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異世界が思ってたんと違う!  作者: 馬之群
第3章 決着
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第47話 決戦の準備

「勇者アルバと古代遺跡で何をしてたの、夜?」


 フローラはオレに尋ねてきた。オレはバッとシャドウの方を向いた。


「古代遺跡にあった石盤のデータをまだ持ってる?」

「はい」

「破棄して、今すぐ。お願い!」

「かしこま——」

「何で、夜?」


 フローラが口を挟んできた。翻訳珠があるから嘘は吐けない。


「それは、その……」

「シャドウ、その石盤って何?」

「古代遺跡内にあったものです。シャドウのデータベースにない文字で書かれていたため、解読できませんでした」


 フローラは翻訳珠に機械を繋いで操作し始めた。


「現在までに解読されている、全言語データを転送するわ」

「フローラ、大したことじゃないんだ」

「受け取りました。龍文字と合致。解読可能です。解読しますか?」

「大急ぎでね」

「かしこまりました」


 オレの意思は!?


「こんな非常時に解読するほどのものじゃないんだってば!ノッテの日記だよ。恥ずかしいから読まないで」

「勇者アルバと戦うのに貴重な資料じゃない?」

「アルバのことはほとんど書いてないよ」


 ルーナが舟をこぎ始めた。フローラがすかさず、いつぞやのゲームをあげている。ルーナは目を輝かせて遊び始めた。


「解読終わりました。要約してお伝えしましょうか?」

「やめて」

「頼んだわ」


 シャドウは内容を読み上げ始めた。本人が嫌だって言ってるだろうが!オレは諦めてシャドウを睨みつけた。


「随分と壮絶な龍生だったのね。それで、その後はどうなったの?」


 オレはアルバが姉貴の孫娘であることや姉貴のスキル『加護』の影響で消滅を免れて転生し、呪いが消えて戻ってきたことなどを補足した。

 フローラの持つ機械が鳴った。ホログラムで単眼の蚊のような異形が現れた。


「どうしたの?」


 蚊がブンブンと鳴いた。


「魔法蟲の管理人に関するデータを寄越しなさい。大至急よ」


 フローラは通信を切った。


「古代遺跡に管理人が集まりつつあるみたいよ。魔龍のクォーターなんて、厄介な人間を量産してくれたものね。勇者アルバと夜が互角だと考えると、絶望的な状態だわ」

「怪我が治ったら、一応オレの方が強いからね」


 オレは控えめに補足した。かっこ悪いが、戦力を見誤ると作戦に支障が出る。だから、負け惜しみとかでは一切ない。


「でも、人間じゃ敵わないでしょ?」

「身体能力が高すぎるからなあ。シャドウの魔力砲レベルじゃないとダメージを与えられないと思うけど、車並みの速さで動き回るよ、あの子」

「それはどこの魔動機ですか?」

「残念ながら人間なんだよ」


 オレは苦笑した。アルバは魔法が使えないからまだ良かった。フローラの機械が鳴った。


「管理人のデータが送られてきたけど、機械で強化されているだけで、元の身体能力は人間並みよ?魔力量は桁違いだけどね」

「それなら何とかなりそうだ」

「まあ、そうなんだけど、変じゃない?魔力量や魔法適性が再現できないのは分かるわ。でも、身体能力は遺伝情報が同じなら同じになるはずよ。別人なんじゃないの?」


 言われてみればその通りだ。


「でも、魔王血珠を使えていた以上、管理人もオレの血族であるはずなんだ。元になった遺伝情報が不完全で、身体能力を引き継げなかったんじゃないの?」

「そもそも、千年前の人間の遺伝情報でクローンを生み出し続けているという事実の方が信じられません。そのようなことが可能なのですか?」


 不可能なのですか?オレ、理科の知識は中学で止まってるんだよ。


「知らないわ。科学者じゃないもの」


 ルーナがよちよちとやってきた。


「ね、夜にぃは魔龍なんだよネ?今までどこに暮らしてたノ?」

「最寄りの龍脈だよ」


 最寄り駅みたいな言い方になっちゃった。ルーナはこてんと首をかしげた。


「あれ?にぃには龍脈に住む魔龍はいないって言ってたけどナ?」

「龍脈にいたのは、千年前の話だからね」

「千年間眠ってたノ?」

「いや、魔法で千年後に飛んできたんだ。確かに、魔龍の仮死状態なら千年くらい眠れるかもしれないけど」


 オレは笑った。ルーナは妙に感心している。


「すごいネ」

「すごいかな?それで言うと、姉貴のスキルと神様がすごいんだよ。呪いを捻じ曲げてオレとアルバを死から救って、千年後に飛ばしてくれたんだから」


 ルーナは目をぱちくりさせた。


「恐ろしいスキルね。『加護』って。アンタとアルバ、もしかして今も不死だったりする?」

「どうだろう。違うといいな。少なくともオレがまだ不死なら、アルバも死なないはずだ。姉貴は娘を守ろうと龍脈災に立ち向かって捕まり、最期まで娘の身を案じていた。孫のアルバへの加護の方が大きいに違いない」


 むしろオレに加護を授けてくれたことの方が驚きだ。


「待って、それっておかしくない?」


 フローラが首をかしげた。


「だって——」


 フローラの言葉を聞いて、オレは固まった。確かにそうだ。え、どういうことなんだ?何があったらそんな——。


「ウチ、ヘンなこと言ったかしら?」

「フローラ、少し調べてほしいことがあるんだけど——」


 オレはフローラにある頼みごとをした。フローラは快諾してくれた。しばらくオレは部屋の中を歩き回り、結果を待った。カラカラになった喉を潤すためだけに苦い茶を啜り、いたたまれなくなってまた歩く。フローラの機械が鳴った。オレは足を止める。


「ビンゴよ、夜。アンタの予想通りだったわ。あの管理人、勘違いしてたのね」


 オレは舌打ちした。


「あ、ごめん。ありがとう、フローラ」

「ううん、いいの」

「じゃあ、もう一つ頼みごとをしていいかな?」


 オレは拳を握りしめながら、フローラに一つ頼みごとをした。


「分かったわ。ウチもそうした方がいいと思ってた。あと、勇者アルバと管理人たちは進攻を始めたそうよ。一緒に迎え撃ってくれる?」


 オレは溜息を吐いた。


「もちろんだよ」

「お供します、サブマスター」

「あたしも行くヨ!」


 これが正しい決断だとは思わない。きっと間違っている。しかし、そんなの今更だ。オレは苦い茶を飲み干すと、フローラを追い駆けた。

【作者のメモ】

・シャドウが作られた時、既に古代語は使われない言語となっていた

・管理人は外観がバラバラなので、傍目には同一個体だと分からない

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