺の肉体は強化に強化を重ねたおかげで非常に頑丈だ。
目玉だって多少のダメージじゃびくともしねぇぜ!
まあ、それでも飛び起きそうになる程度には、目玉への直接の攻撃は痛いわけだが……。
痛みの波が多少治まった所で、自分の置かれている状況を確認することにした。
何故動けないのか?
そして、何故こんなにも目が痛いのか?
場合によっては、拷問されているのと変わらない状態なのでは?
「……んん……?」
目を開けて周りを見ようとした所、最初に目に入って来たのは、小さな足だった。
「これは……あん?アルテミスか?」
「すぴぃ……すぴぃ……」
体が動かないので、なんとか首だけで足の主を探してみれば、俺の体の上に寝転がるようにしてアルテミスがいた。
というか、思いっきり寝ていた。
そして、位置関係からして、俺の右目がクッソ痛いのは、こいつが俺の右目にかかと落としをしたからだと思われる。
俺が神剣で身体能力を強化された状態じゃなかったら、割と危なかったぞお前……。
だが、多少重いし、俺の目にクリティカルヒットをかましたとは言え、コイツが俺の上にいる程度で俺が動けなくなることは無い。
ならば、俺が拘束されているのは、他の要素による物の筈。
そう考え、次に辺りを見回した。
「聖羅……と、有栖……?あと、アイにピリカにイチゴまで……」
何故かパジャマ姿の家族が俺の周りで寝ていた。
俺の胴体をガッチリホールドしている聖羅。
俺の右腕に抱き着いてガッチリホールドしている有栖。
両脚にまとわりつくようにガッチリホールドしているAIメイドたち。
しかも、全員寝ながら身体強化をしているのか、すごいパワーで離せない。
「……あれ?大試君……おはよう……ふぁあ」
自分を拘束しているものの正体が判明し、猶更状況が分からなくなって困惑する俺の耳に、眠そうな声が聞こえた。
頭の方からだ。
「理衣か?おはよう」
「うん……おはようございます……」
「なぁ、何でこんな事になってんだ?人口密度高すぎないか?」
「じんこう……?」
どうやらかなり眠いらしく、ほぼ寝ぼけている状態の理衣。
俺との会話で段々と眠気も覚めて来たのか、目の焦点があってくるにつれ、顔が赤くなってきた。
「あ……ああ!えっと……えっとね?私が今日の報告を兼ねてお邪魔したら、何故か皆大試君の周りで寝てたから、私もついつい寝ちゃって……」
「ついついって……。つまり、理衣もよく分からないのか」
「う、うん……。ごめんね?」
「いや、後から来たならわからなくてもしょうがないけども……。その格好はどうなんだ?」
「格好?」
理衣が、自分の体を確認する。
そして、自分が競泳水着姿だという事にやっと気が付いたようだ。
「え!?あれ!?なんで!?」
「素晴らしい眺めだとは思うけれど、パジャマとしてはちょっと適して無いと思うんだ」
「違うよ!?ちゃんと置いてあったパジャマに着替えてから寝たんだよ!?」
「……あ、そうか。理衣のギフトのアレか」
「あっ」
最近御無沙汰だったけれども、そういや理衣はそんなんだった。
大分コントロールできたとは言え、たまに出るアレ。
「……欲求不満だったのかも……」
そうボソッと呟いて、顔を赤くしながら俯く理衣。
正直身動ぎしたくなる程可愛いけれども、今俺は頭を撫でに行くことも抱きしめに行くこともできない。
「っていうか、何で俺はこんな所で寝てたんだっけ?」
今俺がいるのは、宴会とかもできる大きい和室だ。
普段俺がここを使う事なんて早々ないんだけども……。
そう思って、昨夜の事を思い出そうとする。
確か……あ、そうだそうだ。
ソフィアさんたちの特訓に付き合わされたんだった。
ソフィアさんの命令で、寝落ちしたソフィアさんにマッサージをさせられてたんだけど、母さん仕込みの開拓村マッサージコースをフルで2回たたき込んでも、光悦の表情になるだけでソフィアさんは起きなかった。
何時になったらこの夢特訓が終わるのかもわからず、更に俺に出来ることも全く無かったので、あまりに暇になって眠気まで押し寄せてきたものだから、ほっぺたスリスリを止めないリエラと一緒に部屋の端っこの方に布団敷いて俺も寝たんだった。
部屋から逃げ出したら、起きた時にソフィアさんに何言われるかわからないし、かといって近くで寝るのも、彩音や涅がいるのに不味いだろうと判断したので。
うん、そこまでは思い出せた。
「大試様 すき すき」
何故か俺の頬っぺたがヒリヒリする理由も理解できた。
「理衣、ソフィアさんたちはどうなってる?起きたか?」
「ソフィアさん?まだ寝てるみたいだよ」
「そうか……」
結局一晩経っても終わっていなかったらしい。
さっさと寝て正解だったな。
「じゃあさ、俺、日課のランニングとかしたいからコイツらを引きはがしたいんだけど、手伝ってもらえる?そもそもなんでこんなにガッチリホールドされてるのかわからないけど、多分大して重大な理由がある訳じゃない気がする」
「あー……。えっとね、実は昨日寝る前に、私も大試君の横に行きたくてなんとかしようとしてみたんだけど、皆力強くて動かなかったから、仕方なく頭の方で寝たんだよね」
「……俺の横で寝たかったのか」
「うん……」
こいつ、どこまであざとく俺の煩悩を刺激するつもりなんだろうか?
まあいいけども。
すごくいいけども!
「クソ、じゃあ今日は朝練無しかなぁ……」
「そういえば、大試君たちは何でここで寝てたの?」
「あ、それも教えてないんだっけ?実はさ、ソフィアさんの魔術で、寝ながら魔術の特訓を受けてるんだよ。リンゼと彩音と涅が」
「特訓?寝ながら?よくわからないけど、すごいね」
「なんなら、理衣も今度やってもらうか?」
「そうしようかなぁ……」
俺は、魔術を使う事が出来ないから意味がないかもしれないけれども、他の皆は、エルフ式ブートキャンプを受ければ強くなれるだろう。
別に戦闘民族になれとは言わないけれども、この魔物が跋扈する世界では、自衛する力があるに越したことは無いだろうしな。
「ただ、流石に朝になっても終わってないとは思わなかったな。2~3年生はともかくとして、涅は今日から授業ある筈なのに」
「あ、じゃあ起こす?」
「起こして起きるもんなのかなぁ……」
俺が、平日の朝という状況に思い至って時間の心配をし始めた時だった。
ガバッ
突然、寝ていたソフィアさんたちが上半身を跳ね起こした。
「うおっ!?」
「キャッ!?」
あまりに突然だったから、俺と理衣は揃って驚きの声を出してしまう。
ギャグでもなんでもなく、普通に驚いた。
「以上!特訓1日目終了じゃ!」
「「「ありがとうございました!!!」」」
「うむ!明日もやるので、そのつもりでのう!」
「「「はい!」」」
驚く俺達とは違い、起きてすぐだというのにテンションが高い4人。
これも、特訓とやらの成果なんだろうか?
「ソフィアさん、特訓成功したんですか?」
「お!大試も起きとったか!うむ!3人とも中々じゃったぞ!」
「へぇ……」
どんな特訓だったのかわからないけれども、中々だったらしい3人。
そりゃよかった。
これで、涅の悪落ちも防げるかもしれない。
「という訳でじゃ、ヨシ!3人とも寝て良し!」
「「「はい!!!」」」
「え?」
俺が少し感心したその瞬間、何故かソフィアさんが3人に寝る許可を与え、リンゼ、彩音、涅が瞬時に寝てしまった。
「えっと、ソフィアさん?何で3人は寝たんですか?」
「何言っとるんじゃ?夢の中で特訓してたんじゃぞ?睡眠とは言えそんな事をすれば、どれだけ寝ても疲れも眠気も取れる訳ないじゃろ。この特訓は、一晩やったら、そこから普通の睡眠をしっかりとらねばならんのじゃ」
「えぇ……?」
涅、入学2日目にして、サボり決定。
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