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「これより、エルフ式魔術特訓を始める!ものども、準備は良いな!?」
「「「はい!」」」
「うむ!良い返事じゃ!」
今、俺の目の前には、さっきファッションセンターしめさばで買ってきた寝間着に着替えた美少女たち……うん、ソフィアさんも美少女って事でもういいや……が、それぞれの布団の上にいる。
我が家で一番大きい和室の畳の上に布団を敷いており、合宿か何かみたいになっている。
俺だけ男なので、割と肩身が狭い。
まだ時刻は、19時を回った所。
寝るには早いけれども、これから行うのは、魔術の特訓の筈なので、まあ問題はないだろう。
……なんでパジャマなんだろうか?
ソフィアさんに至っては、軽く透けてるネグリジェだぞ?
なめとんのか?
とりあえず理性を持たせるために自分の足の小指を木刀で叩いておいた。
本来であれば、入学記念のパーティが桜花殿であるんだけれども、一昨年の一件のせいで主催側から生徒会が外れている。
そのため、会長である彩音や、面倒事担当の俺もこんな所でパジャマ特訓に参加しているんだけれども。
因みに、代わりに主催に収まっているのは、王太子様です。
何故かって?
新入生たちに挨拶するって言う建前で、婚約者とイチャつくためだよ……。
とはいえ、生徒会メンバーも大半はパーティに参加しているらしく、メッセで連絡が来ている。
『先輩!会長みませんでしたか!?ダンスに誘おうと思ってたんですけど!』
ってグループチャットに書き込んでる元似非ヤンキー君に、「今俺んちの布団の上にいるぞ」って言ったらどうなるかが怖くて既読無視しているが。
「ではまず、今回の特訓の概要じゃが……」
そして、ようやくソフィアさんから特訓についての説明が始まった。
今の所、俺んちでパジャマで何かをやるって事しか皆把握していないんだ。
「そもそも魔術に大切な事とは何じゃと思う?ほいリンゼ!」
「え!?えーと……魔力かしら?」
「そうじゃな。何はともあれ魔力が無ければ魔術は成立せん。体内でも体外でも良いから、燃料となる魔力を用意することは絶対条件じゃ。他には?彩音!」
「イメージです!相手をぶっ潰してやるって考えれば威力が上がります!」
「確かにのう!まあ、もう少し細かくイメージをした方が効率は良くなるが……。では、咲愛!他に何かあるかのう!?」
「他ですか?他……うーん……」
「今日お主が試験で試されたもんがあったじゃろ。思い出してみるんじゃ!」
「……魔力操作、ですかね?」
「そうじゃ!魔力操作じゃ!今でたその3つを鍛えることで、今のお主らとは別次元の力を手に入れられるじゃろう!ずばり、その方法こそが今回の特訓なんじゃ!」
ふぅっと息を整えるソフィアさん。
テンションを頑張ってあげてるらしく、中々大変そうだ。
「さぁ、その方法について……大試!なんぞ予想でもあるかのう?」
テンション高めで無茶ブリしてくるなぁ……。
「さぁ……?パジャマですし、寝るとか?」
「…………」
俺の答えを聞いて、沈黙するソフィアさん。
えっと?
「…………正解じゃ」
「なんでそんな不貞腐れた顔してるんですか」
明らかに納得がいっていない。
正解されたくなかったのかこの人……。
「要するにじゃ!人間が最もイメージを鍛えられるのは、夢の中なんじゃよ!とはいえ、普通に寝るだけじゃ大した効果はない!イメージを鍛えるための夢を見れるようにする必要がある!自分が大魔導士になるための訓練をする夢を見るための魔術をかける教師役がのう!それは、ワシが担当しよう!本来であれば、人は睡眠に入ってすぐに夢を見ることは難しい!じゃが!ワシが魔術を使って眠らせれば、直ぐに夢の世界じゃ!そこで魔術の神髄を掴みつつ、現実の肉体では魔力容量を上げるために常に魔力を消費して空っぽにしておくんじゃ!空っぽにした状態で更に魔力を消費しようとすれば、魔力容量は増えるからのう!」
成程、よくわからん。
俺は魔術を使えないから、魔術を使うというイメージすら満足にできないという事で、スタートラインにすら立ててないんだよなぁ……。
「夢の中……成程ね!確かに納得だわ!イメージを鍛えるなら、夢の中は打ってつけね!夢の中とは言え、魔術を使えるなら魔力操作も鍛え放題よ!」
「ですが、そうなるとそれぞれ別々に特訓すると言う事になるのでしょうか?折角こうして皆さんと一緒にいるのに……」
自分からソフィアさんに特訓をつけてもらいたがったリンゼは、その特訓法に大いに喜んでいるけれども、単純に他の人たちと一緒にイベント参加したいって思っているだけの彩音は、ちょっと不満気だ。
「いいや、ワシがこれから使う魔術は、一緒におる者たちの夢を繋げて、一か所で訓練するようにできるんじゃよ。そうでなければ、ワシが教えられんからのう」
「そうなんですか!?わかりました!それなら大丈夫です!」
こいつ、もう魔術の上達とかぶっちゃけどうでもいいと思ってんだろ?
「あ、あの……痛くないんですか?」
「痛みはないのう。現実でやったら体がバラバラになる様な魔術じゃろうと、夢の世界であれば何の問題も無い!寧ろ、バラバラになる事で現実世界ではそうならないようにするギリギリを見極められるようになるんじゃ!」
「すごい怖い事言ってませんか!?」
「現実世界で街を吹き飛ばし掛けるよりは良いじゃろうが!昼間の事もう忘れたか!?」
「はいすみません!頑張ります!」
とりあえず生活基盤を俺によって整えることができて、大分不安が解消されたらしい涅だったけれども、流石に未知の方法で行われる特訓には恐怖があるらしい。
とはいえ、これから悪落ちしないためにも、魔術の腕は磨いておいてもらいたいしな。
頑張ってもらおう。
「因みに、俺は皆が特訓している間どうしたらいいんですか?」
「言ったじゃろ?ワシの肩もみじゃ!」
「……一晩中って事ですか?」
「ワシが満足するまでじゃ!」
「満足……」
俺だけゴールがどこかわからないマラソンな訳だな?
「とりあえず説明は以上じゃ!残りは、実際に夢の中に入ってから追々していく事にしようかのう!」
「「「はい!」」」
「では、全員布団に入るんじゃ!」
ソフィアさんと俺、そして俺にさっきから頬っぺたスリスリしているリエラ以外、全員がぐっすり寝る体勢になった。
これ、これから魔術の特訓をしようっていう姿なんだぜ……?
「ゆくぞ!夢想幻遊戯!」
突如放たれたあやしい紫色の光と共に、ソフィアさんの魔術が発動した……らしい。
皆寝ちゃったから、恐らくとしか言えない。
俺は、皆寝ている空間で1人、意識の無いソフィアさんの肩を揉むためだけにここにいる。
あれ?もしかして、俺には彼女たちの特訓風景を見る事すらできないのか?
何時間かかるかわからないけれど、とにかくソフィアさんの肩を揉み続けなければならないのか?
それは、割とえぐいなぁ……。
「大試様 好き 好き」
「…………」
とりあえずリエラの頭を撫でたから、座禅の格好で寝落ちしているソフィアさんの肩揉みを開始した。
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