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その日、日本中の都市から、同じような報告が同時刻に大量にネット上に現れた。
曰く、途轍もなく高い光の柱が王都の方から天へ立ち上ったと。
人工衛星からの観測では、少なくとも地上から約80kmにまで及んでいたことが確認できているらしい。
この世界でどうかは知らんけど、前世だと100kmくらいから宇宙って事になってたはずだし、ほぼ宇宙空間だな?
「……いやぁ、うん。これは俺が悪かった」
「……アンタ、思い付きで魔神に発破かけんの止めときなさいよ?」
「腕時計の中のマイルームで酒飲んで寝とったのに、外ではとんでもない事になっとったんじゃのう……」
正直、リエラと涅ペアが何かやらかしたところで、俺が全力で対処すれば何とかなったとは思う。
ただその場合、ここまで被害が抑えられたとは思えない。
爆発をビームみたいな炎で吹き飛ばすような対処になっただろうし……。
「って、中のリエラと咲愛は無事なの!?」
「なぬ!?あそこに誰ぞおったんか!?」
爆心地にいたはずの2人の安否を確認しようとリンゼとソフィアさんが煙が立ち込める試技エリア……多分跡地へと目を向けた。
「それはまあ大丈夫だろ。だってリエラと、リエラが頑張って護るって言ってた対象な訳だし」
こんだけの大災害級の魔術を、そこそこの魔術の腕しかない涅にブチかまさせる程の大量の魔力をサラッと引き渡せる魔神。
そのリエラが、あれだけ護ると言ってたんだから、それはもう大丈夫なんだ。
問題があるとしたら、試技エリアを壊さないように魔術をぶっぱなすように頼んで置かなかった俺だな。
……そもそもリエラを投入した事自体がヤバイかもしれんが、そこはまあ仕方なかったというか……。
涅を悪落ちさせないためにさ……。
そうしているうちに、吹き飛ばされていた空気が戻って来たのか、風が吹き始めた。
辺りの煙も風に乗って霧散して行き、その中から人影が見えてきた。
放心状態で立っている涅と、その頭の上に座るミニリエラだ。
やっぱり、傷どころか埃すら浴びていない様子。
あの超重力と爆発の中にいたのにその状態とか、本当にデタラメだなぁ……。
俺は、2人の方に走り寄る。
一応の安否確認だ。
「おーい、大丈夫かー?」
「…………」
「ハイ です 蝶は 元気 です」
「そうかそうか」
「…………」
「大試様 好き 好き」
リエラ以外返事がない。
俺のほっぺたにスリスリし始めたリエラは置いておき、涅の目を覚ますためにデコピンをしてみる。
すると、「あたっ!?」という短い悲鳴と共に、目の焦点が俺へとやっと合って来た。
「……あ、あれ?私、生きてます?」
「生きてる生きてる。すごい魔術だったな」
「魔術……魔術!?あれ、やっぱり私がやったんですか!?」
「そうそう。リエラの魔力を使って、更に自分でバフまでかけてぶっ放したんだろ?おかげで試技エリアが消し飛んだわ」
「え……わぁ!?これ、修理費っていくらくらいですか!?借金ですか!?」
「まず心配するのがそこか……」
金が無いって言ってたからなぁこの娘。
ゲームの方の闇墜ち原因も、もしかしたらそう言う部分が大きかったのかもしれんな。
闇バイトっていうの?
そういうのをやっちゃって悪の組織的なとこに入っちゃったとかさ。
「心配しなくても、もし支払うことになったら俺が責任もって払う。リエラに頑張らせたの俺だし」
「はい!?え、絶対高いですよ!?試技エリアっていう高そうな魔道具ですよ!?」
「いけるいける、金はあるんだ。むしろ、どうやったら使い切れるのかわからない額が毎日入って来て怖くなってきてるくらいなんだ……」
「それはそれでどうなんですか……?」
「って言っても、多分払わされることにはならんと思うよ。一昨年俺が壊した時の反省が活かせてないってゴネるし」
「一昨年って、先輩の入学試験の時ですよね?先輩、入学早々何してるんですか……?」
「ははは、涅は俺以上の伝説を作ったぞー」
「そうでした!どうしたら!?いったいどうしたら!?どこに土下座したら!?」
リエラのパワーをプラスしたとはいえ、扱い的には使い魔と一緒だ。
飼いならした魔物に戦わせたり、魔馬に乗った状態で戦闘したようなもん。
つまり、リエラの力も含めて涅の評価となる。
それは、良い方面も悪い方面もであるので、まあ高価な魔道具ぶっ飛ばしたらそりゃ怖いかもしれんが、『それを壊せるだけの火力を生み出せる人材を潰すような真似を王立魔法学園がするか?』といえば、それはまずないだろう。
ぶっちゃけ、多分この時点で涅の1組入りはほぼ確定じゃないかな?
逆に、ここまでやらかせる生徒を1組に入れないって判断ができる程の魔術の腕がある奴がいるだろうか?
もしいるとしたら、それはもう伝説に残る強者とかそんなんだろ?
「ボケナスがぁ!!!」
って思ってたら、いたわ。
ソフィアさんが、涅にブチ切れている。
「何じゃあの魔術は!?全く制御できとらんわ!」
「ひぃ!?ごめんなさいすみません!」
「謝って済む問題じゃないわ!お主のミスは、ワシらがカバーしたからこの程度で済んでるんじゃぞ!?それでもこれじゃ!結界が無かったらどうなっとったか!?」
「すみませんすみません!」
…………あの、その、ごめんなさい。
軽い気持ちでリエラをけし掛けた俺に責任があります。
ただ、ガチ叱りされるのが怖いので、ここは見に回る!
「大試もじゃ!さっきふざけた事いっとったな!?リエラをどうしたとな!?」
「はい!ごめんなさい!」
見が解けた。
「じゃぁから、謝って済む問題じゃないと言うとろうが!まあ、大試の場合は、何かあっても対処できるという自信があったんじゃろうが、それだって確実じゃないんじゃろ!?」
「はい!すみません!」
やばい。
ちょっと泣きそう。
あの爆発がヤバかったのと、ソフィアさんが言ってるのが珍しく正論過ぎて言い訳すら出来ねぇ。
俺が何とか涙を流さず済む方法を模索している中、ソフィアさんが何かを決心したように頷き、そして宣言した。
「仕方ない。これは、アレじゃな」
「アレって?」
「そっちの娘は、魔術の特訓じゃ!大試は、罰としてその間ワシに肩もみじゃ!」
「は、はい!」
「ソフィアさんの体に触れるなんて、それはもう罰じゃなくてほぼご褒美なのでは?」
「じゃろぉ!?」
これが切っ掛けで近い将来、涅咲愛は、この二つ名で呼ばれるようになる。
『冥夜の魔女』と。
とはいえ、あくまでそれは未来の話。
今はただ、涅が普通に泣いて、俺が久しぶりにガチ説教されて凹んだだけの話である。
「え!?ソフィアが魔術教えてくれるの!?ならアタシも習いたいわ!」
「ほう?良かろう!では、リンゼにも特訓してやろうぞ!」
「ホント!?どうしよう大試!?エルフの魔術って設定上ほぼチートよ!?しかも大精霊にまで至ったってことは、魔法に限りなく近いものまで行使できるんじゃないかしら!?」
「よかったね……」
「ええ!」
あと、リンゼはその内『金色の女神』とか呼ばれるようになるらしいよ。
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