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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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780:

「何!?教皇様が引退するだと!?」


 その知らせは、王都内だけでは留まらず、一瞬で世界中に広がった。

 どこぞの国が崩壊した事で、現在聖女が暮らす日本の教会こそが総本山であるとされるようになってまだ長くない。

 そんな状況で、教会のトップが引退すると言うのだ。

 話題にならない筈がない。


「はっ!確実な情報です!むしろ、教皇様ご本人がふれ回っていると!」

「どういうことだ……いったい何を考えている!?」


 今代の教皇は、敬虔な教会信者だ。

 外野が思い描くような下種な部分が無いとは言わないが、それでも教会という宗教組織内で上に建てる程度には、外面を取り繕うだけの敬虔さを持っている。

 しかし、いや……だからこそ、教皇へと上り詰めた彼が、自らの意思でその立場を退くなんて事を、この大司教の1人である男は信じられなかった。

 人は、他人よりも自分が優れていると考えたがる存在であり、同時に、周囲からもそう思われたいという欲求もある存在だ。

 それは、今代の教皇も同じ。

 寧ろ人一倍その欲求が強い事を、嘗て教皇の座を奪い合ったこの大司教は知っていた。

 その教皇が、突然引退を宣言した。

 通常、教皇が引退をすると言う事は無い。

 余程の悪事を働き解任された例ならばあるが、そうでなければ、本人が死亡することで次の代の教皇が選出される事になっている。

 歩けなくなろうが、目が見えなくなろうが、教皇という立場にとどまり続けようとする。

『教会のトップ』というのは、それだけ教会信者にとって魅力的な立場なのだ。

 巨大組織の権力だけではなく、神を信仰する組織の頂点に立つと言う事自体が。

 それを平然と放棄するなんて、とても信じられるものではない。


「何故だ?どんな理由でだ?病気か?いや、病気であれば聖女様が癒されるか……?」


 この世界の教皇が死ぬまでその座に収まり続ける理由の一つが、魔術の存在だ。

 寿命自体を伸ばすことは難しいだろうが、多少の病気程度であれば、回復魔術等で治癒することができるので、余程の重症でもない限り健康に老衰で死を迎える。

 それは、今現在、伝説の『聖女』というギフトを得た少女の存在によって、更に強固なものとなっている。

 並みの術氏では、決して治せないような難病や大怪我も、数瞬のうちに完治させる破格の力。

 彼女がいるこの日本で、更に彼女を神に選ばれた代行者として崇拝する教会のトップであれば、病や怪我で引退する訳が無い……と大司教は考えた。

 実際には、舐めた事を抜かしたり、婚約者に対して無礼を働いた相手に対しては、聖女は迷わず鉄拳制裁をぶち込むし、回復もさせなかったりすのだが……。


「それが、腰と膝を傷められたそうで……」

「……は?」


 そんな事を考えていたからこそ、教皇が言ったとされる引退理由が、俄かには信じられなかった。


「そんなもの、治せばいいだろう?」

「『何かに傷つけられたわけでもなく、ただ日々の生活をしていたにも拘らず傷めたと言う事は、そこに無理が掛かる体になってしまっていると言う事。神の教えを広め、人々のために駆けずり回る存在としては失格でしょう。次代へとバトンを渡し、爺は去ることにしますよ』と、頑なだそうで……」

「それは……」


 大司教は、最近の教皇についての噂をよく耳にしていた。

 曰く、『人が変わったようだ』だの、『悟りを開いたようだ』だの。

 昔から真面目な姿を見せることが得意だった今代教皇だが、ここの所の彼の敬虔さは、大司教という立場に立った彼からしても常軌を逸しているように感じるほどで。


「膝は、数週間前の朝の礼拝を数時間していた際に脱臼し、脱臼したまま礼拝をやり切ったとは聞いていたが何故そこまで……?」

「今回の腰も、礼拝中に傷めたそうです。最近は、酒はもちろん食事も限界まで質素なものしか口にせず、起きている時間の8割以上を神への祈りに捧げる生活を送っているとか……」

「何かのパフォーマンスなのかと疑っていたが、本当に何かが変わったのか?」


 大司教の彼にとって、教皇の座を奪った今代教皇は、憎い相手であると同時に、昔からのライバルでもある。

 だから、その急激な変化に心配な気持ちもある……が。

 それはそれとしてだ。

 大司教という、教皇を選出する立場にある彼は、今自分がやるべきことを考えることにした。


「何はともあれ、私は次代の教皇を選出する準備をせねばな。もちろん、自分が教皇となるよう努力はするが、現状何の準備もできておらん。どうしたものか……」


 通例では、教皇は、複数いる大司教の中から多数決で選ばれる。

 その為、勝つためには多数派工作を行う必要があり、この大司教の男もそういう立ち回りが得意だった。

『さて、誰に何を送り、誰を強請れば良いやら……』なんて事を悪い顔で考え始めた大司教だったが、その大司教へと報告を持ってきた馴染みの司祭の言葉によって、大司教の狙いは一瞬で瓦解してしまった。


「いえ、それがどうやら今回は、教皇の選出方法が変更になるそうで」

「何?変更だと?」

「はい。教会の総本山となった今、今までと同じ決め方では無く、より神の御心に沿う決め方にしようという事で……」

「神の御心に沿う方法とは一体……。籤でも引くのか?」

「いえ、それが……」


 司祭は、一瞬説明を躊躇した。

 それ程驚くべき方法だったからなのだが、それでも説明せざるを得なかったので、あきらめたように言い放った。


「『教会バトルロイヤル~奥多摩がリングだ!~』です……」

「なんだと?」

「『教会バトルロイヤル~奥多摩がリングだ!~』です!」

「…………なんだと?」



 信仰心とは、パワーなんですよ。 by 教皇





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― 新着の感想 ―
入れ知恵したのは何処の聖女さんですかね?
教皇?なんて???
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