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「それでさ、どうやって勝つつもりなの?」
「秘密だ」
「えー!?ボクだって協力してるんだから教えてよー!キミが負けたら、ボクだって立場悪くなるかもしれないんだよ!?あの変な状態になった妹と上手くやっていく自信ないよー!」
「秘密だ」
競技日程2日目。
今日も今日とて特に大きなトラブルもなく日程は消化されていった。
俺と美玲柚ちゃんの出番は、本日のラストとなっている。
明らかに前日ラストに演技を行ったボボンを意識させる順番だ。
前日に自分の絶技を見せつけて、心を折ってから演技をさせて確実に仕留めようとでも思っていたのかもしれないが、残念ながら俺も美玲柚ちゃんも勝つ気満々である。
まあ美玲柚ちゃんは、俺が考えている必勝法に関してはまだ知らないんだけれど、俺が「大丈夫、俺を信じろ」って言ったら、すごいいい笑顔で「はい!」って答えてくれたので、多分大丈夫だろう。
正直、この子は悪い男に騙されないか心配なくらい純なところがあって不安にならないでもない。
そして今俺は、自分の出番のために更衣室で着替え中というわけだ。
外国だと、結構男女で更衣室を分けるという意識が薄いチームも結構あって驚いたりするんだけれど、アメリカはとりあえず分けてくれていたのでありがたい。
だからここは、日本から参加する代表のうち男子、つまり俺だけが使う更衣室だ。
そこにやってきたのがボンボン。
ここ男子更衣室だぞって言いかけて、そういやコイツは野郎だったと思い直した。
なんかさぁ……マジで女みたいな体してるんだよなぁ……。
だって、腰にクビレがあって、おしりがプリッとしてるんだもん。
顔は相変わらず美少女だし、すげぇ股間に手つっこんでちんちんがあるかどうかを確認したい。
いや、別にコイツに対して邪な気持ちなんて一切ないんだぞ?
俺の性癖にTS系は存在しないから。
ただ、俺のせいでコイツのちんちんが無くなってしまったんだとしたら、流石に申し訳ない気持ちが……あんまりないな?
どっちかっていうと、カイネウスの剣が性別まで変えてしまうほどの強力な変換を行えるのかどうかのほうが気になるわ。
だって、ギフトを変換しただけで、アメリカンなヤンキーが男の娘になるんだもん。
性能を調べておかないと割とこえぇよ。
「もう!大試くんの意地悪!」
ぷんすこしながらほっぺた膨らませるボンボン。
お前、マジあざといヒロインムーブするようになったな……。
その手の性癖持ちなら即撃墜されちゃって大変なことになるから程々にしておけよ?
「そうだなぁ……。言える部分だと、まず会場の審査員はそのままにすることで、ボボ……お前の妹の油断を誘いつつ、評価には影響を与えないようにしてある」
「してある……って、一体何したの……?」
「秘密」
「もー!」
俺の胸をポカポカと叩くボンボン。
お前マジ……。
いや、もう止そう。
コイツが将来、ちゃんと理想の男の娘とゴールインできることを願っているよ。
……あれ?そういやコイツ、今でも性癖が男の娘になったまんまなんだろうか?
まさか、普通に男が好きになってたり……うん!止そう!
「さて、着替えも終わったし、そろそろウチのお姫様を迎えに行くか」
「あー、ねぇねぇ大試くん。そういえばさぁ、開会式の時に、ペアの子に騎士の誓いみたいなのしてたよね?」
「ん?してたな。折角だし雰囲気を出して美玲柚ちゃんの調子を上げておこうかなって。それがどうかしたか?」
「いやぁ……。キミさぁ、自分の今の格好と、あの娘の置かれてる状況を理解してやってるの?」
「格好?」
俺は、自分の姿を見るための大きな鏡を覗き込む。
本来競技で使われるフィギュアスケートの衣装といえば、女子なら伸縮性を維持しつつ防寒性も重視し、そして転んだ時にダメージを軽減もしてくれるようなレオタードが一般的だし、男子であれば、長いズボンにしないといけないしタイツもダメなんてルールもあったりするらしい。
ただ、どちらも変に肌を露出していたりしなければ、割とルール内で皆自由にしているそうだ。
キラッキラで派手なものから単色で地味なものまで、プロアマ関係なく様々。
これがアイスショーとかにもなると、着ぐるみなんてもんまで出てくるから際限がなくなる。
では、今俺が着ているものはといえば、当然だけどフィギュアスケート用の衣装なんて持ってきていない。
スピードスケートならやるかもと思っていたけれど、別に俺は競技者でもなんでもないので、スケートをやる時は普通に温かい格好ってことしか考えてなかったからなぁ。
前世なら、雪がくっつかない上着と、それとセットのズボンタイプの防寒着。
今世なら、毛皮。
とはいえ、流石にそんな服装でフィギュアスケートの大会に出るわけにもいかない。
ということで、貴族用のガッチリした騎士服っぽいもんを着込んでいる。
これは、一応国の代表ということで今回の代表団に参加したからと、貴族らしい格好をしますよ!と張り切った我が家の女性陣によって超特急で用立てられたもんだ。
まさか彼女たちも、この服装でフィギュアスケートを俺がやるとは思ってなかっただろうけども。
ボンボンにも確認したけれど、ルールを外れてはいないし、これを着ることで俺が他の選手より激しく有利な点があるというわけでもないということで、大会運営公認の衣装である。
「なんか問題あったか?一応確認したはずだけど?」
「いや、ルール上は問題ないよ?でもさ、自分のパパを助けるためにだよ?周りに頼りになる家族も何もいないっていう味方がいない状況で、何が何でも勝ちたいって悲痛な決意をしている小学生くらいの女の子が、その格好をしている年上の男の子に騎士の誓いみたいなポーズで協力を約束してくれちゃったらさ、そんなのもう……」
「心強いだろ?全世界に見られている状況でやったんだから、まさか裏切るってこともないだろうって安心感もありそうだし」
「それドコロじゃない気がするけどなぁ……」
「もしボクがそんな事されちゃったら……えへへへ……!」と、赤くなった頬に両手を添えてボソボソと喋るボンボン。
こいつ、マジで大丈夫か?
モーションが全部メスなんだが?
ちんちんあるんだよな?
あったらあったでその動きちょっとやばいぞ。
十勝エルフの集落につれていったら、コイツが主人公かヒロインの本が特殊な性癖のお姉さまたちに大人気になりそう。
BでLな本が好きな方々にな!
これから始まる自分の出番よりも自分がやらかしたTS疑惑の方を不安に思いつつ、俺はリンクへと向かった。
感想、評価よろしくお願いします。




