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異世界が思ってたんと違う!  作者: 馬之群
第2章 調査
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第36話 非常時の予兆

「分からない……。吾は魔物を滅ぼさねばならぬのに、バグ、だろうか?」


 スキルのせいか。オレは魔力銃を下げた。


「オレのことは覚えてる?」

「サブマスター、夜様。吾は、シャドウは全て覚えております」

「それなら——」


 ドーンと衝撃が走り、部屋が揺れた。上で爆発でもあったのかと思うくらいの衝撃だ。


「一時休戦して外に出ない?」

「同意します」


 オレとシャドウが外に出ると、上を下への大混乱に陥っていた。


「フローラやルーナのことを攻撃しないよね、シャドウ」

「ひとまずは」


 ルーナは魔龍だからシャドウの攻撃対象になりそうだけど、記憶があるならルーナに勝てないことくらい分かるだろう。それより、二人の安否が心配だ。


「行こう」

「はい」


 ヒトをかき分けて、ホテルに戻った。道中でフローラとルーナに出会った。


「龍脈災の第二波が来たわ!こんな早くに強い魔物の群れが来るなんて、完全に想定外よ。自然ではあり得ないと断言してもいいわ。何か予想外の事態が生じているみたいね」

「どうするの?」

「ルーナの『にぃに』に連絡は取れない?」


 そもそも、ソーレは龍脈災を鎮めようとして龍脈に向かっていたはずだ。それなのに、かえって事態が悪化しているのは何故だろう。


「ルーナちゃん、ソーレに連絡ってできる?」

「んー、念話って、にぃに嫌がるんだけど……」


 ルーナはキュッと目を瞑った。


「アレ?つながらないナ。変なノ。人間に捕まった時以外、必ず返事はくれたのニ」

「人間に捕まった時以外?」

「えっとネ、魔王血珠?とかいうヤツにじゃまされて、念話ができなかったって言ってたヨ」


 ということは、また管理人に捕まったのか、ソーレは!不用心すぎる。そうだとして、龍脈災はどうして生じたんだ?管理人はシリウスの命令で動いているはずだ。龍脈災を魔龍に鎮めさせるために操るなら分かるが、鎮めに行ったソーレを操って邪魔するのは意味不明だ。


「夜?」

「ソーレは管理人に捕まったんだろうけど、シリウスなら詳細を知っているんじゃないかな」


 シリウスも怪しいんだよな。何を考えているか分からなくて。


「お兄が?一応訊いてみようかしら」


 フローラは機械を取り出して操作し始めた。シリウスのホログラムが浮かび上がった。


「どうした、フローラ」

「お兄、魔法蟲の管理人って知ってる?」

「どうしてそれを尋ねる?」


 シリウスは低く笛の音を鳴らした。


「龍脈災を止めてくれそうな魔龍の知り合いがいるんだけど、管理人に拉致されてるっぽいのよ」

「それはあり得ない」

「どうしてそう言い切れる?」

「詳しくは機密だから話せないが、そんなことは不可能だからだ」


 まあ、管理人が好き勝手に魔龍を操ったら大問題だよな。何か対策されているのか。


「でも、その魔龍とは不自然に連絡が付かなくなったんだけど?」

「アレがもう使い物にならないことは証明されている。管理人の仕業ではないとするなら、そんなことが可能なのは——」


 シリウスは黙り込んでしまった。


「可能なのは、何なのよ?」

「気にするな。こちらの話しだ」


 フローラは不機嫌そうに竪琴を鳴らした。


「夜はいるか?」

「いるよ」

「そうか。夜の保護を最優先にしろ、フローラ。その件は私が対処する」


 やはりフローラはシリウスの差し金で来たのか。シリウスは記憶を消そうとしたり監禁しようとしたりしていたが、オレが逃げたものだから、監視兼護衛としてフローラを付けたんだろう。


「いや、シリウス。オレが行った方がいい。その魔龍はオレの知り合いで人間嫌いなんだよ。オレが説得しないと龍脈災を鎮めてくれないかもしれない」

「なおさら許可できないな」


 シリウスは即答した。シャドウが手を挙げた。


「理由を伺っても?」

「魔龍の戦力は災害級だ。不用意に接触させるわけにはいかない。お主なら分かるだろう?戦闘用自律魔動機」

「オレが魔龍の力を悪用するって言いたいのか?」


 既に恩を仇で返した分際で言うのもなんだけど。


「フローラ、夜をしっかりお守りしろ。魔王命令だ」

「でも——」

「私は忙しい。切るぞ」


 シリウスのホログラムが消えた。


「にぃに、また捕まっちゃったノ?」

「そうみたいだね」

「もう待ってるだけは、やぁや!助けに行くモン!」


 ルーナはオレを睨み上げている。


「でも、魔龍は操られちゃうんだ。ルーナちゃんは行かない方がいいよ」

「だって、あたししか、にぃにを助けられないモン!人間がにぃにに勝てるはずがないヨ」

「オレならどうにかできるかもしれない。スキルがある」

「ですが!」


 シャドウが口を挟んだ。言った後で、しまったというように口を押さえた。何だ?


「フローラ、龍脈災を止めるためだ。ソーレを助けに行かせてくれ」

「アンタに何ができるってのよ?」

「オレはスキルで異種族の友好度を高められる。よく考えたら、まだ管理人やソーレには異種族友好のスキルを使っていない。友好的になったら龍脈災を止めてくれるかもしれない」


『異種族友好の発動に失敗した』


 今スキルを発動させようとしたわけじゃないんだけどな。

 ドーンと大きな物音がして、再び地面が大きく揺れた。


「時間がない、フローラ。早く行かないと!」

「なりません、フローラ様!」

「フローラねぇ、お願いヨ!」


 三人に詰め寄られたフローラのヴェールの色は真っ白になった。かわいそうに。


「もう嫌!何でウチばっかり!」


 ごもっともです。

【作者のメモ】

・建物が揺れているのは、魔物の遠距離攻撃が町を覆うバリアに命中しているから

・念話をするには、両者が対面して互いの魔力を事前に流しておく必要がある

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